第19話 一色高音

文字数 6,735文字

すると、もう一人の鑑識が虎音の元へやってきた。
年齢は20代前半。身長は155ぐらい。眼鏡を掛け
検視官と書いた赤の腕章を付いた
鑑識の制服の青い作業着を着ている。
黒い髪で肩まで伸ばしている。
地味ではあるが、可愛らしい鑑識である。

「虎音マターここにいたんですね? 
スキーム調べ終わりました。どうやらウォッカは
あの野菜Oneプライオリティのみにしか
付着していませんでした」

「は? プライオリチー?」
照代が、別世界の生物でも見る様にその鑑識を見る。

「あら早かったガルね、全部調べ終えたガル?」

「サイザブルコンセンサスしましたよ。 
ファクトベース総動員で、データマイニングしました。
及びグローバル的な観点からね」
何かを言っている様だ。だが、理解出来ているのは
虎音とその若い鑑識だけである。

「ご苦労様。この子、一色 高音(いっしきたかね)ちゃんて言って
凄いガル、どこで覚えたのか知らないけど
珍しい言葉を沢山知っているガル。
因みに今のは、虎音さん、大体調べ終わりました。
どうやら毒は、あの野菜一点にしか付着してませんでした
となり、次のは
相当苦労しましたよ、鑑識総動員で調べましたからね。
となるガル
私も始めは ? だったけど
付き合っていく内に分かったガル。
大体初見では皆こんなリアクションガル。
でも優しい子だから安心して欲しいガル」
鑑識にまともな奴は居ないのか? アリサは思った。

「そのような。私そんなにライフハッカーではないです
ドラッカーの理論的には
虎音さんにはまだまだ追いつけないし
必死に喰らいつくのがやっとです。」
少し顔を赤らめながら、またも謎の言葉を使用する。

「今のは? ライフハッカー? ドラッカー? 
分らないわお願いだから日本語で喋ってよ。
ノレー大柴が可愛く見えるわ」
ノレー大柴とは、トギャザーしようぜで
一世風靡したタレントである。
他にも、藪からスティックなど
日本語と英語を合わせた様な会話を得意とする。

「そんな。私、そんなに物知りではないです。 
虎音さんにはまだまだ追いつけないし
必死に喰らいつくのがやっとです。らしいガル。
この辺はフィーリングガルね」 

「なんか難しいね。ねえ
ところで物知りな高音さんには簡単すぎて
笑ってしまうかもしれないけど質問いいですか?」

「何でしょう? かなり小さい娘」

「小さいは余計だもん! 関ヶ原の戦いって
いつ起こったか私に教えてくれないかしら?」
何か考えがあるのだろうか? 
アリサが、誰でも答えられそうな事を聞く。

高音は右上に目線を向け、暫く考える。その姿は
若き女探偵を髣髴(ほうふつ)とさせる様な真剣な表情。
これは期待出来るのだろうか? 
だが、彼女の口からはとんでもない言葉が語られる。

「メソッドが原の春闘は
1120サイクル位だったとノウハウしていますんで。
ワールドバックログはクリティカルに
コアコンピタンスです。
…と、この国会中継で議論されていたよし
コンフィデンスは存在しますよ」

「コアコン・・? 何言ってるのか分かんないけど
流石に1120という数字は数字のままね。高音さん
1120年じゃないわ。1600年でしょ? 
何でそんな中途半端な数字が出てきたの? 
後、辛うじて分るのはワールドバックログね。
恐らく世界史という意味でしょ?
でも一色さん、これは日本で起こった戦いよ。
やはり私の睨んだ通りだったわね。
意識高いけど一般教養が無い馬鹿って事で良いのね? 
あーでも、どうやって警察官の採用試験を
パス出来たのかしらこの人? ママも警察官になるには
相当勉強したって話を聞いたし」

「何だとぉ?」
高音はカチンと来ている様で、すぐさま反論する。

「MBA取得予定の私、大学ではSTEMです。
私は、噛めば噛む程味が出るスルメの様な人間ですので
日本バックログなどは分りませんでした。
現在の情勢における私をマクロ的な観点から俯瞰て
バックログのヒアリングなんてするのは
あなたの質問のセンスが全く無いという事なのですよ。
それに、エレメンタリースクールで習う実態は
アンチイノベーションの採用センター試験
(今でも正答率9割)ではアウトプット出来ませんので
リセット致しました。将来性を考慮すればミニマム的な
騙されやすいピュアな人で如何も分からないんじゃなく
敢てやらなかったんだのはノーチョイスとは
ソリューションを提示するけど、ね?
もう少しコンプリヘンションの起こりうる
ファーストチルドレンでトレンド入りして欲しかったわ」
語っている自分ですら混乱しそうである。

「ねー訳してー」
虎音をあごで使うアリサ。

「はいはい小さいくせに人使いが荒いガルね 
うーんと、私、大学では理系ですので
日本史などは分りませんでした。
この私を見て、歴史の質問なんてするのは
あなたの質問のセンスが全く無いという事なのです。
それに、小学校で習う事は
警察官の採用試験では出てきませんので
忘れる事にしました。
まだ小さくて何も分からないのは仕方ないとは思うけど
もう少し理解力のある子であってほしかったわ。

だと思うガル
こんな喋り方だから、中々彼氏が出来ないガル」

「へえありがとう。でも小さいは余計よ?
それに高値さんの訳と合わせて二回も言ったわ?
言い過ぎと思うのよね。こんな酷い事
オヤジにも言われた事無いのよ?」

「ちょっと、虎音マター
その案件はエージェントベースですよー
コンフィデンス溢れる私はボーイフレンドなんて
必要ないである事を意味してますし
情報化社会はお志事一筋である事を意味してます。
それに虎音マター。
逆に「人」のビジネスモデル意見を世界に向けて
発信しノーグッドでしたら
ないし、した事ないでしたね。か!
将来性を考慮すればボーイフレンドいない
つまり成長がないし間もなく
トリアコンタと考えて頂いて良いと思いますよね…?
仕事舐めてるの?」
顔を赤くして両手をじたばたさせながら
例の謎呪文を唱え始める。

「こら! 私の事はいいガル!! 
私は居ないんじゃ無くて、敢えて作らない主義ガル」
虎音には通じている様だ。意味は良く分からないが
この受け答えから察するに、虎音も彼氏が居ないのだが
欲しくないと強がっている様に聞こえる。

「全く分からん。何この人。でも小学生で
覚えた事だけを忘れるなんて凄い特技ね。
なんかトラクエの主人公みたい。
忘れるって特技、アリサも欲しいなあ。
深く思い出すは簡単なんだけどね・・
それにしても理系で自分で意図的に忘れたとしても
関ヶ原の戦いが起こった年くらい分るでしょ? 
小学生のアリサでも分るんだから。
でも、関が原の戦いを態々(わざわざ)メソッドがヶ原の春闘と
言い換えるスキルは中々の物だと思う。
けれど初見の人が理解は難しいよね。
本当に頭がいい人なら分かると思うけれど
態々専門用語や難しい言い回しを並び立て話す人って
本当は自分を馬鹿だって白状していると同じなのよね。
そして、当人はその事に一生気づく事は無い。
多分、かっこいい台詞を言う自分に酔ってるんだよ。
私は当意即妙にハイセンスな言葉を操る
言葉の魔術師だ! なんて感じかしら? 何か可哀想」
その台詞が、高音の逆鱗に触れた。

「クッ、マイノリティ欧米で通用しないあんた 
今、世間で最も注目されている
私の喋り方が気に入らない。でも挫けてる暇はない的ね。
虎音マターはASAPにアーハーしてって
この前読んだビジネス書に書いてあったわ。 
内なる自分がお子様と読み取れるマターをアンブレラに 
ディープラーニングする事を振り上げた拳を
下ろしてコミットメントした
先程メールで説明した様に
こうプレゼンするやりがいのあるパワーワードにして
「自分」を仕事にするマターで、意識低い系のB4で堂々と
機密情報のコンテンツを
ブレーンストーミングする実態がデキるのよ」

彼女の本気の反論。アリサの言葉に
人生そのものを否定された気がして
謎のワードをまくし立てる。

「あーあ彼女を怒らせたガル。
今のは早口すぎて私でも解読できなかったガル」
虎音も何を言っているか全くわからない様子である。
だが、取り敢えず
アリサも何を言っているかは分からなかったが
この哀れな娘を褒めてみようと思った。
理由はわからない。 
だが、本能的に恐らく彼女の人生で
ほんの一度すら受けた事がない

『褒める』

という行為をする事で
何かしらの変化が彼女に起こるかもしれない
そうアリサは考えたのだ。
普段あれほど毒を吐いている彼女
しかし、その内面の深層部には、女神ともいえる
大いなる優しき存在が内在しているのかもしれない
そして、脳は高速回転し、最善の言葉をサーチする。
ギュルルン ギュルルン ギュルルンルン!

優しさの、戦いが、今、始まる・・!
----------------------------Third battle start----------------------------
Alisa VS Takane Issiki

「うん、そうだね。でもあなた
黙っていれば凄く可愛いよ? 勿体無い。
絶対男の子が寄ってくるわ。眼鏡も凄く似合っているし」
聖母の様な優しい口調。うっすら後光が見える。

「なななな、如何展開してんのよ
コンプライアンス違反というビッグイシューを
抱えた私がkawaii? では
質疑応答に移りたいと思います。ありえないし
見る目がないわ。ビジョンもちっちゃいし
バイアスでハイコストに見える化した?
今、アメリカでブームになってる
つまり新しいアイフォーンだけ
バッファしたデータも…? なんて事も考えられないし
エシカルファッション弊社にも事情がありまして
ニーズから離れている商材。
私、ファーストインプレッション
そのようなミーム言われたわ」
アリサから放たれる光に少し怯みつつも
スタイルを崩さず反論する高音。

虎音の翻訳にも限界がある様なので、ここからは
語りランク8段の私が全力で訳を入れようと思う。
これでどんな早口で言われても
見逃す事は無いであろう。期待してほしい。

訳「なななな何言ってんのよ、私が可愛い? 
ありえないわ。目だってちっちゃいし
眼鏡で大きく見えてるだけで
お化粧だってした事もないし。服だってダサいでしょ
こんな事初めて言われたわ」
らしい。

「本当よ、その小粒な瞳も、控えめな服装も
惹かれる男の子はいっぱいいるからさ
自信を持って!」


「サブスタンスのサブスタンスに
そうとも考えらえるロジカルシンキングする
それで満足なの? ビジネスモードにするよ?
では、これより面接を開始します。 
世界から見た日本のように小さいF1層」
 
訳「本当の本当にそう思う? 私本気にするよ? 
小さい女の子」

「きた! もう一押しね」
高音の狼狽振りを察し、この戦いも
そろそろ終わりの時を迎える事を感じるアリサ。

「そんな言葉で飾らなくてもいいと思うわ
あなたは素晴らしい人だもの
殻を破る時はすぐそこまで来ているのよ」

「あなた、どうしてアンフェアな事を言う私に
そんな地球に優しいランゲージをかけて
ウェイストする。のよ?
ジョブズをリスペクトする私だけが
悪者みたいじゃない。」

訳「どうして悪く言う私に
そんな優しい言葉をかけてくれるの?
私だけが悪者みたいじゃない」

「今までそんな言葉ばかり勉強してきて
実際の仕事の技術や
普通の雑談とかが出来なくなってきているんだよね?
大丈夫よ、もうやめて。
これ以上あなたの話を聞いていたら
読者がブラウザバックしちゃうわ」
読者という謎の言葉を使ったアリサ。
果たして効果はあるのだろうか?

「え? 読者が? それは大変!!!! 
分かったわ。私、普通に喋る!
これでいいのよね? ところで読者って何?」
なんと! 一色 高音は、普通の女の子に戻った!

--------------------------------End of battle--------------------------------
Alisa Win 経験値4獲得! 0G獲得!
 
 何? コンボ表記は止めたのかだと?
・・数えるのが面倒になってな
それにそんなもの2回もやる必要はないであろう。
同じネタを2度やっても
1回目に比べても、うけはしないであろうし
一生懸命数えても無駄であると私は判断した。
それに人差し指で丁寧に数えているのだが
右の人差し指が数えている間につってしまってな
仕方なしに逆の指でもやってみたのだが
同様に左もつってしまったのだ。
今その治療中なので普段は手に持って語っている
語り専用マイクをスタンドで固定し語っているのだ。

気になったら自分で数えてくれないか?

「最高! 天才!!」
アリサが拍手をする。

「天才じゃないわよ・・でも、
唯一の取り柄の私が居なくなっちゃったな。
こんな喋り方じゃ仕事も捗らないわ
私の口調を変えるなんて
あなた小さいくせにやるわね」
一気に覇気が無くなってしまった高音。

「でもあんたも結構手強かったよ?
でも小さいは余計よ? あんた3回も言ったわよ
MVPじゃん」

「高音ちゃんそんな事はいいガル。
そして、MVPおめでとうガル。
今夜合コン行くガルよ。自信持つガル!」

「えー? いきなりですかー? 
MVPありがとう小さき者よ
で、でも緊張しますねー」

「何とかなったわね。しかし4回か
私ってそんなに小さいのかなあ?
こんなに言われると本当にそんな気がしてきちゃう
全くそんな事ないのにな。不思議ねえ・・
でも、お二人さん中々いいコンビじゃない
鑑識からお笑い芸人に転向してもいけるんじゃない?
鑑識亭高音虎音とかね」
謎の提案をするアリサ。

「馬鹿ガルねぇ、折角公務員になれたのに態々
お笑い芸人になるなんて茨の道を進む訳無いガル?
それに高音ちゃんが前っておかしいガル? 
先輩の私が前で、鑑識亭虎音高音ガル?」

「意外と現実的ねーもっと夢を追いなさい
一定の人気を得られて公務員の収入を超えてきてから
本格的に転向すればいいだけなのに・・
バカはどっちかしら
それに虎音は後ろでいいの! 
たかねとらね・・ほら
両方た行から始まるのよ。それで
たちつてとだと、たの方が先でしょ
こっちの方がいい響きなの」
何故か変な拘りで大人を叱るアリサ。

「成程ね、でも私は死体と戯れるのがしたいガルよ」

「今のは?」

「何ガル?」

「駄洒落なの? それとも天然で出た奴?」

「結果的にそうなっちゃったけど偶然ガル。
死体って響き凄く素敵ガル?
だから無意識に言ってしまったみたいガル」

「へえ」

「じゃあ救急車呼ぶガル。お大事に照代さん。
何かあったら連絡頂戴? 必ずガルよ?」
虎音を見送り、やっとアリサの話を聞いてくれる様だ。

「じゃあね。虎ちゃん」
ニックネームで呼び、手を振る照代。
そしてアリサの方を向く。

「なあに? あ、あんた5階で会ったわね。
感動の再会ナウっと」
カシャリ
アリサを撮影し、ツイートしようとする。

「同じホテルにいれば
またすぐに会う事もあるでしょ」
アリサは携帯電話を奪い取りツイートを削除する。

「あっ、勝手に消さないでよ、ゲホッ
ツイートだって表現の自由でしょ」

「おばさんは、ツイッターの
利用規約見た事無いの?
本人の同意を得ず撮影された画像や動画は
投稿禁止なのよ
それ位コンプライアンス的に常識でしょ?」
いつの間にか高音の話し方が伝染ってしまったアリサ。

「利用規約ぅー? あの長ったるい
日本語で書きなさいって感じの奴でしょ?
始めの内は目を通してはみたけど
だんだん眠くなってきたり。
読んでるだけで頭が痛くなるのよ。
隅々までなんて見た事無いわよ。
後おばさんじゃなくてお姉さんだからね? 
しっかりしなさい?
こんな美少女捕まえておばさんなんて言うなんて
目が腐っていると思われるわよ? 
しっかしあんたあんなのじっくり読んでいるの? 
変わってるわねー、ウケルー。・・?
グッ、い、嫌、ガ、ガハァッ」
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