考える人

あなたは考える人。
だからこそ、考えてないふりをする。
だれかに優しくするときも
「俺って優しいだろ？」
それは照れ隠しのような気遣い。
気を使わせないための気遣い。
だから考えない人は気づかない。
あなたの優しさに。


カチャッ。ピッピッピッピッ。


そんなことを言ってくれる君こそ
ちゃんと考えてる。
どう言えば、何を見抜けば、
その人を本当に褒められるのか、讃えられるのか。
それを考えていないフリをする。
「気づかない人が馬鹿なだけ、あなたの優しさは誰もがわかるはず。」
そんなことないさ。
わかってくれてるのは君だけ。
だからあんな話をしたんだよ。


カタカタカタカタ、パンッ。


私と同じ境遇で、同じ辛さを知っている。
それを聞いた時、実はそんなに驚かなかった。
あなたも「同じだよ」って私が言った時、
「そうだろうね」って顔したでしょ。
そうだろうね。
そうに決まってる。
あなたは誰かの優しさに一番に反応し、それをみんなに伝えてく。
一生懸命にやったことや、
誰かを深く思ったこと、
それに気づいてもらえなくて
いつも仲間はずれにされてたもんね。
そんな思いを自分以外にはさせないぞって。
そうだよ。
わかるよ。
私も同じだから。


ウィーン、キュッ、ガチャッ。


そうか。
いるんだな。
俺と同じ人が。
それなら愛想を尽かしてたこの世界を
もう一回笑い飛ばしてもいいかな。
誰かを思うほど傷つけられて、
真っ当に生きるほど損をして、
考えれば考えるほどめんどくさがられる。
この世界をもう一回笑うためには
その冷めたようであったかい、
リアリストなようでロマンチストな
俺と同じく考える、
君が必要なんだけど。


ドドドドドドドド。


回りくどくてめんどくさくて、
男だったらはっきり言いなさいって言いたいところだけど、
あなたがただの単純な人なら私はこんなにも興味を持たなかった。
ということは私もきっと回りくどくて、めんどくさくて。
嫌になっちゃう。
考えるあなたを見ていると。
だからこそ、なんだけど。
一緒にいてよね、ずっと。


カチッ…



「はーい、ストップ。ここが有名な『考える二人』の像の前です。
えー実は、この2つの像は元々本当の人間でして、化学兵器の影響でこうなったと言われています。
わが星の研究では、この二人がその化学兵器のスイッチを押し、この星の全てを終わらせたという説が一般的であります。」