参考文献(抄)&『白鳥の湖』ラストシーン各種(オリジナル案含む)
文字数 1,697文字
伊藤恵子『チャイコフスキー』(作曲家・人と作品シリーズ)(音楽之友社、2005年)
小松佑子『チャイコーフスキイ伝 アダージョ・ラメントーソはレクイエムの響き 』上下(文芸社、2017年)
森田稔『永遠の「白鳥の湖」 チャイコフスキーとバレエ音楽』(新書館、1999年)
森田稔『チャイコフスキイ』(新潮社(新潮文庫)、1986年)
千住真理子『聞いて、ヴァイオリンの詩』(文藝春秋(文春文庫)、2009年)
ハンス・クリスチャン・アンデルセン『赤い靴』および『白鳥の王子(野の白鳥)』(さまざまな日本語訳が出ています。)
アタナシウス・キルヒャー 『普遍音楽 調和と不調和の大いなる術(ムスルギア)』(菊池賞訳、工作舎、2013年)
■『白鳥の湖』ラストシーン各種(抄)
数えきれないので有名なものを一部だけ。ハッピーエンド→バッドエンドの順に並べました。
◇ゲルギエフ版
オデットとジークフリートは愛の力でロットバルトを倒し、結ばれる。単純明快なハッピーエンド。
◇ブルメイステル版
オデットとジークフリートは愛の力でロットバルトを倒し、オデットは魔法がとけて人間の娘の姿に戻り、ふたりは結ばれる。ハッピーエンド別バージョン。
◇マッケンジー版
オデットが湖に身を投げ、ジークフリートもあとを追って身を投げる。その愛の力でロットバルトは倒れ、恋人たちの魂がよりそって浮かぶ幻が見える。《湖底の永遠の法悦》バージョン。
◇ヌレエフ版
ロットバルトが勝ち誇り、オデットを連れ去る。ジークフリートは地に倒れてオデットをむなしく求めつづける。
◇リアム・スカーレット版
オデットは身を投げて死に、人間の娘に戻った彼女のなきがらをジークフリートが抱いて嘆き悲しむ。遠くで白鳥姿のオデットの幻が永遠の愛を誓っている。
◇マシュー・ボーン版
ストーリー全体が大胆に変えられています。
淫乱な母の王妃への恋に悩む王子は、夜の公園で雄の白鳥に出会い、魅了される。しかし後日、舞踏会に現れた白鳥は王妃を誘惑、嫉妬に狂った王子は銃をふりまわして暴発させ、王子のガールフレンドが死亡。ラスト、ザ・白鳥は仲間の白鳥たち(全員オス)につつき殺され、王子はショック死。彼のなきがらを母の王妃が抱いて嘆き悲しむ。
雄の白鳥というアイデアは素晴らしく、ぜひ受け継がれていってほしいです。ただ、もとの音楽の持つ高貴さとあまりにもかけはなれた演出なので、なぜ新しく曲を書き下ろさずに、わざわざチャイコさんの曲を使うのか、わかりません。この版のファンの方々ごめんなさい。
ここからは、ドライフリュッセシュタート・オリジナル版各種です。どれもハッピーエンドです。たぶん(笑)。
◇フリーディ版(再録)
王子は黒鳥オディールと結婚。二人の愛の力で呪いがとけた魔王ロットバルトも、王子の母の王妃と大人婚。白鳥オデットがひとり寂しく湖のほとりで泣いていると、素敵なさすらいの雄の白鳥があらわれ、二人は連れだって南へ飛んでいき、そこで末永く幸せに暮らす。
◇マリウス版(再録)
王子をさらっていこうとする魔王に、白鳥オデットが追いすがって命乞い。そこへ黒鳥オディールも駆けつけて、いっしょに嘆願。三人は愛の力でロットバルトを倒し、末長く幸せに……かどうかは、また別のお話。
◇ディーディー版(初公開)
王子と白鳥は愛をつらぬいて結婚。呪いがとけた魔王と母王妃は、しばらく大人の時間を楽しむ(なにそれ)。素敵な雄の黒鳥がひとり寂しく湖のほとりでたたずんでいると、素敵なさすらいの雄の白鳥があらわれ、二人は連れだって南へ飛んでいき、そこで、他のメスが育児放棄した卵をゆずりうけて大切に温め、かわいいひながかえって、三人は末永く幸せに暮らす。※
※じっさいにニューヨークのセントラルパーク動物園で起こったできごとです。白鳥ではなくペンギンだけど、オス同士のカップルが他の子たちをまねして石を温めていて、それを見た飼育員さんが驚いて、育児放棄されていた卵をあてがってあげ、めでたくひながかえって三羽は家族になったという感動実話。参考:『タンタンタンゴはパパふたり』(ポット出版、2008年)。