第2話

文字数 490文字

翌日。名ばかりの休日。研修の日。

いつものように、のこのこと研修に出向くと思われた。しかし、今回は違った。若者は、はじめて研修をさぼった。

職場のみんながセミナールームで空っぽな高揚感に包まれているとき、彼はひとり、自然豊かな湖のほとりにいた。



雄大で神秘的な湖。湖を囲うように広がる森。そこを住処とする愛くるしい小動物たち。生き生きとした草木。それらを祝福するように空を飛びまわる、かわいい小鳥。

自然の中で、疲れた心が癒されていく。この選択は間違っていなかった。サボってよかった。そう若者は思った。

しかし、結局は明日からまた、いつもの生活に戻らなくてはならない。会社をやめる勇気もない。そもそも、いまの仕事をやめて他へうつったところで、結局どこも同じなのかもしれない。でも、もしかしたら。勇気を出して、新しい世界へ飛び込んだなら……

若者は、悲しそうに湖をながめながら、

「いっそのこと人間をやめて、動物や植物になれたなら、どんなにいいだろう」

と、ため息をついた。

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