14、スピネルの秘密兵器
文字数 477文字
視界には、サンドライトと執事アレキの好みで手入れされた薔薇園が広がっている。
中でもアーチを描くようなクリスタルのトンネルに集められた『リオ・サンバ』という種類の薔薇が、燦然とした太陽の光を浴びて生き生きと花開いていた。
オレンジのその薔薇は、開花につれて花色を変える。まるでそれは、〈薔薇の貴公子〉と呼ばれる三兄弟を象徴しているようだった。
スピネルは、コレクションのひとつであるデスマスクを取り出すと、それを顔面に身につけた。本物のナポレオンのデスマスクを真似て、スピネルが紫外線対策に作った仮面だ。
「一時的であれ、天の光を僕が作った『太陽のお城』(ソンツェザーマク)に閉じ込めておけるなんて、とっても素敵な話だよね、ふふ」
スピネルは、誰に対して話すわけでもなく、愉快げに囁く。
表が黒、裏が真紅の布に包まれた箱――『太陽のお城』(ソンツェザーマク)を丁寧に取り出す。スピネルが一夜漬けで作成したからくり箱だ。
容易に開閉可能な屋根をオープンさせ、早速、日光回収を開始した。