俺は急いだ。

文字数 900文字

 朝はちゃんとスマホのアラームで起きたのに、最初の躓きは朝ご飯を食べようとした時だった。
 いきなり、目玉焼きにかけようとしたケチャップがテーブルいっぱいに飛散した。
「ひええ」
 慌ててその掃除に手間取り3分ロス。
 次に起きたのは、トイレットペーパ切れ!
 しかも、個室内に紙がない!
 独り暮らしじゃなかったら、大声で助け呼ぶ状況である。
 そこで(以下自粛)
 ものすごい惨めな気分で4分ロス。
 ほぼ手を洗っていたと付記しておく。
 家を出て駅に向かう。この時点では予定していた電車に間に合う、はずだった。
 いきなり、目の前で老婆が転倒…
 無視できない性格なので、助け起こして、そのまま荷物も持ってやり、近くのコンビニまで手を引く。大変感謝され、もうこれ以上ないくらいの謝辞を延々1分は受け、合計で6分ロス。
 駅の到着、改札を潜った瞬間に目的の電車の発車メロディー…
 ホームで6分待ち。
 やっと来た電車に乗る。まあ、ぎりぎり間に合うかとスマホの時計を睨む。
 響き渡る急停車の音!
「前方の踏切で立ち往生の車が居ます。安全確認が済むまで暫くお待ちください」
 アナウンスに、顔がムンクの叫びになる。
 慌ててスマホでメッセージを送る…
 いつまでたっても未読…
 え?
 ちょっと待って?
 まさかと思い、電車内でも停車中だからと自分に言い訳し、電話をかける。
「おかけになった電話は、ただいま電源が入っていないか、電波の届かない所に…」
 表情筋にブリザードがコーティングを施していった。
 20分後やっと電車動く。
 全速力で改札を抜けようとした瞬間、バーが下半身を強打した。
 残高不足!
 慌ててチャージに向かったら、機械の前が行列!
 やっと、改札を出て待ち合わせの場所に到着。
 居ない!
 どこを見回してもいない!
 約束に30分近く遅れたもんな…
 呆然と立ち尽くす事更に15分。
 突然声がかかった。
「ごめ~ん、待った~、なんかさ、遅くなっちゃった。許して、てへぺろ」
 俺は、にっっこり笑いながら答えた。
「うん、絶対許さない! 今日は一日離さないからな!」
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