エピローグ
文字数 1,593文字
悪夢のような戦いから数ヶ月が経った。
あの時、どうやって最後のリボンをクリックしたのか沙織はまったく覚えていなかった。
ただ気が付いたら「5P」と書かれているリボンが画面にあって、その後よしえが引いたリボンには「15P」と書かれていたことだけは朧げに覚えていた。
自分が何故負けたのか?
ずっと答えを見つけられずにいたけど、最近になって漸くその答えが分かったような気がする。
7回戦の途中、私は自ら言っていた。
「これまで私たちをさんざん苦しめた悪戯好きな神様が、この最も盛り上がるファイナルゲームの土壇場で、途中で勝敗を決めてしまうようなそんな興ざめな真似はしないでしょう。最後の最後まできっちり縺れさせるに違いない」と。
それなのに私は6巡目ですでに自分が勝ったと思い込み、7巡目を待たずしてゲームが終了したと喜び浮かれてしまった。
神様の性格を知っていたなら、そんなことあろうはずもないというのに。
そして私はWの呪縛に動揺し、気持ちで負けた。
私は4回戦あたりで、全てが計算ずくの商社の思考を、まるでWのようで怖ろしいと感じたことがあった。
だからもし、勝負は最後まで縺れるという覚悟ができていたら、Wの怨念の言葉が聴こえてこようとも動揺せず、やっぱり商社はWなのね、と冷静に対処できたはずだ。
結局は、最後の最後に心の隙を作ってしまった”甘さ”。
敗因はそれに尽きる。
それにしてもあのクイック・リッチ・クラブを創った組織は一体何者だったのだろう、と時々思う。
あの後ネット上でも多少話題になり、いろんな憶測が飛び交っていたようだけど、結局真相は闇の中で、私もそれ以上調べようとは思わなかった。
ただ1つ言えることは、テレビCMをバンバン垂れ流して国民を喚起し、数百億円を集めているにもかかわらずその半分しか国民に返還しない宝くじよりは、配当率だけを見れば超紳士的な賭博運営を行った組織であることは間違いない。
そして用意されていた頭脳ゲームは、熱く、楽しかった。
あの2日間の戦いを終えて、沙織の元に形として残ったものは数百万円の借金だけだった。
夜逃げや自己破産は、あのゲームが終わった後は考えなかった。
借金が膨らんだのは私が原因。
歯を喰いしばってでも自分の力で返してやる。
ネット関係の会社に就職し、夜は毎日ではないけれどもフミオが紹介してくれたキャバクラのバイトを続けながら、少しずつ借金を返している。
私は逃げない。
全力で立ち向かっていくと決めたから。
投資の勉強も始めた。
クイック・リッチ・クラブで戦って、こういう勝負ごとに熱く燃える自分がいることに気が付いた。
本当に向いているかどうかは分からないけど、今は思いついたことをとことんやってみようと思う。
それで借金が増えたっていい。
また這い上がればいいんだから。
沙織はいつものようにパソコンのメールソフトを開いた。
その中の1つのタイトルに、目が止まった。
『第2回 クイック・リッチ・クラブ開催のお知らせ』
〈了〉
あとがき
クイック・リッチ・クラブは今回で最終話となります。
最後まで読んで頂きました読者の皆様、本当にありがとうございました。
WEB上で小説の連載という初めての試みでしたので、毎日少しでも面白くなるように、分かりやすいようにと悪戦苦闘しながら続けておりましたが、皆様のご支持を励みにして、何とか最後まで書ききることができました。
読者の皆様には感謝しかありません。
至らない点や、お気づきの点など、ご意見・ご感想がありましたら、是非『ファンレター』の方へメッセージをお寄せ下さい。
今後の活動の参考にさせて頂きたいと思います。
次回作を書くようなことがありましたら、その時はまた宜しくお願いします。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。
あの時、どうやって最後のリボンをクリックしたのか沙織はまったく覚えていなかった。
ただ気が付いたら「5P」と書かれているリボンが画面にあって、その後よしえが引いたリボンには「15P」と書かれていたことだけは朧げに覚えていた。
自分が何故負けたのか?
ずっと答えを見つけられずにいたけど、最近になって漸くその答えが分かったような気がする。
7回戦の途中、私は自ら言っていた。
「これまで私たちをさんざん苦しめた悪戯好きな神様が、この最も盛り上がるファイナルゲームの土壇場で、途中で勝敗を決めてしまうようなそんな興ざめな真似はしないでしょう。最後の最後まできっちり縺れさせるに違いない」と。
それなのに私は6巡目ですでに自分が勝ったと思い込み、7巡目を待たずしてゲームが終了したと喜び浮かれてしまった。
神様の性格を知っていたなら、そんなことあろうはずもないというのに。
そして私はWの呪縛に動揺し、気持ちで負けた。
私は4回戦あたりで、全てが計算ずくの商社の思考を、まるでWのようで怖ろしいと感じたことがあった。
だからもし、勝負は最後まで縺れるという覚悟ができていたら、Wの怨念の言葉が聴こえてこようとも動揺せず、やっぱり商社はWなのね、と冷静に対処できたはずだ。
結局は、最後の最後に心の隙を作ってしまった”甘さ”。
敗因はそれに尽きる。
それにしてもあのクイック・リッチ・クラブを創った組織は一体何者だったのだろう、と時々思う。
あの後ネット上でも多少話題になり、いろんな憶測が飛び交っていたようだけど、結局真相は闇の中で、私もそれ以上調べようとは思わなかった。
ただ1つ言えることは、テレビCMをバンバン垂れ流して国民を喚起し、数百億円を集めているにもかかわらずその半分しか国民に返還しない宝くじよりは、配当率だけを見れば超紳士的な賭博運営を行った組織であることは間違いない。
そして用意されていた頭脳ゲームは、熱く、楽しかった。
あの2日間の戦いを終えて、沙織の元に形として残ったものは数百万円の借金だけだった。
夜逃げや自己破産は、あのゲームが終わった後は考えなかった。
借金が膨らんだのは私が原因。
歯を喰いしばってでも自分の力で返してやる。
ネット関係の会社に就職し、夜は毎日ではないけれどもフミオが紹介してくれたキャバクラのバイトを続けながら、少しずつ借金を返している。
私は逃げない。
全力で立ち向かっていくと決めたから。
投資の勉強も始めた。
クイック・リッチ・クラブで戦って、こういう勝負ごとに熱く燃える自分がいることに気が付いた。
本当に向いているかどうかは分からないけど、今は思いついたことをとことんやってみようと思う。
それで借金が増えたっていい。
また這い上がればいいんだから。
沙織はいつものようにパソコンのメールソフトを開いた。
その中の1つのタイトルに、目が止まった。
『第2回 クイック・リッチ・クラブ開催のお知らせ』
〈了〉
あとがき
クイック・リッチ・クラブは今回で最終話となります。
最後まで読んで頂きました読者の皆様、本当にありがとうございました。
WEB上で小説の連載という初めての試みでしたので、毎日少しでも面白くなるように、分かりやすいようにと悪戦苦闘しながら続けておりましたが、皆様のご支持を励みにして、何とか最後まで書ききることができました。
読者の皆様には感謝しかありません。
至らない点や、お気づきの点など、ご意見・ご感想がありましたら、是非『ファンレター』の方へメッセージをお寄せ下さい。
今後の活動の参考にさせて頂きたいと思います。
次回作を書くようなことがありましたら、その時はまた宜しくお願いします。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。