レビュー『Seeker』 ポラード様作

文字数 927文字


───現実に出来ないことを物語にすることが、小説の原点なのだと改めて気づく

【物語は】

ネタバレを防ぐと、説明はこうなるのではないだろうか。
”強者と弱者”の立場の交代。ここから全ては始まる。

【人は憎しみを強く感じ抑え込まれると快感に変わる】

これは現実ではなく、読者のことである。(現実は抑制するものなので)だからこそ物語は産まれ、人はそれを手にしたいと思うのではないだろうか。
自分は本来こういう描写は苦手なのだが、何故か快感を覚えた。それは抑圧された感情の解放というものを味わったからである。ただこの物語は、キーワードとして”虐待”という言葉があるが、単なる復讐劇の様なものでは無し、ただただ感情をぶつけ虐待し続ける偏ったものでもない。

【モチーフの使い方の巧さ】

人が子供の時に恐怖から逃れるために、自分ではない自分や人格を作ること
は良く知られている。この話は多重人格の話ではないが、”恐怖から逃れるためには”ということから派生したモチーフが使われている。ただ、最後まで謎は分からない。読者への興味関心の持たせ方がとても秀逸で、最後はどうなるのだろうかと想像したり、これはハッピーエンドなのかバッドエンドなのかと全く先が見えずに、ハラハラドキドキする。

【想像を絶する意外な展開】

この物語は全体を通して、想像絶する展開目白押し。そして因果応報というのは、単に自分に返って来るのではなく、時には選択することもあると言うことに気づかされる。恐らく、読まないと何を言っているのか分からないとは思うが。方向性は一般的に想像できても、その方法にオリジナリティがある。少なくとも、自分にはこの発想はない。

この物語を読んだ感情の動きとしては、初めはうわあっと目を背けたくなり、次第に怒りを感じて、それが快感となって解放される。しかしその後はどうなるのか、大丈夫なのかハラハラする。こんな物語である。もし、猟奇的な表現が苦手でなければ是非手に取っていただきたいと思う。
読めば、タイトルが何を指していたのかも分かります。ああ、そういうことかと。オリジナリティが溢れ、発想豊か、読者の感情を動かす凄い作品です。おススメですよ。

なるべくネタバレにならないよう、ぼかして書いております。
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