#3.4 霧の風
文字数 4,234文字
自分の部屋に戻ったマチコです。早速、ピンク色の壁を見ながら「壁かぁぁぁ」と呪文を唱えます。すると、壁はピンク色のままでした。しかし、何も起こらなかった訳ではありません。壁の向こうは外、という知恵を授かったのです。そこで、ドングリを抱えたまま部屋を出たマチコです。
外に出ると、そのまま数歩でケイコの家に到着です。そこはマチコの苦手な森の中、そして夜空に輝く星と、あれ? 今まで月があったでしょうか、その月が森を不気味に照らしていました。
家の中とはいえ、とても広そうな森です。抱えているドングリをどこか適当に置いておこうと思っても、その『適当』な場所に見当がつきません。そこでその場にドングリを放り投げるマチコです。
「おーい、ケイコー、おーい」
マチコの呼びかけに沈黙する森、いえ、ケイコの家です。
ところで、マチコの家、というより部屋とケイコの家の違いはどこから来るのでしょうか。マチコたちにとって家とは、単に寝る場所でしかありません。ですから広さなどは重要ではなく、寝られる場所さえあれば良いのです。
そして、家の中は何時も夜になっていることで、お休みにはもってこいでしょう。例外的というか、マチコの部屋の窓は外と同じように陽射しが差し込んできます。まあ、これはマチコの趣向のようなものです。
そこでマチコは、ケイコの家が無駄に広い、それも森のようになっていることの理由を考えたことがあります。そしてあれこれと考えた末、ケイコは欲張りなのだと結論づけました。
あれも欲しい、これも欲しい、とそんな底なしの欲望を持つケイコには、それを満たしても有り余る空間が必要なんだ、と思うマチコです。
◇◇
返事の無い森に背中を向けて歩き出したマチコです。ですが直ぐに立ち止まってしまいました。それは数歩でこの森を抜けるはずだったからです。
あれ? おかしい、と思いながらまた数歩。しかし森から出られないマチコです。正確には出られないのではなく、歩く方向が正しくないだけなのです。もちろん、自他共に認める方向音痴。そこでブーンと真上に飛び上がるマチコです。
空中で、ドッチだったかなぁとクルクルしていると、何やら光るものが! それに引き寄せらせるマチコです。
そこに在ったものは、大きくて黄色い壁、それが月に照らされて光っているのでした。その前に降り立ったマチコはそれをツンツンしてみました。それはドアのようでもあります。そしてその向こう側には何も無い、ただのガラガラです。
「壁かぁぁぁ、というよりドアよね。それとも近道かも」
マチコはそのドアを押してみることにしました。するとマチコの力でも簡単に開いていきます、ギギギギィ。開いていくドアの向こうは、どんよりと曇った世界、と思いきや、霧が出ているようです。そうして見えてきたのは橋、それも板張りの橋のようで、遠くの方まで続いている感じです。
さて、この先を進むか、それとも見るだけにするのか、考えるマチコです。う〜ん、う〜んと考えていると開いたドアが閉まり始め、またギギギギィと音を立てています。こう急かさせると思わず中に入らずにはいられないマチコです。ここは本能に従って進んで参ります。
コトコト。歩く度に音が鳴る橋です。周囲は霧に包まれ視界が良くありません。ですから無闇に飛んで行く訳にもいきません。それに、知らない場所を飛ぶのは怖いものなんです。
コトコト。橋の上といえば、その下には川が、と言いたいところですが、霧が濃く、そこまでは見えません。また、空というべきか上の方も霧で真っ白です。そう、霧の白と木の橋のくすんだモノトーンの世界が広がっているのです。
コトッピタ。立ち止まったマチコは歩くのが面倒になりました。でも、戻るのはもっと面倒です。風に乗って行こうかなぁ、そう思っても風は吹いていません。仕方なくそのまま、どこまでも続いていそうな真っ直ぐ橋を――ダダダッと走っていきます。
「やだもぉぉ、どこまでも続いてんのよぉぉぉぉぉぉ」
走っても走っても何も変わらない進まない状況に、叫んでみるマチコです。その声も霧に飲み込まれるように響かず届かず、全てが止まって見える今日この頃です。
コトコト、コトコト。諦めて歩き続けるマチコです。世界は相変わらずの相変わらず。一層のこと橋から飛び降りれば何処かに着くんじゃないか、そう思ったものの、それも怖いので止めておきます。そうして考え事をしていると、立ち止まっているのに、何やらコトコトと足音が聞こえたような、そうでないような。
そこで、ダダダッと走り、立ち止まって耳を澄ませます。すると微かにコトコトが。それが気のせいなのか本当に聞こえたのか分からなくなったマチコです。でも、自分以外の誰かが居ると思うと勇気百倍、猛ダッシュのマチコです、ダダダッ。
「うおぉぉい、誰かぁぁぁ、いるのぉぉぉぉぉぉ」
ダダダッ、コトコト。マチコの呼びかけに返事は無いものの、次第にはっきりと聞こえてくる謎の足音、その正体やいかに。先を急ぎましょう、ダダダッ。
「誰よぉぉぉ、そこの誰かぁぁぁぁぁぁ」
コトコト、コトコト。走るのが面倒になったマチコは、それでも早歩きでズンズンと進んで参ります。目標があるっていいよね、希望があるって素敵よね、と思ったかどうは定かではありませんが、少なくとも先に進む原動力にはなっているコトコトです。
そうして、とうとう、ついに、やっと、めでたく怪しい影を見つけました! それはまだ霧で見え隠れしていますが、人です。それも二人の人影が揺らめいているではありませんか。これはもう、声をかけるしかありません。
「ねえ、そこの、ちょっと、待って、待ってよ、待ってたらぁぁぁぁぁぁ」
無視です。マチコの声は届いているはずなのに無視されました。人影はそのままゆらゆらと進んで行ってしまいます。そうはさせないと、ありったけの声で、
「待ってよぉぉぉぉぉぉ!」と叫ぶマチコです。
その声が届いたのでしょうか。ゆらゆらがピタリと止まり、それが振り向いたような、そうでないような。ですが、今がチャンス、ロケットダッシュで一気に詰め寄ることに成功したマチコです、ハアハア。
「ちょっと、そこの人、待ってよ」
マチコが声を掛けた『その人』は普通に出会う人のサイズではなく、マチコより背が低いくらいです。そしてその人はお婆さんと小さな女の子、二人仲良く手を繋いで歩いていたのでした。
「ねえ、お婆さん。ここはどこなの、知ってる?」
マチコがお婆さんに尋ねると、口は動いているのに、その声を聞くことが出来ません。そしてお婆さんと小さな女の子は目を合わせると互いに何かを言っているようなのですが、それも聞こえないのでした。
「ねえ、お婆さん。聞こえないの? 私の声、聞こえない?」
しゃがみ込んでしまったマチコです。どうやらマチコの声も相手には届いてはいないようです。それでも、お互い見えていることは確かなようです。そこで、小さな女の子の手を掴んでみたマチコです。
振り向いた女の子は、どこか見覚えがあるような、そう、ケイコに似ていると言われれば、そうかもしれません。それよりもマチコが気になったのは、自分が下げているバッグと同じようなものを、その女の子も下げていたことです。
「ねえ、あなた。そのバッグ、どうしたの?」
女の子にマチコが訪ねていると、お婆さんは女の子と握っていた手を離し、そのまま歩いて行ってしまいます。それに何かを言っている女の子ですが、お婆さんは少し振り向いたものの、手を振りながら行ってしまいます。
それを見た女の子は、お婆さんの後を追いかけようと駆け出しそうになったのを、「ちょっと」と思わず腕を掴んでしまったマチコです。
その時、女の子のバッグからビーズ玉が零れ、それが橋の上をいくつも転がっていきます。女の子は転がるビーズ玉とお婆さんを交互に見ては、どうしたら良いのかと困るのでした。
そんな、動けなくなった女の子の代わりに、転がるビーズ玉を掻き集めるマチコです。それを女の子の手のひらに乗せてあげると満面の笑顔が返ってきました。そうして振り向いた女の子はお婆さんに向かって何かを言っているようですが、お婆さんは、それに手を振りながら、また何かを言いながら歩き続けるのでした。
「じゃあねぇぇぇ、おばあちゃん」
女の子の声が初めて聞こえた時。女の子とマチコはお婆さんを見送るように、その後ろ姿を見ていたのでした。そして、お婆さんの姿が霧に包まれて見えなくなると、その周囲にぽっかりと穴でも空いたように暗くなっていきました。
あぁ、行っちゃったねぇ、と手を振り続ける女の子の後ろ姿を見ながら思うマチコです。でも、女の子を置いていっていいの? とも思っていると、お婆さんが消えた辺りから暗闇が広がってくるではないですか。
それはまるで、この先にはもう何も無いんだぞ、と言わんばかりに大きく広がり、オマケに、支えを失ったかのように揺れ始めた橋です、グラグラです。
「なに? なんなのよぉぉぉぉぉ」と驚き、腰が抜けそうなマチコです。それに、
「キャハハハ」と笑い出す女の子です。
その笑い方、その無邪気さ、そのアホ加減。どれを取っても、いいえ、それら全てを備えているのはケイコ以外に存在しない、そう確信するマチコです。容姿は小さな女の子ですが、それは精神年齢を当てはめれば、と納得できるようです。
「キャハハハ」
その声に連動するかのように橋は波打ち、暗闇が襲いかかってきます。これではまるで世界の終わり、終焉が訪れようとしているのでしょうか。もちろん、そこまで付き合いたくないマチコです。しかし、暗闇が全てを飲み込んでしまった時でした。
「なんなのよぉぉぉぉぉ」
◇
夜空に輝く無数の星。それは手を伸ばせば届きそうな、いいえ、伸ばせば届く星です。そして上下に揺れる大きな葉っぱのベット。その上でマチコは遠くて近い星を見ていました。そうして隣の葉っぱベットを見ると、そこに、そこに、ケイコが呑気に寝ているのでした。
「なんなのよぉぉぉぉぉ、いるじゃないのぉぉぉ」
こうしてマチコはケイコの家でケイコを見つけることが出来たのです。めでたしです。
◇
外に出ると、そのまま数歩でケイコの家に到着です。そこはマチコの苦手な森の中、そして夜空に輝く星と、あれ? 今まで月があったでしょうか、その月が森を不気味に照らしていました。
家の中とはいえ、とても広そうな森です。抱えているドングリをどこか適当に置いておこうと思っても、その『適当』な場所に見当がつきません。そこでその場にドングリを放り投げるマチコです。
「おーい、ケイコー、おーい」
マチコの呼びかけに沈黙する森、いえ、ケイコの家です。
ところで、マチコの家、というより部屋とケイコの家の違いはどこから来るのでしょうか。マチコたちにとって家とは、単に寝る場所でしかありません。ですから広さなどは重要ではなく、寝られる場所さえあれば良いのです。
そして、家の中は何時も夜になっていることで、お休みにはもってこいでしょう。例外的というか、マチコの部屋の窓は外と同じように陽射しが差し込んできます。まあ、これはマチコの趣向のようなものです。
そこでマチコは、ケイコの家が無駄に広い、それも森のようになっていることの理由を考えたことがあります。そしてあれこれと考えた末、ケイコは欲張りなのだと結論づけました。
あれも欲しい、これも欲しい、とそんな底なしの欲望を持つケイコには、それを満たしても有り余る空間が必要なんだ、と思うマチコです。
◇◇
返事の無い森に背中を向けて歩き出したマチコです。ですが直ぐに立ち止まってしまいました。それは数歩でこの森を抜けるはずだったからです。
あれ? おかしい、と思いながらまた数歩。しかし森から出られないマチコです。正確には出られないのではなく、歩く方向が正しくないだけなのです。もちろん、自他共に認める方向音痴。そこでブーンと真上に飛び上がるマチコです。
空中で、ドッチだったかなぁとクルクルしていると、何やら光るものが! それに引き寄せらせるマチコです。
そこに在ったものは、大きくて黄色い壁、それが月に照らされて光っているのでした。その前に降り立ったマチコはそれをツンツンしてみました。それはドアのようでもあります。そしてその向こう側には何も無い、ただのガラガラです。
「壁かぁぁぁ、というよりドアよね。それとも近道かも」
マチコはそのドアを押してみることにしました。するとマチコの力でも簡単に開いていきます、ギギギギィ。開いていくドアの向こうは、どんよりと曇った世界、と思いきや、霧が出ているようです。そうして見えてきたのは橋、それも板張りの橋のようで、遠くの方まで続いている感じです。
さて、この先を進むか、それとも見るだけにするのか、考えるマチコです。う〜ん、う〜んと考えていると開いたドアが閉まり始め、またギギギギィと音を立てています。こう急かさせると思わず中に入らずにはいられないマチコです。ここは本能に従って進んで参ります。
コトコト。歩く度に音が鳴る橋です。周囲は霧に包まれ視界が良くありません。ですから無闇に飛んで行く訳にもいきません。それに、知らない場所を飛ぶのは怖いものなんです。
コトコト。橋の上といえば、その下には川が、と言いたいところですが、霧が濃く、そこまでは見えません。また、空というべきか上の方も霧で真っ白です。そう、霧の白と木の橋のくすんだモノトーンの世界が広がっているのです。
コトッピタ。立ち止まったマチコは歩くのが面倒になりました。でも、戻るのはもっと面倒です。風に乗って行こうかなぁ、そう思っても風は吹いていません。仕方なくそのまま、どこまでも続いていそうな真っ直ぐ橋を――ダダダッと走っていきます。
「やだもぉぉ、どこまでも続いてんのよぉぉぉぉぉぉ」
走っても走っても何も変わらない進まない状況に、叫んでみるマチコです。その声も霧に飲み込まれるように響かず届かず、全てが止まって見える今日この頃です。
コトコト、コトコト。諦めて歩き続けるマチコです。世界は相変わらずの相変わらず。一層のこと橋から飛び降りれば何処かに着くんじゃないか、そう思ったものの、それも怖いので止めておきます。そうして考え事をしていると、立ち止まっているのに、何やらコトコトと足音が聞こえたような、そうでないような。
そこで、ダダダッと走り、立ち止まって耳を澄ませます。すると微かにコトコトが。それが気のせいなのか本当に聞こえたのか分からなくなったマチコです。でも、自分以外の誰かが居ると思うと勇気百倍、猛ダッシュのマチコです、ダダダッ。
「うおぉぉい、誰かぁぁぁ、いるのぉぉぉぉぉぉ」
ダダダッ、コトコト。マチコの呼びかけに返事は無いものの、次第にはっきりと聞こえてくる謎の足音、その正体やいかに。先を急ぎましょう、ダダダッ。
「誰よぉぉぉ、そこの誰かぁぁぁぁぁぁ」
コトコト、コトコト。走るのが面倒になったマチコは、それでも早歩きでズンズンと進んで参ります。目標があるっていいよね、希望があるって素敵よね、と思ったかどうは定かではありませんが、少なくとも先に進む原動力にはなっているコトコトです。
そうして、とうとう、ついに、やっと、めでたく怪しい影を見つけました! それはまだ霧で見え隠れしていますが、人です。それも二人の人影が揺らめいているではありませんか。これはもう、声をかけるしかありません。
「ねえ、そこの、ちょっと、待って、待ってよ、待ってたらぁぁぁぁぁぁ」
無視です。マチコの声は届いているはずなのに無視されました。人影はそのままゆらゆらと進んで行ってしまいます。そうはさせないと、ありったけの声で、
「待ってよぉぉぉぉぉぉ!」と叫ぶマチコです。
その声が届いたのでしょうか。ゆらゆらがピタリと止まり、それが振り向いたような、そうでないような。ですが、今がチャンス、ロケットダッシュで一気に詰め寄ることに成功したマチコです、ハアハア。
「ちょっと、そこの人、待ってよ」
マチコが声を掛けた『その人』は普通に出会う人のサイズではなく、マチコより背が低いくらいです。そしてその人はお婆さんと小さな女の子、二人仲良く手を繋いで歩いていたのでした。
「ねえ、お婆さん。ここはどこなの、知ってる?」
マチコがお婆さんに尋ねると、口は動いているのに、その声を聞くことが出来ません。そしてお婆さんと小さな女の子は目を合わせると互いに何かを言っているようなのですが、それも聞こえないのでした。
「ねえ、お婆さん。聞こえないの? 私の声、聞こえない?」
しゃがみ込んでしまったマチコです。どうやらマチコの声も相手には届いてはいないようです。それでも、お互い見えていることは確かなようです。そこで、小さな女の子の手を掴んでみたマチコです。
振り向いた女の子は、どこか見覚えがあるような、そう、ケイコに似ていると言われれば、そうかもしれません。それよりもマチコが気になったのは、自分が下げているバッグと同じようなものを、その女の子も下げていたことです。
「ねえ、あなた。そのバッグ、どうしたの?」
女の子にマチコが訪ねていると、お婆さんは女の子と握っていた手を離し、そのまま歩いて行ってしまいます。それに何かを言っている女の子ですが、お婆さんは少し振り向いたものの、手を振りながら行ってしまいます。
それを見た女の子は、お婆さんの後を追いかけようと駆け出しそうになったのを、「ちょっと」と思わず腕を掴んでしまったマチコです。
その時、女の子のバッグからビーズ玉が零れ、それが橋の上をいくつも転がっていきます。女の子は転がるビーズ玉とお婆さんを交互に見ては、どうしたら良いのかと困るのでした。
そんな、動けなくなった女の子の代わりに、転がるビーズ玉を掻き集めるマチコです。それを女の子の手のひらに乗せてあげると満面の笑顔が返ってきました。そうして振り向いた女の子はお婆さんに向かって何かを言っているようですが、お婆さんは、それに手を振りながら、また何かを言いながら歩き続けるのでした。
「じゃあねぇぇぇ、おばあちゃん」
女の子の声が初めて聞こえた時。女の子とマチコはお婆さんを見送るように、その後ろ姿を見ていたのでした。そして、お婆さんの姿が霧に包まれて見えなくなると、その周囲にぽっかりと穴でも空いたように暗くなっていきました。
あぁ、行っちゃったねぇ、と手を振り続ける女の子の後ろ姿を見ながら思うマチコです。でも、女の子を置いていっていいの? とも思っていると、お婆さんが消えた辺りから暗闇が広がってくるではないですか。
それはまるで、この先にはもう何も無いんだぞ、と言わんばかりに大きく広がり、オマケに、支えを失ったかのように揺れ始めた橋です、グラグラです。
「なに? なんなのよぉぉぉぉぉ」と驚き、腰が抜けそうなマチコです。それに、
「キャハハハ」と笑い出す女の子です。
その笑い方、その無邪気さ、そのアホ加減。どれを取っても、いいえ、それら全てを備えているのはケイコ以外に存在しない、そう確信するマチコです。容姿は小さな女の子ですが、それは精神年齢を当てはめれば、と納得できるようです。
「キャハハハ」
その声に連動するかのように橋は波打ち、暗闇が襲いかかってきます。これではまるで世界の終わり、終焉が訪れようとしているのでしょうか。もちろん、そこまで付き合いたくないマチコです。しかし、暗闇が全てを飲み込んでしまった時でした。
「なんなのよぉぉぉぉぉ」
◇
夜空に輝く無数の星。それは手を伸ばせば届きそうな、いいえ、伸ばせば届く星です。そして上下に揺れる大きな葉っぱのベット。その上でマチコは遠くて近い星を見ていました。そうして隣の葉っぱベットを見ると、そこに、そこに、ケイコが呑気に寝ているのでした。
「なんなのよぉぉぉぉぉ、いるじゃないのぉぉぉ」
こうしてマチコはケイコの家でケイコを見つけることが出来たのです。めでたしです。
◇