(一)-3

文字数 423文字

 法子はオフィスの自分のデスクに戻ると、ノートパソコンで犯罪者データベースを開き、「比寄組」のキーワードで検索をかけた。
 データベースは、各都道府県警が検挙した刑法犯のプロファイルを見ることができた。「比寄組」でヒットする人数は、数十人いた。データベースに登録された日付や逮捕・起訴日などの日付はいずれもかなり古いものばかりであった。
 最近では比寄組の郡元鉄平を殺害した罪で逮捕された、同じ比寄組の宮浜龍太の情報があった。内紛により組長を殺した郡元を、その宮浜が仇討ちをしたらしい。宮浜は取り調べや裁判で黙秘を通したため、その動機は警察側の見立てのみが記載されていた。
 さらにその内容をよく見ると、ごく最近、仮出所したとの記録があった。
 法子は席を立ちオフィスを出た。廊下を歩いて行き、人気のない一角に来ると、父に携帯電話をかけた。
「宮浜龍太って知っている?」
 挨拶抜きにそういうと、何度かうなずいたあと、「そう」と言って、電話を切った。

(続く)
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