第12話 ママチャリ300kmの旅 その6(山岳地帯・中編)
文字数 812文字
山岳地帯を進んでいると、いくつか思うことがあった。
山の途中には人の住む集落がある。
そこには高層ビルやチェーン店が立ち並んでいるわけでもなく、多くは民家である。古い民家のほうが多く見受けられた。お年寄りが多いのだろう。素直に言えば、その場所は都会と比べるとあまりに不便そうだった。きっとそこに住む若者もいずれ都会へ出たがるだろう。そうなると人が出ていけば税金もそこには落ちない。税金がなければ過疎化の対策も満足にできず、また人が外へ出ていってしまう。
なぜこんな話をするのか。それはある歩道を見たからだ。
その歩道は、枯草で溢れかえって人がたやすく通れるようなものではなかった。
山村に住む方の移動手段は主に車だから手入れする必要性もないが、これが放置されているのを目の当たりにし、地方の体力の限界を感じた。地方創生という言葉は今やどこかで埃をかぶっている。
大型トラックの通路と化した集落の道路。
新しくてきれいなものはデイサービスセンターと、同じ地方議員のポスターくらい。
それらから活気を感じることはなかった。
人が寄らず、新しい刺激が生まれず、張り合う相手がおらず。
地方の田舎と聞くだけで穏やかなスローライフを勝手に想像していたが、地方には地方の問題があるということを肌で感じ取れた。
そして私もまた、その集落を通り過ぎていく。
山岳地帯の中心にくると、もはや人工物は道路とトンネルと車、まれに何かの工場があるくらいで、まさに人の気配が消えた感じだ。つまり、消えたということは歩行者もいないということだ。さっきの歩道の件を思い出してほしい。必要でなければ、手を加えられることもない。
そう、配慮されていないのだ。
「これ、やべえな……」
私の前に、トンネルという名の“壁”が立ちふさがった。
まるでとんちのようなことを述べているが、そのトンネルの前に立ったときは、
マジで『死』を連想させられた。
つづく