第5話

文字数 1,848文字

ストーカー矢崎は練習中の飯田にぶっきらぼうに言い放つ。
「サッカーで木下君を誘惑するなんて、ビッチな女ね。」

飯田は顔をしかめて首を傾げる。
「誰だあいつ?」
去っていく矢崎を手でしっしとはらう。その時、木下が現れ、矢崎に声をかける。「君なんかよくみかけるね。サッカーしない?」
「げ---」
「何ですか飯田先輩?」
いやなんでもないと振り返った矢崎が駈寄ると飯田は突然木下と肩をくむ。二人はこう思った。
(感じ悪----)
微妙な空気をジュダルが割る。

「さて、その気持ち、サッカーでケリをつけようか。お二人さん。」

なんのことですかと木下がうろたえる。
「そっか!この人数なら鳥かごができる。」
「鳥かご-----?」
矢崎と木下とジュダルで鳥かごを作るとその三角形の中に飯田が入る。
「基本的にカゴのみんなは動いちゃだめだよ。パスでやり過ごし、何秒でこの中でボールを取れるかが勝負だ。いいね?」
ジュダルがパスをした瞬間に飯田が走り込む。
矢崎がボールを持って慌てている。
「長く持つなボールを回せ。二人にパスを出すんだ。悟られないように!」
ヒョロヒョロのボールを蹴ってあっけなくボールが飯田に渡る。
「13秒さ。なかなかいいタイムだ。
勝てるか?矢崎さん。」
矢崎はジュダルの大石の霊に気づいた。
実質4対1かな---矢崎は霊感を研ぎ澄ませ深呼吸する。
「つぎはわたしね木下くん見てて。」
「おう。」
その返事にわらった矢崎は気を入れなおす。
「霊視!」
矢崎はこころの中でそう唱えた。
相手の身体動きがよく見える。オーラは正直だ、次の動きが分かる。
「最初のパスが通ったらスタートだよ。」
木下のパスが飯田に渡ったとき、動きを読んだ矢崎が飯田を捉えた。二人は競り合う。
「ほう!」
(驚異的な瞬発力に読みがいい、使えるなこの子。)
飯田と近距離のおうしゅうが続くと飯田の個人技に食らいつき矢崎がボールに触れた。
「霊視オフ!」
霊視状態は疲れるらしい、矢崎は息がきれている。
ジュダルはストップウォッチを押した。
「11秒!矢崎の勝ち。ナイスディフェンス。」
飯田も感の鋭さに手のひらを返してサッカー部員になるよう誘うついでに耳うちした。
「木下君、見てるよ。よかったね」
木下は尊敬の目で見ていた。
「わ--わたしサッカー部に入ります!誘われたし--」
のせられた矢崎はちょっと用事があるとみんなから離れ、大石の霊に話しかける。
「きみこの人をどうする気だい?」
【最強のサッカー選手にするんだ。あいつにオレの技術を叩き込むんだ。】
「悪霊になっちゃだめだよ。」

「誰と話してるんだ矢崎!練習するぞ。」

「いやなんでもない。ちょっと待って」

霊視オン!

(それにしてもいつ見てもいびつだなジュダル君のオーラ)
悪魔に取り憑かれたジュダルは普通に笑っていた。それが不気味だった。
大石:(ジュダルあの子見えるみたいだぞ)
「へえ----僕が怖くないのかな?」
ジュダルは器量のある子だと思った。

その後写真を通して霊媒師の息子の竹原に見てもらっていた。
「これはなんて強力な悪霊だ。すぐこいつを除霊してやる。」
「でもあの二人楽しそうだったような?」
そんなはずはない。そう言って雨の中、美形の中学生が帰宅で走っているジュダルに立ち塞がる。
「やっぱりな!お前悪魔だな!しかも楽しそうだ。悪魔に取り憑かれたらどうなるか知らないらしい。」
ジュダルはなんのことかわからずに無視して走ると何かを引き抜かれた。
「大石!」
「お前、知らないなら教えてやる。悪魔はな。1人と契約する際10年の寿命を払う。お前はこいつといるだけで死をはやめるんだよ!」
「だからなんだ?僕は父さんと契約している。こいつは二人目だ。どう言う目に会うか知ってるさ。」
雨が強くなっていって、辺りが暗くなり、悪魔の父の姿があらわになる。
「僕はサタンの子さ--。」
「?」
「僕は苦しみ続けるかわりに寿命が延びる特別な身体をもっているんだ。だから走る量を増やしてついでに身体を強くする。おれはこの悪循環を大石といるという希望で循環した形に変えてみるんだ。全国にいって。その時のきっぱりと別れる。それが契約内容さ。さ---返せ!」
竹原はふつふつと煮えたぎっている。
「お前騙されたんだな。」

「違う!大石は友達だ!」

「友達ならお前よりサッカーをえらんだりしない!」

雨が止まない---。


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