【4時限目】エクスタシー学習法

文字数 2,711文字

 姫からのエキセントリックな告白は終わった。


 塾講師を始めて以降、多くの生徒の悩みを聞いてきたが、今回のような悩みは当然初めてだ。正直、面喰らっていないと言えば嘘になる。

 

 ただ、驚いてばかりもいられない。悩みの解決への糸口を掴むため、告白の最中から思考を巡らせていた僕は、ふと姫の悶えぶりを思い返すと、彼女が持つ『才能』とも言うべき可能性に気がついた。

2018/03/24 11:53
姫様が900年間、長きに渡って苦しまれてきたことは理解しました。

それを踏まえた上で、その苦しみを解消するための解決策を、今思いついたのですが……

2018/03/24 11:55
解決策ですって?

そんな簡単に思いつくはずがないでしょう。冗談は止めて……

2018/03/24 11:56
あなたの、フェチ……いえ、その特殊な性的嗜好……それを、そのまま受験に活かしましょう!
2018/03/24 11:58
……え?
2018/03/24 11:58
お話を聞く限り、姫様が抱える性的嗜好には多面性があると感じます。

ちなみにMにも『二つの側面』がある、ということはご存知ですか?

2018/03/24 11:59
ふ、二つの側面?
2018/03/24 12:00

はい。

一つは『反転』のM。

そしてもう一つは『真性』のMです。

2018/03/24 18:40
まず、一つ目の『反転』のMについてですが……


平常時、支配者階級である姫様はSMで言えば『S』の立場です。そういった方が、性的場面では逆にM気質になる現象……これを『反転』のMと言います。

2018/03/24 12:03
反転の……M……?
2018/03/24 14:30
そうです。イメージ的には、支配下にある平民に、逆に虐げられて快感を得る……という感覚に近いかと。

2018/03/24 14:31
<カワイ姫の脳内イメージ(1)>
2018/04/03 23:14
2018/04/03 23:13
平民に、虐げられる感覚……
2018/04/03 11:32
姫様は、問題を解けずに自分の無能さを痛感する瞬間、恐らくは無意識に『こんな私に次期当主の資格はない』と思い、『平民に糾弾される』ことと同じ感覚を得ているのでしょう。
2018/04/03 11:32
な、なるほど……
2018/03/24 19:22
これは、999年も浪人している間に染みついた負け犬根性的なものですから、調教して是正して差し上げます。
2018/04/03 13:17

ちょ、調教……!?

……は、はぁはぁ……

2018/04/03 13:15
姫様、今真面目なお話をしていますので、涎の垂れ流しは止めてください。
2018/04/03 13:20
し、失礼……


そ、それで、もう一つのMとは?

2018/04/03 13:21
もう一つは『真性』のMです。


これは姫様が既に知る感覚でしょう。

問題を解くことができず、直接的に『お前に俺が解ける訳がない!』と問題そのものに責められることにより生じる快感…

2018/04/03 12:55
<カワイ姫の脳内イメージ(2)>
2018/04/03 23:18
2018/04/03 23:18
確かに、試験問題が『お前に俺(問題)を解くのは無理だ! さっさと不合格を受け入れろ!』と強要してくるような感覚は、あるかもしれませんわ……
2018/04/03 13:10

しかし、姫様には『問題の声が聞こえる』という能力があるとも言えます。


この能力は、『問題が解答として要求するものを正確に察知する』という能力に発展する可能性があります。


これは、問題を解く上で『ベース』とされる能力です。この才能が、姫様にはあります!

2018/03/24 21:23
才能……ですか。

何だか、あなたの口から初めて殊勝な言葉を聞けた気がしますわ……

2018/03/24 21:32
ですが、残念なことに姫様はまだ本当の快感をご存知ありません。

……そう、Mを越えたMの快感を!

2018/03/24 21:41
Mを越えたM?
2018/03/24 21:43

そうです。最も問題に責められるのは問題を解いている最中ではなく、解いた時なのです!


『解答=自分を丸裸にされる』ことこそ、問題にとっては不敬に感じるはず。『お前如きが俺を解くとは、分をわきまえろ!』と怒りを買い、更なる責め苦が姫様を襲うでしょう。

2018/03/24 21:42
そして、それを味わった時に姫様はMを越えたMを知るのです!
2018/03/25 00:53
な……!!
2018/03/24 14:39
ワクワクするでしょう?

二つのM気質を持つハイブリッドMの姫様にとって責め苦は二重の愉悦…そして、その至上の快感は問題を解くごとに姫様を襲います。


つまり、至上の快感をより多く味わうためには『全問正解』することが必要なのです!!

2018/03/24 14:40
ふ、ぐふふふふふふ……

私ともあろう者が、胸の高揚が抑えきれなくなってきましたわ……!

2018/03/24 14:42
そうでしょう!

多種多様な問題=ご主人様が、あの手この手で責めてくるのを味わえるのですよ!

さぁ、もう遠慮することはありません。快楽に身を委ねましょう!!

2018/03/24 14:42
あ、あああああああああああああ!!
2018/03/24 14:44
あ、あの………姫様!?
2018/03/24 14:45
ご、ご主人様あぁぁぁぁ!!

2018/03/24 14:45
ひ、姫様、落ち着いて!!

気持ちは分かりますが(いや全く分からないけど)、お戻りくださいっ!!

2018/03/24 22:11
……はっ!!

わ、私としたことが、思わず取り乱してしまいましたわ……

2018/03/24 22:15

とはいえ……そのスタンスでいいのですよ、姫様。

私が思うに『我慢して勉強する』という不自然なスタンスでは、決して最高の成果は出せません。

2018/03/24 14:54
そ、そうなのですか……?
2018/04/04 00:56

はい。対して、自然なスタンスというところでは、勉強の習慣化というものがありますが、それは訓練で不自然を自然化する行為。しかし姫様は習慣を超える『本能』のまま勉強ができるのです!


あなたは、最強受験生になれる!

2018/03/24 23:06
私が……さ、最強……!?
2018/03/24 14:57

そうです。

快楽欲という本能のまま、貪るように問題を解く『エクスタシー』への道。

それを正しく育むことが重要です!

2018/03/24 14:58
ほ、本当にいいんですの……?

私が、そんな道を歩んで……

 

2018/03/24 15:00
やれやれです……ここまで言っても理解されないとは、姫様の脳味噌はゴブリン並ですか?

2018/03/24 15:08
ご、ゴブリン並!? 天使である私が、あんな下等種扱いとは……く、くはぁっ!!
2018/04/04 00:59

何度も申し上げた通り、私は『講師』です。

生徒の合格のために最適な学習法を伝授することが仕事です。


姫様の場合、それが本能を活かした学習法だった……それだけの話です。

2018/03/25 01:18
(よくも、こんな荒唐無稽な話を自信たっぷりと……。でも、今までと同じ方法では不合格は目に見えている。それなら、未知の可能性に懸けてみるのも……)
2018/03/24 15:15
いかがしました、姫?

すっかり黙り込んでしまって…私の言っていることが高尚すぎて、ついてこられませんか?


さすがゴブリン並みの脳味噌ですね。

2018/03/24 15:17
こ、ここにきてまた馬鹿にするのですかっ、あなたはっ!!
2018/03/24 15:20

わ、分かりましたわ!!

今回に限り……んっ! あ、あなたを信じて差し上げますわ!!



……せ……んっ……せ……!

2018/03/24 23:41
ん? 

姫様、何か言いましたか?

2018/03/25 18:17
……せ、先、生!!!
2018/03/25 15:14

……ぷっ。

2018/03/24 15:24
くっ!

なんですのそのバカにした笑い方は!


屈辱ですわ!!


……で、でも、でも、んあぅっ!!!

2020/06/27 18:35

悶えながら人のことを呼ぶとは、全く仕方のない方だ……

ですが、ようやく私のことを『先生』と言えましたね。


……いいでしょう。

では、過去問はこれまでとし、明日より本格的な『授業』を始めましょう!

2018/03/26 23:36
ん……はっ、はい……

分かり、ましたわ……

2020/08/10 22:55
(しかし……このドM姫の変態性的嗜好、ここまでとは……)
2020/08/10 18:50
(もしや、自分の性的欲求を満たすため、心の奥底では1000浪して王族からも平民からも全方位的に謗りを受けることを望んでいるんじゃ……)
2020/08/10 22:58
(……いや、絶対にそれは阻止だ!


僕のドS性と調教で、必ずあの変態ドM嗜好コントロールしてやる……!!)

2020/08/10 23:15
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登場人物紹介

◾サトル(29歳/♂)

異能力総合学院予備門の講師。

地球でも塾講師をしていた。

ある罪の免除のため、予備門の講師にされてしまった。

丁寧かつ控え目なドS。


彼の眼が開かれた時、何かが起こるような起こらないような。

◾カワイ姫(1019歳/♀)

異世界のとある小国、レッドブック王家の姫様。天使。

異能力総合学院を目指す受験生。

ガリ勉風だが999年浪人中。

王族気質の自信家かつ傲慢なドM。


ただでさえM気質ではあるが、真価が発揮されるのは難問に直面した時。試験問題を脳内擬人化し、問題を解くことができない自分を問題が責めてくるという妄想をして最大限興奮するという奇特すぎる性癖を持つ。


彼女が眼鏡を外した時、何かが起こるような起こらないような。

■バハムート(2500歳/♀)

見た目ビッチ、中身もビッチなフェロモン剥き出しの邪悪竜。

カワイ姫と同じく異能力総合学院入学を目指す受験生。

勉強と掛け合わせた性癖があるらしいが詳細は謎に包まれている。


一国を燃やし尽くす威力を持つ【メガフレア】を吐くことをライフワークとしている。

■マーク(?歳/♀?)

レッドブック国の同盟国・チャート国で第一王子の家庭教師を務める人物。

両国の友好条約締結1000年の祝賀に先行し、友好の証としてレッドブック王家に家庭教師助手として派遣されて来た。

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