第二八話 経営会議と魔力の暴走
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勇者のショートソードやクリスを使ったオーソドックスな講義は需要があって、たまたま私のゾンビ召還講座に需要がなかっただけよ……。召還術を憶えたほうが、あらゆる状況で役に立つはずなのに……。
……いいえ、たとえ低級の召還術だとしても、その程度の召還を実行する魔力に自信があるヤツがいないだけに違いないわ。そうよ、そうなのよ、私は何も悪くない。
でかいだけって……普通に大きいほうが一般的には良いじゃないか。しかも勇者ほどの美女がバニースーツ着てたら、男ならイチコロだろうよ。それだって宣伝努力の一環だろ?
俺たちは稼がなくちゃ生き残れないんだから、非難するようなことじゃないぞ。むしろ努力を讃えるべきだ。
僧侶だって、人前でバニースーツや水着とかを着て、客寄せパンダになるって覚悟くらい持ったほうがいいぞ。ブランド創設も失敗、講座の開催もからっきし……このままじゃ、アタシらから本当に仕事できないダメな子扱いのレッテルを貼られても仕方ないな。
こいつは本格的にヤバい……。勇者、聞け。まだ息があるうちに、お前さんの持ってる魔力のすべてを使って、魔法打撃力を増幅させる黒魔法マグニファクションを全力で発動しろ。アタシ一人じゃ、僧侶にゃ到底かわない。
勇者や魔法使いごときひよっこ風情が、100万人集まっても私一人には敵わないってこと、嫌でもその目に刻むがいいわ! 私めがけて放ってみなさい、アンタたちの全力で! どちらが本当の実力者か、嫌というほど思い知らせてやりましょう!
へへっ……本当はさぁ、お前さんのその生意気な口ぶり、いつか塞いでやりたいと思ってた。初めて出会ったころからだ。こいつぁ良い機会ってもんだぜ。
勇者の魔力も借りれば、私のほうが勝るはず。死なない程度に喰らわせてやんよ!
案ずるな! ぶち抜くのは天上の一点だけだ! わずかな極点に、アタシと勇者の魔力のすべてを結集する!
我と契約せし精霊よ、いにしえの約束に基づき、我が心臓をここに捧げる。我が指し示す天地の一極に災いを巻き起こせ……!
大魔法ファイナルディスラプション!
その刹那。
天上の一点がぶち抜かれ、僧侶の頭上には光の刃が降り注ぐ。
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まぁ100発どころか、せいぜいあと1、2発打てば、アンタと勇者の魔力は枯渇しちゃうかもね。なんだ、何も手出ししてないのに私が勝ってたじゃん。戦わずして勝つ、これ兵法の常道。そんな兵法に精通した私が、
仕事ができないわけがない!!
キャリアウーマンどころか、いずれ女性大資本家、あるいは女性教皇としてこの世を統べる私こそがこの星の至宝。仕事だって私が世界で一番できる存在であるはずよ。だから私が仕事ができないとか言っていたアンタの言葉、今すぐ撤回してもらおうかしら?
互いに戦いの次元が高すぎて、俺には何が何だかわからない……。
こいつらに追いかけられたら、そりゃ魔王も逃げるよな……。というか、単に僧侶の禍々しい魔力を押さえようとしただけなのに、互いに本筋から離れていっているような気が……。
僧侶さん、一緒に武具講座を頑張りましょう……ケホッ……。講座を宣伝して生徒さんたちを集めるのは私が担当しますので、僧侶さんには講義で実演してもらったり、ちょっとした白魔法を教えてもらったりしようと思うんです。