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文字数 1,074文字

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 それから暫く経った頃、暁人は一時的に退院が可能になった。その日が丁度休みの日だったのもあり、裕海は午前中に顔を出しに行った。
「暁人ー、退院おめでとう。よかったな」
「ゆうちゃん! ありがとう!」
 相変わらず暁人は、裕海が来ると嬉しそうだった。裕海はささやかなお祝いとして、あの時のヒーローの絵と同じ大きさの紙にまた絵を書いて持ってきた。今度は暁人の好きなキャラクターをたくさん詰め込んだ傑作だ。それを見るなり、今までで一番の笑顔で「これ一生大切にする!」と言うほどにはとても気に入ってくれたようだった。
「でも、退院しちゃうとゆうちゃんに会えなくなるのは寂しいなぁ……」
「何だそれ、普通は退院って嬉しいもんだろうよ。でもありがとな」
 そう寂しそうな顔をする暁人の頭をぽんぽんと優しく撫でる。
「なぁ、暁人」
「ん?」
「あのな、暁人が退院するからとかじゃなくて、多分この先暫く会えなくなるかもしれないんだ」
「えっ、どうして?」
「俺、自分のやりたいこと見つけてさ。それの勉強もあるし、どこか地方に行くことになるかもしれない。今までみたいには会えなくなりそうなんだ」
 するとますます悲しそうな顔をして「そんなぁ……」とぽつりと言う。
「じゃあ今日が終わったら、もう暫く会えないの……?」
「恐らくそうなると思う。だから、」
 裕海は一度、暁人から絵を返してもらう。そして手帳に挟んでいたボールペンを取り出してその裏に何かを書き始める。短く二行ほど何かを書いてから、裏側を表にしたままで再び暁人の手元に返す。
「これ、俺の携帯の番号とアドレス。お母さんの携帯でも借りて、連絡したい時にいつでもしてくれたら嬉しい。返せる時には必ず返すからさ。俺も暁人と加奈絵さん宛てに何か送ると思うし」
 前はもう会えないと思っていたから何も出来なかった。でも今は違う。俺は必ず、この先も暁人と加奈絵さんに会いに行くだろう。今度こそは手放さないで、きちんと繋がっていたいから。
 会えなくなっても会話は出来ると分かり、暁人はみるみるうちに今さっきの笑顔に戻った。
「ありがとう、ゆうちゃん。絶対にメール送る! 電話もする!」
「うん、何かあったらいつでも言えよ。なんたって暁人は俺の弟だからな。会えそうな時は必ず会いに行くからそれまで待っててな」
 それから一緒に駅に行くまで、三人は色々なことを話した。そして裕海は、自分とは逆方向に帰る二人を最後まで見送ってから、反対ホームに戻る。すると丁度電車が来た。
 ありがとう、暁人。またな。
 電車に揺られながら、二人の向かった方に向かってそう呟いた。
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