伊織と奏良
文字数 1,786文字
－PM12時45分－
《月山神社－浄土庭園》
···アタシはね、あんたが思っているほど優しくないし自分勝手なのよ
············
そんな事は··
············
·····アタシがおネエになった理由は確かに、あんたの男嫌いから始まったものだわ··
っ！！
(やっぱり··！)
だけどそれは、別にあんたの為なんかじゃなかった··
で、でも···っ
奏良は私が男嫌いだから、嫌がらない様におネエのフリをしてたんでしょ？
········
奏良のおネエ化は、私が中学の時に男子から嫌がらせを受けて引きこもった頃だったじゃない！
····確かにその頃ね
実際には中学卒業も間近の辺りだったかしら？
うん···
でもさぁ、考えてもみなさいよ？
もしアタシが本当にあんたの事を想っていたのなら··
おネエになんかならないで、男らしくあんたを守ればいいじゃない
っつ！！！
···でもね
アタシはクラスの皆と当たり障りなくやって行きたかったわ
···········
それと同時に、『男』としてあんたに嫌われるのも嫌だった
····っ！
だからこそ、私のおネエ現象はあんたの前でしか起きないのよ？
(··それだけって訳でも無いけど)
·······
····ね？
とても自分勝手で救いようがない··
そう··思ったでしょ？
··········
·········ﾊｧ
結局··、アタシは自分が一番大事なんだと自ら知らされたわ
·········
····それでもね、やっぱり
どうしても手離せ無かったの··
···何を？
····あんたの事よ
それしかないじゃないの
···でも奏良は私より
自分が··
まぁ、あの頃はまだ俄然お子ちゃまだったからねぇ
··今では随分考え方が大人になって、あの時の事を後悔しているわ
···後悔？
そうよ、ただ単純に男としてあんたを守ってあげていれば良かったと··ね
そんなの···、別に··
後悔は先に立たないものだわ··
だからね、懺悔の意味も込めてアタシは決意したの
···え？
これからアタシは、あんたの幸せだけを考えて、あんたがアタシを必要としている以上、ずっと側にいると
っっ！！
だから此れからもずっと、あんたの前でのおネエ化は終わらない
····そう言う事か
··········
それなら····
もう、いいよ
········
私は一人でも大丈夫
···奏良が責任を感じることはないし、無理に側にいてくれる必要もない
····本当に？
本当に··。
·····だったら、
何でそんな顔をしているのかしら
···········
···伊織
·····なに？
前に、康太が弓道場でカミングアウトしたことを覚えてる？
············
覚えてるけど··、何だか私が思っていたモノとは違うみたい··
···········
やっぱり···
······？
あんたは鈍感だけど···
まぁ、別にそのままでも良いわと思っていたのは間違いだったわ
···奏良は
訳が分からない
··そうね、これじゃあ
あんたには伝わらないわね
············
············
早い話が····
···············
··············
アタシを···これからもずっと
必要として欲しい··、って言うのが本心··
っ？！
い··、言ったじゃない··
結局は、何があっても手離せなかったって··
···········
···アタシはね
いつまでたっても、自分勝手で自己中な男なのよ··
···奏良の自己中は今に始まった訳でもないし、別に平気だよ
·········
·············
あんたには、アタシが必要だわ··
···それは、むしろ奏良の方なんじゃない？
···········
それは··まぁ、否めないけども
····アタシがずっとあんたの隣にいてあげるから··
·········
··必要ないなんて
言わないでちょうだい··
っ！！！
········
···だって
奏良が懺悔のつもりみたいな事を言うから··
···まぁ、それも１つの理由って意味では間違ってはいないわ
····ホント
素直じゃないよね··奏良は··
お互い様でしょ
結局、いつまでたっても奏良の心の中は
私には全く読めない程に複雑だ···
沢山の想いや考える所があるのかもしれない
···だとしても
私はこれからも今まで通り奏良と共に
人生を歩んでいくんだろうと思う
だってそれは、私も望む事なのだから··
