第2話・置手紙、現代の問題について

文字数 1,129文字

 教義上のことばかり話すのもつまらなく感じる方々もいるだろう。貧弱な知性である私が考えたことを少しばかり話させて頂きたい。
 父の死によって私は現代がファシズムに覆われていると感じた。問題はどうすればこの閉塞感を打破出来るのか? 世界の問題は我々の問題であり、我々の問題は世界の問題である。現代に蔓延する格差社会は本当に正しいのか? 格差を良しとする資本主義は却って資本主義そのものを追い詰めてはいないか? 多様性とは? 全共生とは? 私に与えられたもので解釈している。
 端的に資本主義を絞めているのは金の問題だ。価値の高い通貨を多く保有する者が社会を既得権益の下でしか動かせなくなっている。それは人の罪であり、本性であるから止められるものではない。止められないなら通貨に依存しない経済機構を創り上げれば良い話だ。国家が、世界が個々人に必要な文化的生活の支給を義務付ければ良い話だ。ただ、それだけだと共産主義と何ら変わらない。地球の人口の推移からいずれは地球外に生存領域を造らなければ世界が成立しない。文明の発展を止めてはならない。だから国民にある仕事を義務付ける必要がある。
 それは創造だ。創造するものは何でも構わない。発想、思想、技術、理論、機構、文化、芸術何でも良い。インターネットが膨大な情報が溢れている様に全人類が共有出来る開かれた知を実現するのだ。あらゆる分野が開かれた知によって発展し、新しい分野を創造していく。
 勿論、危険な思想、危険な技術が人類を脅かすかも知れない。
 だが、その危険性を内包した状態こそ全共生の第一歩であり、多様性を保持する為の創造経済の要なのだ。
 端的に言う。
 神は『全てに救い』をお与えになる。
 この基本信条を基に幾つかの掟が存在する。
 ただで与えられたのだからただで返しなさい。
 不正な富で誠実な友人を作りなさい。
 この辺りは未だ判る。聖書を基に作り上げた規範だ。
 もっと大胆に罪を犯せ。そして、恩寵の偉大さを受け容れよ。
 この辺りになると理解し難い掟だ。要するに軽微な罪は見逃すからそれを糧に社会に文化的或いは技術的貢献をせよ。
 創造経済の発案と共に考えられた掟。
 簡単に言うと他の人々のアイデアを盗用しても構わないからそれを元手に何か面白い或いは興味が引かれるものを創造して下さい、そう言っている。その代わり、それを社会に無償で広めよと言う解釈なのだ。自由と平等の下に。この場合の富とは創造そのものを指して語る。人類は生活が保障される限り創造そのものを続けていく。
 あなたはこれらに縛られる必要は全くない。寧ろ、創造経済を超えて新しいシステムを社会にもたらしてくれるのを待っている。
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