第1話

文字数 4,677文字

オレは5歳で施設に入った。
施設にはいろんな遊具があり、オレは夢中になって遊んでいた。
遊び疲れると施設の部屋の中で寝ていた。
起きるとオレを連れてきた親父はいなくなっていた。
オレは泣いた。大声で泣いた。施設の先生はただ見つめていた。(ここは脚色している本当は今思い出すと抱きしめてあやしてくれたような気がする)
夜になるとみんなで食堂の中で食事をした。
オレはその時初めて兄貴と会った。兄貴は笑っていた。
兄貴はどこか遠くにいったのかと思っていた。
兄貴はいたんだ。兄貴はそこにいた。みんなと仲良く喋っていた。
最初の記憶は母親と兄貴が前を歩いていた。
オレはただそれを眺めていた。
兄貴はオレを見たが母親についていった。

オレはあまり施設に入っている時の記憶が段々無くなってきている。
小学校のときのオレは学校では悪い子。施設では良い子。
そういう風に自分を使い分けていた。でも中学校に入ってくるとそのバランスは崩れていった。
たぶん面倒くさくなったのだろう。
でも中学生になっても怖い施設の先生はいた。松崎先生と言ってオレが小1くらいに入ってきたときの先生だからオレら兄弟はこの先生に愛情を受けて育った。その分怖さもあった。
オレは中2の頃吹奏楽部に入部していた。
その吹奏楽部は夏休みに入るとほぼ毎日練習でオレは全然上達もしないしまー落ちこぼれだったからもう行くのがいやになっていた。
朝、学生服を着て荷物には私服を入れていく。途中で着替えて遊びに行ってまた学生服を着て施設に帰った。
帰ると松崎先生は『おかえり今日どうだった?』と聞かれオレは適当に嘘を言った。
瞬間に蹴りが飛んできた。全部わかっていた。吹奏楽部の先生が電話をかけていたらしい。
オレは蹴られまくられた。でも松崎先生は蹴りながらも泣いていた。蹴るほうもつらかったのだと思う。暴力は愛情があると自分も痛いのだ。でも愛情がない暴力は何もないただ虚しいだけだ。

オレは中2で施設を出た。
親父が言うにはもう施設には預けられないというほど荒れていたらしいがあまり覚えていない。
オレは落ちこぼれの人生を送ってきた。仕事をしても全然できないし彼女もいなかった。
中2で転校してからは自由だった。
毎日家にたまってバンドをやったりマンガ本を読んだり酒を飲んで暴れたり一番自由な時代だった。でもオレはそのときひとつトラウマになったことがある。
転校して何日か経ったある日
後ろの席にいた女の子がオレに告白してきた。
オレは自意識過剰だからずっと見られているんじゃないかと思うようになっておなかを悪くした。それから毎日席に座ると屁が止まらなくなり友達から陰口で「あいつくさい」とか言われていたと思う。たぶん学校中に広まったと思う。今、俺は映画の仕事をしているけど映画館に行くのがいやになる。映画も好きだし映画館も好きだけどその時のトラウマがどうしても出てきてしまう。そんな時は少し憂鬱になる。でも友達はいたし毎日が面白かった。

中学校を卒業してからは高校に行く気がしなかったから地元のガソリンスタンドで3年間働いた。そのときの記憶も俺はあまり覚えていない。オレは段々昔のことを忘れていく。そのあとハツリ屋をやっていたけどほとんど覚えていない。オレにとっての人生はなんだったのか時々わからないときがある。ハツリをやっているときは何も考えなかった。でも苛立ちはあった。面白かった事なんてなかった。何かが失っていく感じだった。毎日毎日コンクリートを壊していた。そんな自分が嫌いだった。

こんなオレでも今は希望を持っているそれは映画を作ることだ。
オレはこれからどう生きていくのか楽しみだけどそんなこともどんどん忘れていってしまうと思うと淋しい気持ちになる。

オレはどう生きる?
時間は早くすぐ通り抜ける
オレはどう生きる?
答えはわからない
愛する人は近くにいるかな?
どうだろう?
だけど生きていくしかない
そうだ生きていくしかない

ハツリをやっている時を少し思い出した。
オレは自信がなかった。昔からだがたぶん何をやっても自信がなかった。
ハツリをやっているときも全然自信がなかった。
後輩とかできる奴はどんどんオレを抜いていく。
オレはできないことに苛立ちを覚えるがその反面どうでもいいやって気持ちもあった。
オレはゲームや勝負事にめっぽう弱い。
気持ちが負けてしまうのだ。どうでもいいや負けてもいいやって言っても悔しい気持ちもある。だからタチが悪い。
でも仕事ができないと言いたいこともいえない。
だからもどかしい。あーもどかしい。
実はいまでもオレは自信のあるものがない。
いつかこれだけは自信があるってものがあるといいな。

誰かが見るわけじゃないのに書けないことがある。
いつになったら踏ん切りがつくのか?
いやになってくる。
この感情をオレはいつ出せる?出せない?
わからない。
いつの間にか過去になったんだ。
あれから時間が動いているのか?いないのか?わからない。
でも歩いている。
前を向いて歩いている。
振り返る余裕はないのにたまに出てくる。
なんてアホくさ
結局かっこつけたいだけ。
言葉は嘘ばっかり
本当はどこで出る?
何を書いているんだ?



28歳になりました。いま読み返すと恥ずかしいやらなんやら
でも素直に気持ちをぶつけていると思う。これを書き始めたのが24歳くらいだと思う。
まだ好きな人に振られたことが書けないで終わっているね。今でもうまくは書けないけどあの時に比べたら少しは書けるかもしれない
22歳で映画事務所に入って俺は好きな人ができました。
丸山さんと言う人で俺より2つくらい上だったかな?始めてあった時はショートピースという映画館を作っているときだった。夜、彼女が受付担当だったので受付の飾り付けの事でいろいろとやっているときに挨拶した。その時の第一印象は「この人絶対友達にならないな」と思った。
その後映画館が完成して普通に同僚として過ごしていた。
少しずつだけど彼女に魅了されていった。まず頭と感覚が良いことに気がついた。仕事もテキパキとやっていたしちゃんと言う所は言う。最初は好きというより尊敬していたと思う。
ある時、なぜか俺は家族の話をした。
「おれって親のこと尊敬できないんだよね 丸山さんはどう?」
「むーーーーーー尊敬しているよ!だってあの人たちがいなかったらここにいないもん」
俺はびっくりした。どうしてそんなことが言えるんだろう?俺は親を尊敬していなかったからそれは青天の霹靂だった。その日彼女の家族の事が気になり帰りの電車でぎりぎりまで一緒にいて帰れないから泊めてという作戦に出たが横浜駅あたりで強引に断られて結局一人戻っていった。まだその時は好きではなかった。単純にそんなことを言う子の親を見てみたかった。それからまた月日が流れある時仕事の事でボロクソ言われた。まー完全に俺が悪かったと思うんだがなんのことで言われたのかは覚えてないがそれから好きになったんだと思う。
でも俺は恥ずかしがり屋で告白などしたことがなかったので毎日会話を作るために「タバコくれ」ぐらいしか言えなかった。彼女には仲良くしていたもう一人の同僚の原田さんと言う人がいた。彼らはいつも話が意気投合していて俺は入る隙間がなかったがどうにかして会話に入っていった。しかし時が経つにつれだんだんいらいらしてきた。原田さんは嫌いな人ではないがどんどんなんか憎くなっていった。ある日俺が勝手に昼間休んで免許の更新に行って夜戻ってくると彼女にすげー文句を言われ逆切れをしてしまった。その翌日彼女は会社を辞めると言った。俺は悲しくなった。あれだけ頑張っていたのにという気持ちもあったけどそれより自分の前からいなくなるのを考えるほど辛かった。彼女が辞めるまで苦しくてしかたなかった。でも勇気を振り絞り告白をした。
「今日でやめちゃいますねでもやめても丸山さんのことは好きですから」
かっこ悪い告白だ。
「私は好きな人がいるので」
振られてしまった。まー当たり前といえば当たり前だ。でもなぜかわからないが自信だけはあった絶対押せば俺のほうに振り向いてくれると思っていた。
仕事で海外に行く機会があってまだ諦めきれないことを先輩の映画監督に相談したら
「絶対電話した方がいいよ」
と言われ電話をした。
でもそれがあとから考えるとよくなかったのだ。
帰国後仕事場のある先輩と話をしていたら彼女の話が出てきた。
「丸山さんあの女さーまた戻ってくるって話になっていたんだけどさーいきなりやっぱやめますってよどう思うよ?」
俺は最初の言葉で「おっ戻ってくるんだ」と思って喜んだが後半「ああそうか俺が電話したからだ」と落ち込んだ。それからだ。それからずっと時間が止まった感覚だった。
後日談だがある同僚が辞める前に一緒に飲んだそうだ。彼女はその時泣いていたようだ。でもそれは誰を想って泣いていたんだろう?いまだにわからない。
そのあといろいろあった。会社が潰れたり自分の始めて書いた物語が映画になったり自分で映画を撮って映画祭に入選したりした。今だから書けたようやく書けた。
脚本を書き始めた時点で何度も何度も書こうとしたがいつも手が止まっていた。
名前を出すだけで苦しくなったりした。あれから約6年間でやっと書けた。
ある知り合いの女の子(ちょっと好きだった)に振られたことを話したとき
「でもこれ3年も前の話しなんだ」
と言った時びっくりされた。「3年も想っているんですか?すごいですね!」
俺は本当に時間の感覚がなかったんだと思う。
話はここで終わりではない実はついこの間彼女に会った。
彼女は映画監督になっていてある映画祭に出品していた。
丁度近くだったので映画を観にいったら舞台挨拶があるみたいで彼女を6年ぶりに見た。
まるで変わってなかった。今でもたぶん彼女の事を好きなんだと思った。
舞台挨拶が終わりロビーにいるとき声をかけた。
「お久しぶりです」
「……小川さん」
「映画面白かったです(うそだけど)」
すると俳優さんたちが入ってきて話ができなかった。
でも彼女の拒絶反応はなんとなくわかった。さっきたぶん好きなんだと思うっていうのは嘘かも知れない。その時は「今さらもうなんとも思ってねーよこっちも監督やってるんだから映画の話がしてーんだよ」と思った。
結局もう一度「面白ったですそれじゃ」と言って別れた。
少し哀しくなった。もっと普通に話をしたかった。
夜、自転車で帰り途中喫茶店でビールを2杯飲んだ。
これで終わりだ。もう会うこともない。
書いていたらもう朝になってしまったこの6年の間好きになった人はいるけどここまでの人はいない
いまだに彼女はいない。いやもう半分諦めている。
でも映画だけは続けている。前に書いたとき何も自信を持てるものがないと言ったがもう持ってるよ。
ぼろぼろになりながらだけど一歩一歩前へ進んでいるよ。







38歳になりました。
夢は挫け面白いことはなくなりました。
これを読んでいる途中涙が止まりませんでした。
一度だけ初めて女を愛しました。でも自分から逃げてしまいました。
オレの人生に色を付けてくれてありがとう。
でもオレの生き方は変わらなかったです。
これがオレの証しです。

もう何もないです。さようなら。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み