1話 転移召還された異世界の交通事情
文字数 2,180文字
「ここはどこだ……てか誰だ」
さっきまで怒号のキツい現場責任者が指揮をする工事現場で誘導棒を振っていた冴木健太は明らかに困惑している。
いきなり光に包まれてから、目が開けると見知らぬ場所にいるのだから。
冴木が座り込んでいるのは大理石で出来た冷たい床。
視線をしたから上に戻すと、冴木の周りを暑苦しくも思える貴族のローブに身を包んだ7人の男達が囲んでいる。
その7人の男達は冴木のことを見てザワザワとなにやら呟いている。
この7人は王国の魔法神官。王様、大臣、そしてこの魔法神官と階級の高い身分の男達である。
「おお……ついに成功したぞ」
「あの魔導書に書かれていたことは事実だったようじゃな」
「カエルの死体44匹、ピクシーの涙一欠片、グレムリンの唾液10g、それに召喚の魔導書1冊、それに聖水10L、魔女の髪の毛5本、蛇の生き血4滴……」
「まさか……本当に成功するとは、じゃが王様に褒美を与えられるだろうなぁ」
「おい。お主意識はあるか?」
冴木を囲む老人の1人が声をかける。
「あああ……なんとか」
「うぉぉ!! 良かった良かった。早速、王の元へ連れていこう」
冴木は薄らう意識のまま、手を引かれるとそのままこの大理石の部屋を出て、ここよりさらに豪華な部屋へ。
そこはRPGでよく目にする王様の部屋。目の前には王様が座る玉座が。
「何じゃ何事じゃ」
「王様。召喚に成功致しました」
「それは見事じゃ。では早速説明せねばな。ワシの部屋へ連れて参れ」
王様はそう言うと、先に自室へ。冴木は老人2人に介抱されながら王様が入った部屋へ連れていかれる。
冴木はようやく、深い椅子に降ろされ開放された。次第にだが意識もはっきりとしていく。
「早速だが、名前はなんという?」
「えーと……冴木健太」
「冴木だな。冴木に頼みたいことがあるんじゃ。まずここはナンベロニカ連合国じゃ。この国の王様を務めているのがワシ、カイゼルじゃ」
「はい」
「まず、簡単に言うと、冴木は我が国の魔法神官の召喚術で異世界からこの世界へ連れてこられたのじゃ」
「うん……うん? は?」
冴木は明らかに動揺する。そして困惑。そして冴木が好んで良く読む異世界転移モノのライトノベルを思い出す。
「何故冴木をこの世界へ連れてきたのかというとじゃな、、まあこれを1度見てくれ」
カイゼルはそう言うと冴木を窓の方へと呼び寄せる。
冴木はカイゼルに言われるがまま窓の方へ。そこでカイゼルに望遠鏡を手渡された。
「なんだこりゃ……」
望遠鏡越しに窓から見た景色に冴木は驚愕した。
「そうじゃろ……」
「はい……これは凄いです……王様なのにこんな覗きスポットを知っているとは」
「いや……は?」
「え? だって」
冴木は窓の先を指差す。カイゼルは冴木の指さした方向に視線を集中させた。
そこにあったのは銭湯の女風呂。白い湯気が立ちこむ女風呂には豊満な体を隠すことなく歩き回る女達がたくさんいた。
「いやいや、これではなく、いやこれはこれでええが。あれじゃ」
カイゼルは目線を移し別の方向を指さした。
「これは……ヤバすぎる……」
望遠鏡を覗いた冴木の目に写ったのは元の世界ならばありえない光景だった。
城下町の向こうに広がる片側三車線道路の景色。日本のように走る方向はしっかりと守られているが、スピードは有り得ないほど早い。時速10kmはゆうに超えている。それに加えほとんどの車がオープンカーで運転している輩も明らかに異常。
ゴブリンと思われる男は全身にピアスをつけ、一番端の車線にはケンタウロスや馬に乗った騎士などが走っている。残りの二車線ではサーキットで行われるレースのように追い越しが多発していた。
「この国も整備がされてからもう50年ほど経つのじゃ……そのため色々ガタがきてな、道路も補修工事が必要だったり建物の修理なども必要なのじゃよ」
「なるほど、それで工事をしたいからその警備を俺にやってくれと?」
「感がいいの。まさにその通りじゃ」
カイゼルは嬉しそうにそう言った。
しかし冴木の表情はカイゼルとは真逆。こんな所で誘導棒なんて振っていたらすぐ死ぬ、そう思っていた。
「ちょっと……無理かな」
「そう言うと思ってな、褒美はふんだんに用意出来とる。まず冴木には今年から新設する警備省の大臣に任命する」
「え?」
偉い肩書きに弱い社会的弱者の冴木は思わずそう声を出す。
「それにじゃ一ヶ月の給料。元の世界ではどうだったか知らんが、ここではそっちの世界に換算して100万円の給料を渡す」
「おお!!」
金にがめつい冴木は思わず声を上げた。既に意思はグラグラと揺れている。
「そして住む場所じゃが、この城の一室を自由に使ってよし。さらにお主には異世界召喚した特権として特別な能力を持っている」
「その能力って?」
「#完全治癒__・・・・__#と#建造__・・__#じゃ。完全治癒は簡単にいうと冴木がダメージを受けた瞬間から治癒が発動し致命傷に至ることがないというものじゃ」
「てことは、死ぬ事は無い!! ……カイゼル王、それ引き受けMAX!!」
さっきまで怒号のキツい現場責任者が指揮をする工事現場で誘導棒を振っていた冴木健太は明らかに困惑している。
いきなり光に包まれてから、目が開けると見知らぬ場所にいるのだから。
冴木が座り込んでいるのは大理石で出来た冷たい床。
視線をしたから上に戻すと、冴木の周りを暑苦しくも思える貴族のローブに身を包んだ7人の男達が囲んでいる。
その7人の男達は冴木のことを見てザワザワとなにやら呟いている。
この7人は王国の魔法神官。王様、大臣、そしてこの魔法神官と階級の高い身分の男達である。
「おお……ついに成功したぞ」
「あの魔導書に書かれていたことは事実だったようじゃな」
「カエルの死体44匹、ピクシーの涙一欠片、グレムリンの唾液10g、それに召喚の魔導書1冊、それに聖水10L、魔女の髪の毛5本、蛇の生き血4滴……」
「まさか……本当に成功するとは、じゃが王様に褒美を与えられるだろうなぁ」
「おい。お主意識はあるか?」
冴木を囲む老人の1人が声をかける。
「あああ……なんとか」
「うぉぉ!! 良かった良かった。早速、王の元へ連れていこう」
冴木は薄らう意識のまま、手を引かれるとそのままこの大理石の部屋を出て、ここよりさらに豪華な部屋へ。
そこはRPGでよく目にする王様の部屋。目の前には王様が座る玉座が。
「何じゃ何事じゃ」
「王様。召喚に成功致しました」
「それは見事じゃ。では早速説明せねばな。ワシの部屋へ連れて参れ」
王様はそう言うと、先に自室へ。冴木は老人2人に介抱されながら王様が入った部屋へ連れていかれる。
冴木はようやく、深い椅子に降ろされ開放された。次第にだが意識もはっきりとしていく。
「早速だが、名前はなんという?」
「えーと……冴木健太」
「冴木だな。冴木に頼みたいことがあるんじゃ。まずここはナンベロニカ連合国じゃ。この国の王様を務めているのがワシ、カイゼルじゃ」
「はい」
「まず、簡単に言うと、冴木は我が国の魔法神官の召喚術で異世界からこの世界へ連れてこられたのじゃ」
「うん……うん? は?」
冴木は明らかに動揺する。そして困惑。そして冴木が好んで良く読む異世界転移モノのライトノベルを思い出す。
「何故冴木をこの世界へ連れてきたのかというとじゃな、、まあこれを1度見てくれ」
カイゼルはそう言うと冴木を窓の方へと呼び寄せる。
冴木はカイゼルに言われるがまま窓の方へ。そこでカイゼルに望遠鏡を手渡された。
「なんだこりゃ……」
望遠鏡越しに窓から見た景色に冴木は驚愕した。
「そうじゃろ……」
「はい……これは凄いです……王様なのにこんな覗きスポットを知っているとは」
「いや……は?」
「え? だって」
冴木は窓の先を指差す。カイゼルは冴木の指さした方向に視線を集中させた。
そこにあったのは銭湯の女風呂。白い湯気が立ちこむ女風呂には豊満な体を隠すことなく歩き回る女達がたくさんいた。
「いやいや、これではなく、いやこれはこれでええが。あれじゃ」
カイゼルは目線を移し別の方向を指さした。
「これは……ヤバすぎる……」
望遠鏡を覗いた冴木の目に写ったのは元の世界ならばありえない光景だった。
城下町の向こうに広がる片側三車線道路の景色。日本のように走る方向はしっかりと守られているが、スピードは有り得ないほど早い。時速10kmはゆうに超えている。それに加えほとんどの車がオープンカーで運転している輩も明らかに異常。
ゴブリンと思われる男は全身にピアスをつけ、一番端の車線にはケンタウロスや馬に乗った騎士などが走っている。残りの二車線ではサーキットで行われるレースのように追い越しが多発していた。
「この国も整備がされてからもう50年ほど経つのじゃ……そのため色々ガタがきてな、道路も補修工事が必要だったり建物の修理なども必要なのじゃよ」
「なるほど、それで工事をしたいからその警備を俺にやってくれと?」
「感がいいの。まさにその通りじゃ」
カイゼルは嬉しそうにそう言った。
しかし冴木の表情はカイゼルとは真逆。こんな所で誘導棒なんて振っていたらすぐ死ぬ、そう思っていた。
「ちょっと……無理かな」
「そう言うと思ってな、褒美はふんだんに用意出来とる。まず冴木には今年から新設する警備省の大臣に任命する」
「え?」
偉い肩書きに弱い社会的弱者の冴木は思わずそう声を出す。
「それにじゃ一ヶ月の給料。元の世界ではどうだったか知らんが、ここではそっちの世界に換算して100万円の給料を渡す」
「おお!!」
金にがめつい冴木は思わず声を上げた。既に意思はグラグラと揺れている。
「そして住む場所じゃが、この城の一室を自由に使ってよし。さらにお主には異世界召喚した特権として特別な能力を持っている」
「その能力って?」
「#完全治癒__・・・・__#と#建造__・・__#じゃ。完全治癒は簡単にいうと冴木がダメージを受けた瞬間から治癒が発動し致命傷に至ることがないというものじゃ」
「てことは、死ぬ事は無い!! ……カイゼル王、それ引き受けMAX!!」