第4章-1 新造”宝船”

文字数 8,316文字

 ヒメシロ星系のワープイン、ワープアウトの両方可能な宙域の近傍に、全長約1.5キロメートルの民間大型輸送船”シンタク”が停泊していた。その大型輸送船に、ボロボロの宝船が連結されていた。
 シンタクの船体には、新技術開発研究グループのブランドマークが随所に描かれている。そして、舳先に新開家の紋章が控えめに掲げられている。
 通常、新技術開発研究グループの船や機体に、新開家の紋章をつけることはない。紋章を取り付けてあるのは、新開家の特命で動いていることを示すのだ。
「うぅーーーーむぅ」
 暑苦しい雰囲気を撒き散らしながら、ゴウは不満げな表情で唸っていた。
 シンタクの第1格納庫にある新造”宝船”を一望できる位置に立ち、エンジニアの作業を眺めているようだ。
 そこに、クールグラスを身に着けた作業服姿の男が現れ、ゴウに声をかけた。
「何か不満でもあるのか。・・・希望通りレーザービームを8門装備し、どの方向から敵がきても対応できるようにした。船首と船尾には、ミサイル発射孔を追加してある」
 男もゴウと同じように、エンジニア達が格納庫で忙しく動き回っている姿を視界にいれる。
「うむっ、ミサイルは?」
 2人は視線を合わせず、下を見ながら話しを続ける。
「多弾頭炸裂式ミサイルと指向性爆薬式誘導ミサイルの2種類を用意してある」
「うぅーーーーむぅ。ラルフ・スタインマン統括よ」
 ゴウは顔をあげ、新造”宝船”の開発責任者であるラルフ・スタインマンに視線を向けた。ゴウの体から暑苦しい熱気が発せられている。そして、大きく見開いた眼からスタインマンに視線で圧力をかけてくる。スタインマンはゴウからの圧力を受け流し、真意を質す。
「なんだ? ゴウ。問題でもあるのか? それとも称賛か?」
 ゴウは重々しく口を開くと、バリトンボイスの無駄に良い声音で、残念な内容を奏でる。
「・・・装飾が見当たらないばかりか、塗装すらされてないぞ」
「はいっ?」
「良いか、これは宝船だぞ」
「ああ、そうだな。お宝屋の為だけに用意した恒星間宇宙船だ。新技術開発研究グループの総力が・・・技術力の全てが、結集されているといっても良い程だ」
「そこまで分かっていながら、なぜに気付かないのだ。スタインマン統括よ」
 体中に力を漲らせ、暑苦しい口調で台詞を続ける。そのゴウの圧力に、同じぐらいの身長のスタインマン統括が後退る。
 いつもの事ながら暑苦しい奴だ。
 近くに寄ってこなくても話はしっかりと聞くのに・・・。
「いいかぁああああーーー。宝船なら、豪華絢爛な外装があってしかるべきだぞ。それなのにだっ、塗装すら完了してないとは、どういうことなのだぁああー?」
「あのなぁ、装飾用の塗装がされていないだけだ。装飾されていないが恒星間航行可能で武装している宇宙船と、装飾されているが恒星間航行が不完全で武装もない宇宙船。どっちが良いか?」
「何を言っているのだ。簡単なことだぞ」
「そうだろうとも」
「そうだとも。両方とも完璧な宇宙船が、俺の宝船に相応しいのだっ!」
「・・・おいっ」
 そろそろ、お宝屋のゴウとの付き合いも、3年ぐらいになる。
 だから知ってた・・・しかし理解したくはなかった。
「よく聞け、お宝屋。いや、ゴウ。いったい何人のエンジニアが、休日返上で働いたと思う? いいかっ、千人以上もだ」
 ゴウは心底不思議そうな表情をしている。
「んっ? 武装はともかく、このくらいの船なら、新開グループにいくらでもある。一から開発しても、ほぼ全自動で製造可能だろ? しかもぉーだっ、1ヶ月もの期間があったのだぞ」
「・・・あのな。お前らが無茶するから、お宝屋特別仕様として、最新鋭の機器を詰め込めるだけ詰め込んだ。その為に、それぞれのスペシャリストが集結して、調整に調整を重ねて開発し完成させた。しかも、その場で仕様変更したり、果ては新規機能を開発し、追加までして完成させたんだ」
 新開グループの優秀なエンジニアの能力を結集し、集まったエンジニアが情熱と知識を振り絞った。様々な分野のスペシャリスト達が持ち寄ったスキルを融合させた。それは知恵へと昇華され、新開グループが持っていなかった宇宙戦艦のノウハウとなった。
 まさに一品ものにして、逸品の恒星間宇宙船。
 新開グループが戦闘能力を備え創造した、新たな恒星間宇宙船”宝船”。
「うむ・・・それはアキトに文句を言ってくれ。俺たちは依頼に対し真摯に向き合った。そして遂行したのだ。しかもぉおーだっ。モーモーランドの宇宙戦艦と戦闘して、アキトを含め全員無事に生き残ったのだぞ。称賛されこそすれ、非難される覚えなぞないなぁああー」
 全くもってその通りなのだが、イラっとしてくるのはゴウの成せる業か?
「別の宇宙船が大活躍したと、噂で聞いている。それに空人君は、その宇宙船の船長になったらしいな」
 お宝屋からの報告は、新開家と一部の幹部にしか公開されていない。しかし新開空人の動向は、新開グループの開発部門で注目されている。
 その為、スタインマン統括は事実を知らないのだが、報告内容を噂として耳にしている。
「うむ、そうなのか?」
 ゴウは不思議そうな表情で応じた。
「違うのか?」
 噂は噂でしかなかったか・・・。
「いいや。宇宙船ユキヒョウと協力して、モーモーランドを排除したのは事実だ。だが、アキトがユキヒョウの船長になったのは知らなかったぞ」
 口が軽く脳筋バカにしか見えないのだが、ゴウは不用意に機密を話したり、口を滑らせたりはしない。滑らせたように見せかけて、開示しても差し障りない範囲の情報を流すぐらいだ。
 契約は遵守し、依頼は全うする。
 お宝屋はトレジャーハンターであり、腕利きのマルチコントラクターだ。
 これ以上情報を引き出せないのであれば、用件を済ませた方が精神安定上いい。
 お宝屋も自分も、無為に時を潰してよい贅沢な時間を持っていない。
「新造宝船の改善改修の見通しが立った。33時間後に出立可能だ」
 新造”宝船”は、ヒメシロ星系のワープポイントに辿り着くまで、1週間もの期間をかけて様々なテストを実施した。小さな課題は即座に解決し、大きな問題は原因から根本解決する。
 即応開発体制を整えたシンタクが共に航海して、新造”宝船”の改善改修を重ねてきた。
 その集大成が、33時間後に完成する。
「うむ。それでは、33時間後に出立する」
「それと、装甲の随所にヒヒイロカネを使っている」
「ふっはっはっははーーー。では仕方ないなぁ。仕方ないぞぉお。それならばぁ、装飾は後日で構わぬぞぉおおおーーー」
 スタインマン統括は、溜め息と共に呟く。
「装飾は諦めないのか・・・」
 技術者としての仕事ではないし手配が面倒だな、と考えながらも、宝船の開発責任者として対応を考え始めた。なにせ新開家から、お宝屋の要望に出来る限り応じるようにと、命じられているのだ。

 新造”布袋ロボ”が、シンタクの第4格納庫にスムースに入っていった。
 操縦していたのは、翔太である。
 全7機のコウゲイシの試乗を終えたのだ。
 翔太は、布袋ロボから飛び降り、第4格納庫の上の方にある操作室に赴く。
 そこで一息つこうと椅子に座り、コーヒーブレイクにした。その位置からは、第4格納庫の全景が見渡せる。
 7機の異形のコウゲイシが、第4格納庫内で横1列に並んでいた。その異形のコウゲイシの周辺で、エンジニア達が忙しそうに作業している。
 翔太は七福神ロボの設計書を、クールグラスでじっくりと確認し始めた。彼の特殊スキルは、機体を動かした感触とフィードバックから大体の機能を掴めことができる。だから、自分の違和感を特定しようとしていたのだ。
 その時、翔太の元に新技術開発研究グループの作業服を着た女性技術者がやってきた。
「どうだった? 7機ともアンタの要求仕様通り開発したよ。何かあるかい?」
 戦闘力を加味するとコウゲイシというより、人型兵器の域に達している。女性は、その人型兵器の改善と整備の責任者、ガブリエラ・ミストラル技術統括である。
「ガブリエラちゃんさ。ルーラーリングとの適合率調整機能は、どこかなぁー」
 設計をクールグラスで確認しつつ、翔太が質問した。
「アタシは、アンタより10歳年上なんだよ」
「そうそう、そうなんだよねぇー。だけどさぁ、千沙より色々と小さすぎると・・・どうしてもねぇー」
 翔太は素晴らしい笑顔で、辛辣な内容を口にした。
 身長165センチの千沙と比べると148センチのガブリエラは小さい。しかもガブリエラの体型はコンパクトにまとまっているので、181センチの翔太からすると子供に見えてしまうのだろう。
「アンタには必要ないでしょう。アタシの専門じゃないんでね。割愛したよ」
 ガブリエラはシレッと言い放った。
「いやいや、僕だけが操縦する訳じゃないんだけどねぇ。・・・まぁ、大丈夫かな?」
「それでは、分からないことがあれば、設計書を確認してするようにっ!」
「あれあれ、そこはマニュアルじゃないのかなぁー?」
「天の川銀河系で唯一無二の人型ロボットだよ。一々用意なんてしてられないね。それに、こんな機体をまともに動かせる人は、アンタぐらいでしょう」
「そうそう。そこは、もっっっと褒めてくれても構わないよ。それより、そんな機体を開発して、製品になるのかい?」
「製品化の心配より、宝船と七福神ロボを新造しなくて済むようにするのが、新技術開発研究グループの利益に繋がるよ」
「いやいや、こんな新技術ばかりを採用しているのは、テストを兼ねているよね」
「新技術のテストは、完璧に完了してる」
「あれあれ、テスト機だって聞いてたはずだけどなぁー。・・・もしかして、テスト結果が悪く、改善ができなかったのかな?」
「採用した新技術のテストで問題は見つかってない。完了してないのは、人型ロボットのテストだけだよ」
「それは・・・製品として完成してないよねぇ?」
「人聞きが悪いね。テストする余裕もなく、壊したお宝屋が悪いとアタシは思うよ。それに、製品化する訳ではないしね」
「あれあれ、本音はどうかな? 半年後だったら半年後だったで、テストが完了していない新技術を採用するよねぇー」
 ガブリエラは悪びれもせずに答える。
「まあ、そうですね。でもアンタが7機とも動作を確認したし、テスト完了ということで良いね」
 2人して悪巧みを考えているような笑顔になる。
 その表情のまま、翔太が爆弾をブッ込んでくる
「困った困った。もしかして合体も試してなかったりするのかな?」
 ガブリエラの驚愕した表情をみて、不機嫌そうに翔太が言葉を続ける。
「僕だって設計書ぐらい読めるし、動かしてみれば解るさ」
 いいえ、そんなのアンタぐらいだし・・・。
 マルチアジャスト畏るべし。
「ふぅー、流石は特殊人間・・・。無重力下での合体は成功したけど、0.1G以上では1回も成功してないね。それと宇宙空間で合体後の動作確認をしたけど、まともに動かなかった」
「どうして動かなかったのかな?」
「1日でパイロットが音を上げたんだよ。それも肉体的ではなく、精神的に疲れすぎて・・・。翌日も立ち上がれなくてね」
「それで?」
「アンタには、良いテストデータの提供を期待しるよ。あーっと、そういえば、アタシから合体について、説明した方がいい?」
「そうそう、それに最初から合体の説明もして欲しかったか・・・」
 ガブリエラは丁重に発言を無視して、翔太の台詞が終わる前に口を開く。
「それでは・・・」
 それから30分間、ガブリエラ技術統括の説明が止まらなかった。
「・・・合体の概要は、このぐらいだよ。後は仕様書と設計書を確認すればいい。そこに全て記載されてる。後で開発途中に作成したドキュメントと、試験データも全て渡す。他に何かある?」
「ああ、そうそう。最後に、僕を特殊人間と呼ぶのは止めてもらいたいかなぁ。マルチアジャストは特殊スキルであって、僕は改造された訳でもないし、機械を埋め込んだりもしていない。正真正銘、生身の人間なんだよねぇー」
「短くて良い呼び方がない、だから仕方ないんだ。もう良いよね?」
「いやいや、マルチアジャスターでイイでしょう」
「それだと、普通の人間みたいだねぇ」
 翔太は涼やかな笑顔を絶やさないで、ツッコミを入れる。
「いやいや、普通の人間なんだけどねぇー」
 アンタの、その図太い神経だけで、既に普通の人じゃないよ。
 アタシはアンタが、改造人間だと説明された方が、納得がいくんだ。
「はいっ、これで説明は終わり」

 新造”宝船”への武器弾薬の積込みは簡単だった。
 何故なら武器庫の何処に何を配置するか、予め決められていたからだ。
 しかし旧宝船の倉庫エリアには、部品と道具が大量にある。整頓はされているが、積み込んだ・・・というより、詰め込んだ本人にしか分からない状態になっている。
「う~ん。全部は持ってけないの?」
 旧宝船の倉庫エリアで、千沙は20代の男性エンジニアに悩みの解決策を求めた。
「倉庫エリアが以前の3分の2になってるんで・・・」
 しかしミサイル担当の男性エンジニア、田中耕一は素っ気ない口調で答えた。
「宝船は大きくなったのにね~」
「お宝屋の要求仕様に従って武装を増やした結果です」
 心底呆れている田中は、さっさと荷物を新造”宝船”に移してしまいたかった。
「困ったな~。アキトくんが改造したりしてたから・・・。もう何が何やら・・・全然分からないの。アキトくんがお宝屋に戻ってきたら、すぐに使えるようにしたいのに。だから、そのままにしておこうかなって、思ってたんだけど・・・」
 そうアキトは1年の間、宝船の部品と道具を好き勝手に改造していたのだ。
 お宝屋の3人には、どれが改造に成功した完成品で、どれが失敗作なのか判断つかない。つまり、仕分けが出来なかいのだ。そこで、アキトが戻ってくるまで全てを保管しておく事にしているのだ。
「そっ、それなら、全部置いていきましょうっ!」
 急に田中の瞳が煌めいた。
 貪欲なエンジニアの眼をしている。
「新造”宝船”の予備パーツを大量に持っていった方がいいです。テスト航海はしていても、何が起きるか分からないです。それで、ここにある部品と道具は、私が全部責任もって預かっておきますので、安心してください」
「う~ん、そこまで言ってくれるなら・・・。でも、私が?」
「いえ、新開グループの”開発統括”が、大切に責任を持って預かりますともっ。それこそ美術品のように・・・」
 そう、美術品のように、大事に研究しますともっ!
「そうかぁ~・・・う~ん・・・」
 少し冷静さを取り戻した田中は、理屈と熱意で押し切ろうと決意する。
「それに新造”宝船”と旧宝船では部品が異なります。最新の部品を使用しないとフルに性能が発揮できないばかりか、最悪動作しないこともあり得ます。なにしろ、このたった1隻のために開発者と先端エンジニアが千人以上動員されました」
 前のめりに体ごと田中が迫るので、千沙は後退りしながら相槌を打つ。
「あ、あの・・・そうなの?」
「そうなんです。・・・いいですか、新開グループでも最先端の研究開発をしている人材が、全能力を傾け金額を度外視して愉しんだのです」
 田中の熱意が暴走している。
 宝船の開発を愉しんだと言ってしまうところなど、本心を露呈しまくっていた。
 開発者やエンジニアほ優秀になるほど、寝食を忘れて没頭するタイプが多い。それに課題が発生すると議論が活発になる。
 そんな開発者や技術者をサポートする要員も、充分に配置された。
 眠たくなったら睡眠をとり、お腹が空いたら食事をし、行き詰った時には、リフレッシュする。そして新造”宝船”以外のことを考えなくて済むように、生活全般の支援が準備されていた。
 すでに辟易していた千沙だったが、違和感のある言葉には反応した。
「愉しんだ?」
 16歳の女の子とはいえ、千沙も資格を持っている一人前のトレジャーハンターである。鋭く、そして聡い。
「いいえ、苦しんで生み出しましたともっ! 最先端の部品になればなるほど、最初は汎用性を欠いたものになります。製造工程が安定し安価になれば、その最新部品に汎用的なインターフェースを載せるでしょう。逆に最新部品の普及が爆発的に進めば、他の部品自体に最新部品対応のインターフェースが標準搭載されるのです。つまり汎用性が高まります」
 千沙の視線に見透かされそうな気がして、田中は更に早口になる。
「えーっと、ですね。最新部品同士を接続して使用するのは難しい、ということです。代替品ではなく正規部品を持っていなかないと・・・えー、最悪の場合・・・そう修理すら不可能になります・・・」
 最終的に千沙の追及を勢いで乗り切り、新開グループの”開発統括”で荷物を預かることが決まった。
 田中は自分の幸運を喜んだ。
 そう宝船には、宝が積んであったのだ。

 お宝屋の3人は、それぞれに出航準備を終え、新造”宝船”の食堂に集まった。
「さて、宝船も新しくなったなぁ。明日には出航できるそうだ。そこで、だ。まず1番重要な事を決めるぞ」
「うんうん、ゴウ兄の重要と考えていること、僕にはわかってるよ」
「翔太? ・・・さすがは我が弟よ」
「新造”宝船”の呼称をどうするかだよね? ”お宝屋形船”ではどうかな?」
 それは違うと、あたしは思う。
 ゴウにぃが1番重要と言ってる事は違うよ・・・。
 兄妹でも、時々翔太の思考についていけないのよね~
「何を言ってるんだ翔太よっ!」
 ゴウにぃの援護のために、千沙も口を挟もうとしたが、必要ないようだった。
「宝船だからこそ七福神が乗っているのだ。俺は”宝船改”が良いぞ」
 ゴウにぃいいい~~~っ。
 そこじゃないのっ!
 それに”宝船改”はないよ~。
「船名は”宝船”のままが良いよ~ それより、1番重要な事を決めるのっ!」
「千沙よ。今、1番重要な事は決まった。次に重要なことは、お宝屋としての今後の活動方針だぞ」
 違うのに~・・・。
 はぁ~。もういいよ、その話で・・・。
「そうそう、どうしようか? 久しぶりの休みだねぇ。トレジャーハンティングでもしながら、僕は七福神ロボの必殺技でも考えようかな」
「ふむ。・・・なるほど、翔太らしい。俺は航海以上に、武装の習熟訓練が必要だと考えている。片手間でトレジャーハンティングしながらでも訓練は可能だ・・・。ならば、俺は構わぬぞ。場所はヒメジャノメ星系としよう」
「良かった良かった。ゴウ兄は僕と同じ考えだよ」
 にぃ達は素直じゃないなぁ~。
 やっぱりアキトの所に向かうんだぁ。
「惑星ヒメジャノメで、あたしは新しい野外キッチンの使い勝手を確かめたいの~。最新だよ。凄いんだよ。調理した物が、食べても安全か判定してくれるの。これで大蛇のミディアムレアも安心して食べられるよ」
 ゴウが徐に口を開く。
「千沙よ・・・それは重要だな。存分に腕を振るうのだ」
「いやいや、ゴウ兄。それは間違っているよ」
「どこがだ?」
「腕を振るうのは、千沙が野外キッチンに慣れてからだよ。何事も訓練が重要なのさ」
「うむ、その通りだな。いざという時、不慣れな所為で敵に遅れをとりたくないな。よし、特訓するぞ」
 ・・・ゴウにぃ。あたしは戦闘要員じゃないのに・・・。
「いやいや、たとえ遅れたしても、僕なら抜き返せるさ」
「そういう遅れじゃないって、分かってて言ってるよねぇ。それにコムラサキでは、命が危なかったんだよ~。翔太も少しは謙虚になろうよ~」
「まあまあ。それより、新開家がジンと一緒ならば大丈夫だって情報を、どう判断したら良いかなぁ」
「本当に大丈夫なの~」
「雇い主が言ってるのだぞ・・・。うむ、間違ってるかもしれんが・・・」
「何者なのかなー。僕達からすると、正体不明のバケモノにアキトを任せていることになるね」
 お宝屋の3人にとって、ジンの存在は不安要素だ。
 そして千沙にとって、アキトと一緒にいれる風姫の存在は、不安一杯な要素である。
「新開家は教えてくれないの~?」
「もちろん訊いたが、新開家からの情報リークはできないと言われたのだ。しかし、だ。ならば俺たちで確認すれば良いだけだぞ」
「もちろん僕は、ゴウ兄の意見に賛成さ」
「あたしも賛成するよ~」
「ふっはっはっははーーー。これで活動方針は決まった。お宝屋は、新造”宝船”と新装備の習熟訓練をしながら、ヒメジャノメ星系へとトレジャーハンティングに赴くぞぉおおおおーーー!」
 お宝屋は3人一致で、ヒメジャノメ星系へに赴くことを決定したのだ。
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