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文字数 425文字

 白い花びらのような、冷たいかけらが、ひらり。また、ひらり。
 ことしはじめての、あたらしい雪です。
 うっすらと白くなりはじめた地面の上に、ひょいと顔を出したのは、もぐらでした。その鼻さきに、ふわり、と、雪のひとひらが落ちました。
「ひゃっ、つめたい」
 もぐらはわらって、前足をぱたぱたふって、雪をはらいのけました。

 そのときです。ゆびの先に、なにかがさわったのは。

「あれ?」
 もぐらは、目がよく見えません。暗い地面の下でくらしていますからね。だから、手さぐりで、さわってみました。
 石かな? 冷えた、焼きいもかな?
 ところが、心臓の音が、きこえるのです。

 とく とく とく。

「たいへんだ! こんなところに、だれか、たおれてる!」
 もぐらは、びっくりぎょうてん。
「もしもし、だいじょうぶですか?」
 いっしょけんめい、ゆさぶりますが、へんじがありません。
「おーい、だれか、だれか来て!」

 けれども、もぐらの声は小さくて、森の雪にすいこまれていくばかりです。
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