第1話 目覚め
文字数 796文字
始まりは新入生宿泊研修の際に起きた事故であった。
川で行われていたカヌー体験中に、常盤蘭が溺れて意識を失った。
友人の山口千代見が叩いて呼びかけるも、返事はない。
呼吸もしていなかったのか、
その光景を見て、
カヌーガチ勢で半裸の地主梅辰 と、
ジャージ姿で見学していた音雅竹 が動いた。
差し出されたスマホを取り、千代見は食い入るように見る。
覚悟が決まったのか、千代見が人工呼吸へと動く。
気道を確保してから鼻をつまみ、マウスツーマウス。
2回ほど息を吹き込んでから、
30回胸骨圧迫を行う。
そうして再び人工呼吸へと移り――
自分の細腕を見てから、雅竹は自嘲する。
――と、どうやら意識が戻ったようだ。
千代見は泣きながら抱きしめる。
応えるように蘭も泣いていた。
その光景を見て、2人の男子は思うのだった。