第3話(9)

エピソード文字数 1,330文字

「ところで人間。お前はなんで、この道を走ってるんだ?」

 心の中に疑問符が生まれていたら、リョウがこんな言葉を投げてきた。

「人間よ。なんでお前は、この道を走ってるんだ?」
「はぁ? そりゃ、こっちに敵がいなかったからだよ!」

 よわっちい男が、生死をかけた鬼ごっこをやってるんだ。こうに決まっている。

「そう、そうだな。お前は、ジブン達が故意にこの道を残したから、こうやって走ってるんだよ」
「なっ!」

 そ、んな……。

「そこに自宅があったのは計算外だが、あとはシナリオ通り。ジブンら手下は追い掛け回して楽しみ、最後はその先にいるボスが息の根を止める。そういう筋書きなのさ」
「……ずっと、掌の上で踊らされていたのか……っ。ちくしょう!」

 俺は舌打ちをし、敵がいない大きな道に出る。
 でも。これは誘導されたルートで、その先には親玉がいるんだ……。悔しいが、生き残れる確率は0に近い……っ。

「ボスっ。獲物を連れてきましたよ!」
「「「どうぞボスっ。お好きなように殺してください――ぇ?」」」

 俺、リョウ、その他の角族も。皆揃って両脚が止まる。
 俺らがこうなってしまったのは、残念ながらレミア達がいたからではない。正面では――

「遅かったなお前ら。雑魚が紛れ込んでいたから、暇潰しに倒してしまったぞ」
「………………」

 角が3本あるムキムキの男が腕を組んでおり、その5メートル先くらいか。そこでは、白いワンピースを着た大和撫子のような美少女が倒れていたのだ。

「だ、誰……? あの人は、誰なんだ……?」

 確か展開後『戦場空間』に入り込めるのは、展開した者が仲間と認識してる者か英雄級の強者だけ。けれど彼女に角は生えていないし、負けている。
 要するにあの人は、どちらでもない。なのになぜここにいるんだ?

「時折、結界の侵入に長けた者がいる。この雑魚もそういう人間で、身近で異変が起きたため様子を探りに来たのだろうよ」

 あの人は、自分と同じ地球人。俺のせいで、巻き込んじゃったのか……。

「ぼ、ボス。その女、死んでるんですか?」

 唇を噛んでいると、後ろの方から声がした――。先程まで俺を追いかけていた、リョウが声を上げた。

「いいや、息はある。今日の一人目は、この男にしようと決めていたからな」
「そうだったんですか。でしたらボス、その女をジブンにくれませんかね?」

 コイツ……。人を求めるって、なにを考えてるんだ……?

「ソイツはジブンの好きな黒髪ロングで、おまけにスタイル抜群。ジブン専用のメイドにして、甲斐甲斐しく世話をさせたくなりました」
「……オレ様は、能力が手に入ればいい。その雑魚は好きにしろ」
「有難き幸せ。へへへっ、たっぷりご奉仕してもらおうかねぇ」

 首を後ろに捻るとリョウは鼻の下を伸ばしており、そのことで頭が一杯なのだろうな。俺には目もくれず、美少女へと走る。

「げへへっ、アイツ上玉だな。過去最良だぜっ」

 リョウが。ゲスが。俺の真横を通り過ぎる。

「今日は、ツイてるなぁ。こんな女が手に入るだなんて、最高だおべ!?


 だから俺は、そんなゲスの顔面をぶん殴った。
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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