メディアとして感じるラノベ業界の課題と展望

文字数 1,881文字

ラノベニュースオンラインでは、ライトノベルの出版を情報のゴールとはせず、メディアミックス展開まで取り上げています。


メディアとして様々な出版社や作家に取材をされることで、個々の立場からは見えにくい、業界全体の動きを観察されていることと思います。


その中で、ラノベやエンタメ業界が抱える課題、あるいは流れのようなものについて、お考えをお聞かせください!

今はライトノベルを売って終わるというような時代ではなくなりましたよね。
アニメ、漫画、ドラマCDなど一つのコンテンツを幅広く展開していかなければならないと感じています。
個人的にとても気になっている点が、情報量の格差でしょうか。他のエンターテイメントコンテンツと比較するとかなり顕著なのですが、ライトノベルの情報は極めてミニマムな印象ですね。
本の情報は書店をはじめとした販売店などで得ることが長らく基盤となっていたんだと思います。その一方で書店自体の減少が止まらず、情報を得られる場所が純減しているのかなと。なかなかネットにおける情報発信の文化が、ライトノベルは特に弱点になっているのかなと感じますね。
ただ、これは情報発信をもっとすればいいんだ、という簡単なお話でもなくて、情報の受け皿となる媒体が増えていかないと、簡単に解決する類の問題でもないと思っています。
そして上の発言と矛盾する点もあるのですが、だからといって情報の発信を辞めてしまうと、ますますどこにも情報が届かなくなってしまう悪循環に陥ってしまうので、各出版社さんには頑張って情報を外側に出していく文化を形成していっていただきたいなとは考えています。
>情報を得られる場所が純減
知らないものは買えませんもんね、当たり前ですけど。
ラノベとの出会いの場が、特に減っているのでしょう。
秋葉原の書店に行っても、新作とヒット作以外はなかなか置いてありませんし。

本屋でお好みのライトノベルに出会えないという読者が、ネットで好みのライトノベルと出会えるようになればいいですね。

年間2000冊も発売されるライトノベルだけに、入れ替わりも激しく、ちょっと目を離した隙に埋もれてしまう……という作品が本当に多いのだと思います。
好みの作品と出会うことも大切ではあるのですが、やはり可能な限り多くの作品が目に入るような環境作りも必要だと思いますね。
実店舗のスペースは限られていますし、その中でライトノベルのスペースも限られてきますからね。
店側も売れている本の動きを見ながら展開しているのだと思いますが、難しい問題ですね。
ラノベニュースオンラインさんが発表されている
『ラノベニュースオンラインアワード』は、そういった問題意識から始められたことなのでしょうか。

あらためまして、どういった賞なのか説明して頂けると助かります。

「ラノベニュースオンラインアワード」は、面白い作品を着実に次へ繋いでいけるような環境が必要なんじゃないかと考えてスタートさせました。
これはライトノベルの打ち切りジャッジのタイミングであったり、書店での平積みの期間であったり、そうした実情と作品評価のタイミングにやや乖離があるのではないか、と感じた点が発端になっています。
みなさんもご存知の「このライトノベルがすごい!」が年1回、大きな投票企画も半年に1回だったりするわけです。月間150冊前後の作品が出ていることを考えると、どうしても埋もれる作品の比率が高く、面白いのに評価に至る前に次への道が断たれてしまうというパターンもひょっとしたら少なくないんじゃないかと。
そういう観点から「ラノベニュースオンラインアワード」は大きな評価ポイントへの繋ぎであったり、発売後1ヶ月から2ヶ月あたりで面白い作品を知る、買ってみようと思ってもらえる新しいきっかけになってくれたらと思い、スタートをしました。今年で3年目になりました。
あとは、世の中のエンターテイメント、たとえばソーシャルゲームなんかを例として挙げますが、毎週イベントを実施して世の中に情報の発信をしているわけです。面白いことが始まったよとか、今がお得だよ、みたいな感じですね。そういった情報にライトノベルとしても対抗するような話題作りをしたかったという思惑もありました。面白いことはライトノベルでも毎月起きてるんだよ、と。
一日に五、六冊発売されているというライトノベルの情報は、意識を向けなければすぐに流れて行ってしまうのでしょう。鈴木編集長のような意識を持った方が、色々と工夫しなければ、わたしたちの元に届かないまま消えていってしまうラノベもあるのかも知れません。

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登場人物紹介

鈴木 寿(すずき ひさし)


ライトノベル総合情報サイト『ラノベニュースオンライン』編集長


Twitter:ラノベニュースオンライン公式ラノベニュースオンライン編集長アカウント

高波 一乱(たかなみ いちらん)


株式会社共幻社代表

作家・編集者


岡崎 庸道(おかざき つねみち)
編集者

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