第3話

文字数 795文字

「あぁもういっそのこと死にたい」

 近くにあった公園の芝生に横たわり、ヘイジは悩ましくも己の要領の悪さに打ちひしがれていた。、スーツが泥まみれになっているのも知らずに。

 奇妙な一致により、猿の子孫であり、これといってなんの特徴もない就活生二方平治は「ぜんぜん、ひとつも」疑ってはいなかった。万に一つも、ヘイジの親しい変人の一人が同じ猿の子孫ではなく、実は遠い銀河の宇宙からやってきた地球外生命体であることを。

 二方平治は、万に一つも思わなかった。

 その変人が初めて地球。日本にやってきたのは、今から三十年ほど前のことだった。彼は日本社会に馴染むため一生懸命努力した。なぜならば彼は地球を支配するために派遣された調査員だったからである。その努力は報われたり、報われなかったりしていたが、これは調査員ならよくある話である。

 しかし、彼は不覚にも大きな失敗をしてしまった。興味本位に日本の文学に触れたばかりに、その豊かな感性に感服し、名だたる文豪が書き残した名作を読み漁っため、このうえなく不自然な芥川直木という名前を選択してしまったのである。

 彼は特別な能力など持ち合わせていなかった。ただ、ヘイジより五センチほど身長が高く。関西弁で、髪は直毛でちょっと茶色の色素がある。イケメンでもないがいつの時代でもそこそこ地球の女性にはモテていた。

 なんとなく普通の人と雰囲気が違う感じがするが、どこが違うと言われれば特に気になるところなどない、しばらく彼と話しているとテンポよく弾む会話でどこか楽し気な気分になることかもしれない。笑うときには、顎を軽く上げ視線を天井に向けることだろうか。
 それとも、悩み事を打ち明けた時の彼の口癖がいつも決まって「なんくるなる、なんくるなる」だからだろうか。普段は関西弁なのにいきなり出てくる沖縄の方言になんだか落ち着かない気分になるのだ。
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登場人物紹介

二方ヘイジ

7月に入っても未だ内定0の就活生。

または、Fラン大学四年生。

これといって特徴もない。

アクタガワ

大学六年生で実は宇宙人。

ヘイジとは、インカレのサークルで知り合った。

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