(二)

文字数 324文字

 箕浦郁雄が菊間恵美と最初に出会ったのは、県立の双水高校に入学して間もない、仮入部期間に美術部の部室に行ったときだった。
 一目惚れ、というわけではなかったが、なんとなく他の一緒にいる女生徒たちとは違う何かを感じた気がした。
 ブレザーの制服にショートカットの髪型、端正な顔立ちだった。他の女生徒たちは、おしゃべりをして部室の男の先輩を見て批評したり、それぞれの中学時代のことを話したりしていた。しかし恵美は部室の中に置かれているイーゼルに乗った絵をじっと見つめていた。ほとんど完成しているものや、まだ色がほとんど乗せられていないものなど、十枚ほど置かれていた。ここの部員が描いている作品なのだろう。恵美はその一枚一枚に丁寧に視線を投げていた。

(続く)
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