意図しさと、切なさと

文字数 1,311文字

異世界生活2日目。
あのまま二人に連れていかれたのはやっぱり、『異世界ですねー』と言いたくなるような家だった。
ヨーロッパ的な石の壁とか床の家ね。
それでいて、どこの国?時代?とか言われると、ゲームで見た感じ、という雰囲気の。

もっと戸惑えよ!と自分に突っ込みつつ、特に問題もなく、通された部屋でぐっすりと眠り。
いや、嵐の舟の中で寝ていたキリストとか、捕まった牢の中で寝こけていたペテロのように、どんな時でもどんな場所でも眠れるのは宣教師の必須条件なんだ!と自分を褒めておく。

「おはようございますっ!じゅん様っ!」
「・・・だから、『様』はやめてっていったでしょ、シュガーさん・・・」
「そんなっ、私どものところに来てくださったお方に様をつけないなんて、ありえません!」
「ただの事故だし、俺はただの神学生なんだけどな・・・」
「お姉ちゃんは本当に、来た人に夢を抱いているから」
仕方ないの、という女の子はソルトさん。
この二人は姉妹で、お姉さんのシュガーさんは17歳、ソルトさんは10歳、らしい。
昨日自己紹介しあって教えてもらった話だと普段はこの家に二人で住んでいて、
それというのも。
「あ、先程、父が神殿の仕事が終わって帰ってきたんです!
久しぶりの『来た人』にご挨拶をするのだと張り切っておりますわ!」
「え、確か、お父さんって・・・」
「そちらの世界だと、カンヌシ?サイシ?だけど、ただのおじさんだから。」
そうは言われても緊張するな~
できれば俺もこの世界で伝道を始めたいし、宗教家?の争いにならないといいけど。

「おお!そなたが来た人ですな!あなたがこの世界に来たのも神のお導き!」
そう言って部屋に入ってきたのは長い髪、長い髭、司祭っぽい恰好で、
「儂はこの世界の祭司を勤めておる、シナモンと申す!ワイルドだろぉ~」
・・・司祭っぽい恰好の上に、何故か袖がビリビリのジーパンベストを着ていた。
「ワイルドだろぉ~」
「ア、 ハイ・・・」
「まぁぁぁ!お父様、それは昔、お父様が来た人から直々にもらったと言う最高の法衣ではありませんか!」
「その法衣を着るなんて、お父様まで張り切りすぎ・・・」
「法衣なのっ?!」

じゅん君の宣教☆メモ☆
宣教地の文化を馬鹿にしたり、引いてはいけない。
むしろ、理解を示し、受け入れ、相手と気持ちを共有すること。

「・・・すっ、すごいですね!このベストに祭司服の組み合わせ、斬新です!」
「ほほう、やはり来た人にはこの素晴らしさが分りますか!」
「はい!俺には到底浮かばない着こなしというか!そこに痺れる憧れるというか!」
「そうおっしゃると思って、実はもう1着、用意してありますぞ!」
「え?え?」
「まぁぁぁ!私たちにも触らせてくださらなかったのに!羨ましいですわ!じゅん様!」
「早速、来てみて。鏡も持ってくるから。」
「え?え?」

そして、そのあと俺はその法衣を着て行う儀式を何度もさせられたのだった・・・
「ワイルドだろぅ~(小声)」
「もう少し、語尾の高さが必要ですぞ!」
「ワ、ワイルドだろぉ・・・(元の世界に帰りたくなってきた・・・泣)」
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