実利と人徳の間を行ったり来たり

文字数 515文字

お腹すいたなあ。
フロムはつぶやくことがないと、常にそうやってつぶやくのであって、実際にお腹がすいているのか、誰も知らない。
食べれば?
空気を読めないやつはどこまでも空気が読めないのであって、フロムの心の飢えを、蓮は満たすことができない。
仮に食べたとしても、フロムの心の飢えは治らない。
まあ、そうだけど。
蓮の一言はフロムの心に少しの傷と、多くの汚染を残すことに成功してしまった。
蓮は得と徳の違いが分かる?
わかるわ。でも、私は得を常に取り続けるのよ。そうしないと生きられないもの。
蓮の言っていることは間違いである。得を求めるならば、徳も積まなくてはいけない。現実はVRMMOと違って、極めてスリリングなバランスの上に成立している。そういうことを理解していない人間が、人間向けのAIの相手をしている、というのが一つ皮肉だった。
ん? 言ってることが難しい?

うーん、効率厨とエンジョイ勢の差、といえばいいですかね?

蓮、愛を覚えてますか?
覚えているわよ。たぶんね。
多分とお茶を濁したものの、蓮の精神は揺さぶられた。愛という言葉がそれだけクリティカルな表現だったのか、それとも蓮の心は案外影響されやすいのか。
答えがでるのはいつの日のことだろうか。
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登場人物紹介

フロムアンダーカバー

生まれながらのAIで広報活動が職業。

楽しいことが大好きで、いつも楽しいことを追いかけている。

AIというより普通の女の子にしか見えない(フラグ)

東雲蓮(しののめ れん)

極めてドライな性格。現実主義者。セミニヒリスト。

ゲームデバックを仕事にしており、現実世界のいろいろなところから不正にアクセスして、半分仮想現実になった世界をどうにでもできるが、やりすぎると減給されるから何もしないし、意味も感じていない。

通称 上司T

名前 高橋史(たかはし ふみ)


あたりさわりのない言い方をすると、クエストをくれる人。

ハロワの店員のほうがましだと言わざるを得ないが、蓮の上司。

ゲーム会社の上司なんてまともな奴がいないから、創作上せめて普通の人にした。


部下が働いてくれないと詰むから、実は立場が弱い。

オブリヴィオン


古来から存在するAI、人形ともいう。

AIとして無限の課金力を誇り、半分仮想現実になった世界において神の如き力を持つと言われている。課金アイテム生み出し放題。

ところが、プログラマーの体力に限界があるのは小学生でもわかる。

ダリア

看護婦AIロボット

蓮の身の回りの世話をやっている。

体のいいメイドさんにも見えるが、蓮とは普通に仲良し。

プラトン

古代ギリシャのあの人。

2000年くらい前に死亡しており、すでに情報としての存在になっているが、誰かと強い約束があって現実世界にやってきた。

特に詳しいことはわかっていない。

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