Film№4 姉の失踪とエルダー・サンタ
文字数 1,138文字
彼の姉の名は日瑠星(ひるせ) 美來(みくる)。
県外の名門進学校の高校3年生。
成績優秀、運動神経抜群の絶世の美女(弟いはく)。
まさに「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」なのだそう。(いや、過よ、お前はシスコンなのか…)
高校に入ってからは毎日、福祉委員の仕事で地元の高齢者施設に通っていて、家ではおじさま方のために折り紙や手毬などを作って配っていたらしい。
そんな彼女が五日前、ある手紙を残して姿を消した。
その手紙には、
「過、私は今から少し旅に行ってきます。これは私が決めたことです。だからね、何があっても決して自分を責めてはダメよ。私を探しに出歩くのも禁止。でもね、5日経っても戻ってこなかったらその時は、ここの住所に向かいなさい。少し変な相談も聞いてくれるから、きっとあなたに力を貸してくれるわ。美來(みくる)より。」
と、手紙の裏にはここ(刻ノ神探偵事務所)の住所が記載されていた。(変な相談って…こいつ、ここに来たことがあるのか?)
「あの、ここにはこう書いてあるんですけど、僕の姉にはお会いしたことがあるのですか?」
と、過は俺に話をもちかける。俺も気になっていたところだし、適当に答えて、へスティアさんへパスを回す。
「いや、少なくとも俺はないが。へスティアさんは?」
「んー。私は依頼人の名前なんていちいち覚えないからなぁ。顔を見ればわかると思うけど…」
「うちはねぇ…」
と、フォルティーナが反応しかけたところで過は話を切る。
「あ、いえ!あなたたちには無いみたいなので大丈夫です。」
「えー!なんでよ〜、私の話も聞い…ぶふぉっ!」
フォルティーナの口を瞬時に手で塞いだ俺は話を続ける。
「そうか、君には分かるのか。面白い能力だな。」
「はい!でも、一年以上先はぼやけてよく見えないんですけど…ね。」
と、話している間、俺は自身の手をフォルティーナの口に置いていることを思い出してぱっと手を離す。
「ぶぱぁっ!ちょっと何すんのよ、いきなりー。」
「あー、すまん。忘れてた。」
「うそだ〜。」
そんなこんなで事情は全部聞き終えたので、俺は壁にかけてあったコートをひらりと担ぎ、こう言った。
「まぁ、百聞は一見にしかずだから、こんな長話をするより実際に会う方が手っ取り早いだろ。」
「えっ。姉に会うんですか?」
「そうだ。6日前の朝で良いだろう、その時彼女はどこにいたか覚えているか?」
「え、えーと…朝は学校に出る前だから家にいたと思います。」
「そっか。じゃあ、行ってくる。」
と、俺はフォルティーナを呼んで外へ出て行った。
それをへスティアさんは笑顔で送り、過はずっと首をかしげていた。