27 聖剣の力

文字数 2,658文字

 カロンが、
 「はははは。剣を失って終わりかと思ったが、まだまだ楽しめそうだな」
とうれしそうに魔剣(まけん)(かま)えた。

 「行くぞ。()をすすれ! ダーインスレイブ!」
 コマンドワードを唱えると、魔剣(まけん)が赤く脈動(みゃくどう)して形状(けいじょう)がおどろおどろしく変化(へんか)する。

 (たい)するキョウコは自然体(しぜんたい)で、
 「行くわよ。フラガラッハ!」
聖剣(せいけん)(かま)えた。

 二人が同時(どうじ)に走り出し、中央(ちゅうおう)激突(げきとつ)する。カロンの袈裟斬(けさぎ)りの一撃(いちげき)を、キョウコは()()げで(きり)(かえ)す。
 ダーインスレイブとフラガラッハが()ち合った瞬間(しゅんかん)、光の爆発(ばくはつ)(しょう)じた。

 「グワアアァァァァァ」
(うら)みの(こえ)を上げながら、()れたダーインスレイブの刀身(とうしん)がくるくると回転(かいてん)しながら()んでいった。

 カロンが呆然(ぼうぜん)と手に(のこ)った魔剣(まけん)一部(いちぶ)を見る。
 「ば、バカな……」
 次の瞬間(しゅんかん)、カロンの体に(なな)めの(せん)(はし)り、そこから()()()した。
 カロンはそのまま(くず)()ちる。

 キョウコも(おどろ)きの表情(ひょうじょう)聖剣(せいけん)を見つめた。「こ、これが聖剣(せいけん)フラガラッハ……」

 カロンが(たお)されたのを見たアスタロトとテリトリは、すぐに戦闘態勢(せんとうたいせい)に入った。
 アスタロトのムチがキョウコに(おそ)いかかる。
 しかし、その見えないほど(はや)一撃(いちげき)をフラガラッハが自動的(じどうてき)(うご)いて(ふせ)ぐ。
 テリトリの瘴気(しょうき)(だん)もフラガラッハが容易(たやす)()()てた。

 聖剣(せいけん)がキョウコに、
 「勇者(ゆうしゃ)よ。(われ)魔力(まりょく)を」
 「わかったわ!」
 キョウコが魔力(まりょく)聖剣(せいけん)に注ぐと、聖剣(せいけん)()びる光が(つよ)くなっていく。

 その光が臨界点(りんかいてん)()えたとき、フラガラッハから神聖(しんせい)光弾(こうだん)(はな)たれ、アスタロトとテリトリに(おそ)いかかった。

 アスタロトはひょいっと空に()んで()けたが、テリトリは瘴気(しょうき)(かべ)でふせごうとする。
 しかし、聖剣(せいけん)光弾(こうだん)はその瘴気(しょうき)(かべ)容易(たやす)くけちらし、テリトリを(つつ)()んだ。
 「お、おのれぇぇ」
怨嗟(えんさ)(こえ)を上げながら、テリトリが消滅(しょうめつ)していく。

 それを見たアスタロトの(ひたい)から()(あせ)(なが)れた。
 「ちょ、なによ? あれは」

――――
 一方、勇者(ゆうしゃ)(がわ)聖剣(せいけん)の力に希望(きぼう)()(もど)していた。
 みんな立ち上がって体制(たいせい)(ととの)え、キョウコの(うし)ろで隊列(たいれつ)()む。

 アルス、リリア、マーロン。そして、エドワードたちがアスタロトを見上(みあ)げている。

 その時、漆黒(しっこく)夜空(よぞら)を何かがクルクルと回転(かいてん)しながらアスタロトの背中(せなか)から(おそ)いかかった。
 「な、きゃあぁぁぁぁ」

 地面(じめん)()ちてきたアスタロトの(つばさ)には、ゴンドーの大きな(おの)(ささ)さっていて、もはや()べそうにない。

 アスタロトの(かお)(いた)みと(いか)りでみにくくゆがむ。
 「(わたし)(つばさ)をよくも(きず)つけてくれたなぁ!」

――――
 (わたし)はヒロユキとコハルとともに、(たたか)いの場所(ばしょ)へと(はし)っていた。

 もう少しで到着(とうちゃく)というときに、突然(とつぜん)聖剣(せいけん)がひとりでに()んでいく。ヒロユキとコハルは一瞬(いっしゅん)おどろいたものの、とにかく(はし)りつづけた。

 戦場(せんじょう)では、キョウコたちが四天王(してんのう)()()められているようだった。そして、そこにはなつかしいエドワードたちの姿(すがた)もある。

 ヒロユキとコハルは、うれしそうに(いそ)いでエドワードたちのところへ走り()っていく。
 (わたし)戦況(せんきょう)をみながらついていく。
 ……おお、すごいじゃん! 聖剣(せいけん)一撃(いちげき)魔剣(まけん)破壊(はかい)し、四天王(してんのう)も切り捨てたわ!

 コハルが回復(かいふく)魔法(まほう)でエドワードたちの(きず)をいやすと、リリーがぎゅっと華奢(きゃしゃ)なコハルを()きしめた。

 エドワードも立ち上がり、ヒロユキの(あたま)をぐりぐりと()でる。
 「よくぞ。無事(ぶじ)だったな。二人とも……。(むか)えに来たぞ」
 それを()いて、強がっていたヒロユキが、(かお)をくしゃくしゃにして、うんっとうなづいた。

 フランクがその(かた)をぽんっと(たた)いて、
 「今はそれどころじゃない。()わってから、色々(いろいろ)()かせてもらうよ」
()って、(たて)(かま)えた。

 まあ、今、四天王(してんのう)はそれどころじゃなさそうだけどね。

 ……うん? なにかものすごく(つよ)いものが、ここに(ちか)づいているわね。

 (きた)方角(ほうがく)から、(すさ)まじいスピードで何かが接近(せっきん)している。なんだろう?

――――
 キョウコがアスタロトに()りかかろうとしたとき、二人の間に何かが()ちてきた。

 ドバアアァァン
(すさ)まじい地響(じひび)きを立てて、何かが()り立つ。

 その姿(すがた)を見たアスタロトが、
 「ま、魔王(まおう)(さま)!」
とうれしそうに名前(なまえ)()んだ。

 ……へぇ。あれが魔王(まおう)
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登場人物紹介

神獣である九尾の狐。仲間を大切にする心優しい性格で、今はとある事故に巻き込まれてコハルという少女の召喚獣となっている。

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