第5話(7)

エピソード文字数 2,880文字

「「「「《『……?』》」」」」

 ?? 神蔵さん、言動が支離滅裂だ。あの人どうしちゃったの?

《か、神蔵選手っ、なにしてるんDA!? その人は味方で》
「魅里ちゃんを傷付ける者は、許さない!!

 彼が腕を振ると白金色をした半月型の物体が発生し、それはベロリンガルに直撃。審判さんも遥か彼方にビューンした。

 ビー! ビー! ビー! ビー!
《ルール違反、ルール違反! 強制退去させます!》
「魅里ちゃんを傷付ける者は、許さない!!

 神蔵さんは四方に現れた魔法陣を、殴って破壊する。恐らくはアレ、退去させる魔法を壊して無効化しました。

《すっ、スタッフ全員に告ぐ! 大至急突入し、神蔵選手を取り押さえ――》
「魅里ちゃんを傷付ける者は、許さない!!

 二つある出入口に半月型の物体が当たり、ガラガラガラと扉が崩壊する。
 ぉぉぉ……っ。今度は、スタッフさんが入ってくる場所がなくなったぞ。

《まっ、魔王使いチームの皆様っ、実行委員長です! どうやら、神蔵選手は暴走しているようですっ!》

 そうですね。あの人、自分の武器を叩き折ってますもん。
 あれは多分、怒り過ぎちゃって我を失ってますねー……。

《その空間は特殊な処理を施しており、扉以外の侵入は不可能となっておりますっ。ですから皆様っ、ギブアップを宣言して離脱してください!》
「あー、心配いらねぇよ。あんなの、一発で大人しくさせられるからな」

 きっと中継は行われているので、引き続き第2人格モードで応える。
 あっちは精々、戦士10000人分の化け物だ。こっちの、ゆうに戦士1000000000000人分を超える化け物には叶わない。

(魔王様勇者様魔法使い様、ヨロ。白金人間さんの意識を刈り取って)
(にゅむっ。あたしが――)
(待ってレミアさん)

 不意に、シズナがストップをかけた。
 ??? どうしたんだにゅむ?

(先生? どうしたが?)
(…………従兄くん。貴方は最初に、神蔵王器さんを獲物としたわよね?)
(はい。しましたよ)

 このお口で、言いましたからね。よーく覚えてます。

(血に飢えていた男が、変身後は部下に退治を任せる。これは、『あのリーダーって、ああいうタイプの敵には弱いんじゃないのか?』という憶測を呼びかねないわ)
(にゅむむっ。そーだねっ、そーだよ)

 再三戦いたいと発していた男が、そうしない。そのように思われるだろうな。

(ここで私達が無力化したら、優勝しても狙われないとは言い切れない。だから従兄くん、それは貴方がしないといけないのよ)
(う、うん、そりゃそうなんだけどさ……。あれの相手はできんでしょ)

 俺には、これといった攻めの手がないんだ。倒せませんよ。

(従兄くん、忘れたの? その身体には、究極奥義が宿っているのよ?)
(シズナさん、それは百も承知。ユーが仰るように超強力なのがありますがね、これだけじゃ勝てないんですよ)

 防壁で攻撃を防ぎながら近づき、壁は厚みが1センチないからタッチをしてスタミナを魔力に変換→KO。ってなのが浮かんだが、相手はバカじゃない。敵が来たら避けるぞ。

(ふふ、従兄くん。そこで、『虹の増速』の出番よ)
(((???)))

 俺、レミア、フュルは、一様にクエスチョンマークを点灯させる。
 んんんん? ソレをどう使うんだ?

(私の究極奥義で『走る』を十倍にして、目にも止まらぬ速さで眼前に移動。唖然となっている間に触り、体力を魔力に変換してノックアウトすればいいのよ)
(にゅむっ! シズナちゃん大名案(だいめーあん)だよーっ)
(やるぜよ! それなら師匠でも可能やにゃぁ)
(あそっか、そうだよね。これは俺でもできるよ)

 10倍速で走って、触れる。簡単なお仕事だ。

(ナイスっ。やるじゃんシズナ!)
(従兄くん、褒めてくれるのはも少し後よ。これで終わりではないの)

 彼女は俺の唇に人差し指を当て、小悪魔っぽく口元を緩める。
 ほぅほぅ。まだ何かあるのか。

(シズナ先生。何を考えちゅうが?)
(私達が神蔵王器さんに突撃し、攻撃を受けた瞬間コッソリ棄権して退場する。そうした後に従兄くんが倒せば、魔王達を倒した者を倒した事になり……)
(最強に、認定される。三人は一度も狙われていないんだから、その三人の上を行く俺が狙われるはずがないよね)

 そのひと手間を加えれば、意想外の襲撃もなくなる。おまけに英雄を倒した者がリーダーの、白金族への侵攻もなくなる。
 レミア達はどうせノーダメージなのだから、是非やるべきだ。

(超ナイスだよシズナっ。これでようやく日常が戻ってきて、魔王使いを卒業できますわっ)
(……にゅむ……そっかー……。この決定戦(けってーせん)が終わっちゃったら、ゆーせー君といっつも一緒にはいられなくなるんだね……)

 ホッとしていると、レミアがシュンとなった。
 この子は、俺を好いてくれてるもんなぁ。喜びたいけど心の底から喜べない、そんな感じになっている。

(レミア先生、師匠はいつでも来ていいって言ってくれたろ? 元気出しや)
(従兄くんには、従兄くんの世界の生活があるのよ。結婚でも、そうっ。結婚でもしない限り、365日傍には居られないわ)

 気にしない。『結婚』をやけに強調していたのは、気にしない。

(まーレミア、そういうのは後にしようよ。白金人間さん、こっちをロックオンしてるからさ……)

 ドラマやアニメと違って、敵は上手い具合に会話を待ってくれない。奴さん、やる気満々です。

(にゅむっ、そーゆーのは後にするよー。ゆーせー君ごめんなさいで、フュルちゃんシズナちゃんいこっ)
(おうぜよ! 師匠、ビシッと決めてやっ)
(私達は、モニターで見ているからね。カッコいいところを見せてください)

 レミアは、首をフルフル振ってからニパッ。フュルは、ニカッ。シズナは上品に笑って、神蔵さんに走る。

「にゅむむんっ、ゆーせー君が出るまでもないよーっ。あっ、あたしたちが相手だあっ」
「師匠と戦うなんて、一億年早いぜよ! ワシらあがお相手やきい!」
「覚悟しなさい、神蔵王器さんっ。優勝者の本気を見せます!」
「魅里ちゃんを傷付ける者は、許さない!!

 ボコボコボコ!
「1発で体力を根こそぎ奪われたよー!」
「最強の勇者をたった一撃で倒すなんて、前代未聞クラスの化け物先生ぜよ~!」
「いとこ、くん……。私の為に、勝って、ね…………がくっ」

 おのおの不自然な悲鳴(?)をあげて、戦場を去った。
 うんっ、この試合が終わったら全員デコピンの刑に処してやる。中でも最後のバカは、デコピン千回だ。

(……倒れる時に、『がくっ』なんて言うヤツはいないだろ……。アイツ、怒られたくてワザとやりがたったな――というのは、後にするか)

 勝敗は決まっているとはいえ、これからやるのは『本物』の勝負だ。真剣にやろう。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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