流星剣、魔女ベアトリスの脅威

文字数 2,574文字

心之助(しんのすけ)、<黒騎士>はお前に任せる!」

 そう言い残すと、メガネは<ファイブドラゴンハインドPR(プラチナレア)>を駆って、家康本陣に向けて突進していく。
 メガネ隊も後に続く。
 水、火、風、土、光の属性を備えた<五色龍剣>が煌き、五匹の光の龍と化し、前衛の歩兵と機動兵器を薙ぎ払い、一本の道を作った。
 後に「メガネの一騎駆け」と語り草になる突撃だが、副隊長ザクロ、メガネ隊の面々も負けじとそれに続いていく。
 その突進は徳川四天王である漆黒の本多忠勝隊、白銀色の榊原康政隊の機動兵器の前面まで一気に道を拓いた。
 それを遮ろうとした<黒騎士>の前にはいつのまにか、心之助の<ニンジャハインド ブラックソード>が現れて、強烈な一太刀(ひとたち)を浴びせる。
 それをとっさに受けた<黒騎士>のソードが爆ぜる。

 <流星剣>

 それは隕鉄(いんてつ)、つまり隕石から堺の刀匠が精魂込めて削り出した名刀である。
 硬度もあるが粘りもある、折れにくく強靭(きょうじん)な刃が特徴である。
 それに驕ることなく心之助のステップは軽やかで、丁寧で繊細な操縦技術に裏打ちされた見事な機体捌きである。
 驚異的な運動性能で<黒騎士>のソード攻撃を紙一重でかわしつつ、攻撃を的確に当てていく。
 平凡といえば、あまりにも基本に忠実過ぎるヒットアンドウェイ攻撃である。
 凡庸な技術と鍛錬の積み重ねが非凡の技を生み出している。

 だが、<黒騎士>は全高百メートルを超える巨躯であり、対するボトムストライカーは全高わずか六メートルの独り乗りの機動兵器である。
 <黒騎士>を巨人に例えれば、<ニンジャハインド ブラックソード>はネズミのような大きさであり、一撃でもくらえば一瞬で機体が吹き飛ぶと思われる。
 綱渡りのような攻防が続く。

 その間にメガネは家康の本陣に迫るが、旗本隊の井伊直政の赤備えが立ちはだかる。
 真紅の機体が威圧感を放っている。
 背後に漆黒の本多忠勝隊、白銀色の榊原康政隊の機体も見えるが、副隊長のザクロ隊がよく防いでいる。
 
(心之助、大丈夫か?)

 心話通信(テレパシー)で語りかける。

(ええ、なんとかやってるよ!)

(お前の隊も健在か?)

(何とか生き残ってる。損害は甚大だけど、本隊の佐久間信盛隊、丹羽長秀隊も押し上げてくれてる) 
 
(もう少しだ。もう少し耐えてくれ)

(了解)

 そう答えた心之助であったが、機体は悲鳴を上げ、戦災孤児の心之助隊も敵側の機動兵器隊に徐々に数を減らされ、300機の機体が200機にまでになっていた。
 かなりの善戦とも言えるが。

利介(りすけ)、そちらはまだ行けそう?)
 
 副隊長の利介に心話通信(テレパシー)を送る。

(こちらはまだまだ大丈夫っす。心之助隊長、<黒騎士>を倒しちゃってください)

(了解)
 
 そういうやいなや、<ニンジャハインド ブラックソード>の動きが加速した。
 一度、勝負に出てみたくなった。
 というか、機体の悲鳴から限界を感じてもいた。
 もうわずかの間しか戦えないだろう。
 最後に一太刀、聖刀<流星剣>の殲滅刀技を開放してみたくなった。
 利介なら自分の後をカバーしてくれる実力もあるし、おそらく、上手くやってくれるだろう。
 この激戦、数倍の敵に対してもよく善戦している。
 自分の隊のメンバーもよく成長したし、最強、徳川軍団を相手にして頼もしい限りである。
 さて、メガネ隊長には申し訳ないが、もう時間かせぎも十分だし、ちょっとわがままをやらせてもらう。
 
「殲滅刀技、<流星乱舞(メテオ・ドライブ)>!」 

 天上から無数の流れ星が<黒騎士>に向けて降りそそぐ。
 しばらく耐えていた<黒騎士>であるが、機体が徐々に変形し、亀裂が走り、押しつぶされていく。
 あの何千回も戦ってきた強敵が跡形もなく地上から消え去る。
 そんな日が来るなんて思ってもみなかった訳でもないが、感慨深いものがある。

 <ニンジャハインド ブラックソード>の謎の生体エンジン<TOKOYO DRIVE>がフル回転している。
 全ての<ボトムストライカー>に装備されていて、搭乗者の生命力と連動してパワーを発揮する。
 その不思議な仕組みについて分かったのはごく最近で、殲滅刀技の開放時のみに発動するエンジンであることは分かっている。

「坊や、私のかわいい<黒騎士>をよくも壊してくれたな!」

 純白の服を着た聖女が心之助の眼前に現れた。
 不似合いな漆黒の槍が<ニンジャハインド ブラックソード>に向かって投擲された。
 <ニンジャハインド ブラックソード>の左胸に突き刺さる。
 凄まじい衝撃で数百メートル機体が吹っ飛ばされる。
 地面に何度も打ち付けられて、ようやく機体を立て直した。
 何が起こったのか、しばらく分からなかったが、ようやく、気を取り直す。

「お前は一体?」

 そう問いかけたが、返事がかえってくる前に、信じられない光景が見えた。
 黒いもやもやとした霧が、一瞬で<黒騎士>の姿になる。

(あれが魔女ベアトリスじゃ)

 心話通信(テレパシー)で答えた信長の魔人眼が紅い光を放つ。
 
(いつものことだけど、やってられないよ)

 心之助の脳裏にねじまき姫の力で次元転位しながら<黒騎士>と数千回も戦った記憶が蘇る。 

(心之助、ここからが本番じゃ。心してかかれ)

 魔人眼全開の信長はそういうのだが、正直、やてられない、勘弁してよと思う心之助であった。

(了解)

 殲滅刀技もしばらく使えないが、何とかなるだろう。
 心之助は<流星剣>を構えなおした。






(あとがき)

 二ヶ月ぶりの更新、年に一万字も更新できない巨匠の作品かよ(爆)

 飛鳥時代編の進行が遅くて、謎解きが思いつかないのか(笑)、しばらく関ケ原の戦いが続きそうです。

 次回はついに信長の<天女の舞>が炸裂するとか(今回入りきらなかった)、新キャラというか、新戦力の召喚とかあるかもしれない。

 早いうちに更新したいですが、関ケ原の戦いは中盤のクライマックスになりそうですね。
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登場人物紹介

 安東要(あんどうかなめ)


 東日本大震災後、名古屋に新政府を移し復興に務める若き民政党の総理。
 陰陽師、安倍清明の転生術で35歳→24歳に転生し過去に戻り、東日本大震災を防ごうと悪戦苦闘する。

 月読波奈(つくよみはな)

 通称≪ブスメガネ≫。今時、珍しい牛乳瓶の底のような丸いメガネをかけている。
 安東要が通う名門大学のラノベサークルの後輩で大学二年生の20歳である。

 安部清明(あべのせいめい)

 名護屋の清明神社で安東要の前に現れ、東日本大震災を防ぐという願いを叶えると約束する。

 神沢優(かみさわゆう)


 公安警察、秘密結社<天鴉(アマガラス)>のリーダー。

 メガネ君


 巨大小説投稿サイトのバイトリーダーメガネ君。
 秋葉原で安東要たちの戦いに巻き込まれ、行動を共にする。
 ネットゲーム<刀剣ロボットバトルパラダイス>の人型機動兵器<ボトムストライカー>の操縦に長けていたため、オタクたちと大活躍することになる。

 織田信長(おだのぶなが)

 某戦国武将だが、秘密結社<天鴉(アマガラス)>の剣の民でもある。

明智光秀(あけちみつひで)

本能寺変後に死ぬはずが命拾いし、僧となり<天海>と名を改める。

ザクロ

メガネ隊の副隊長で<刀剣ロボットバトルパラダイス>の廃課金プレーヤー。
メガネ君と共に人型機動兵器<ボトムストライカー>を駆って活躍する。

ハネケ

メガネ隊の新人。<刀剣ロボットバトルパラダイス>のプレーヤー。
金髪碧眼のオランダ人ハーフ。 

夜桜(よざくら)

メガネ隊の新人。<刀剣ロボットバトルパラダイス>のプレーヤー。
黒髪に黒いくさび帷子を愛用。 

カトウ

神沢隊の副隊長で<刀剣ロボットバトルパラダイス>の微課金プレーヤー。
たまに出てくるがさほど活躍しない。

雛御前(ひなごぜん)

安部清明の式神衆筆頭、ミニスカ十二単衣の美少女。

猫鬼(びょうき)

雛御前の使い魔で猫娘姿のコスプレをしている。

犬神(いぬがみ)


雛御前の使い魔で狼男のコスプレをしている。

魔女ベアトリス

見かけとは違う、この世界をも滅ぼすほどの強大な魔力を持つ。
媚術を使って人を虜にし操る。

リカウド・バウワー

魔女ベアトリスの親衛隊である<薔薇十字騎士団>の団長である。
めんどくさい性格でどこかユーモラスな所があるが侮れない力をもつ。

マリア・アドレラ

魔女ベアトリスの親衛隊である<薔薇十字騎士団>の副団長である。
秘剣<十字剣>の使い手。

魔導師アリス・テスラ

時空間魔法を使うチート魔導師。

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