夜明け前に出会う
文字数 2,052文字
ラオが起き上がると、見知らぬ狭い路地が映った。
服は酒と土で汚れている。
ラオは道の脇へ這って動いた。
胸の奥から熱がせり上がってきて、ラオは激しく嘔吐していた。
街は楽しい場所だと思っていた。
それは間違いだったのか?
誰も信じてはいけないところだったのか?
男達の背後から、凛とした女性の声がした。
カラン、カランと高い音が続く。
それは少女だった。
赤色の衣服、下は白のスカート……のようにも見えるが、どこか異国の趣を感じさせる。
「おう!」と二人の男が少女に飛びかかっていった。
が――
少女が話しているのは確かにラドミール語だ。
しかし言葉選びが硬いというか、訛りのようなものを感じさせる。
男は舌打ちして路地の奥へと逃げていった。
倒された二人も、よろめきながら必死であとを追っていく。
何にせよ、ラオは救われたようだった。
ラオは差し出された手を掴んだ。
ぐんと引っ張られ、ラオは立ち上がった。
すごい腕力だ。さすがに奴らを撃退しただけのことはある。
宿の名前を言いかけて、ラオは止めた。
うっすらと明るくなってきている。
もうすぐ夜明けだ。
この時間なら、船に戻った方がいいだろう。
サクラに先導されて、ラオは歩き出した。
カラン、コロン、とサクラの足音が路地に響く。
その名前は島にやってくる商船の男から聞いたことがある。
では、この不思議な格好もアカツキ独特の服装なのだろう。
カーン、カーン、カーン、と鐘の音が鳴り響いた。それだけでは止まらず、狂ったように連打される。