第3話

文字数 14,810文字

希死念慮
第三将【墓場】

 第三将【墓場】

























 「はあっ・・・はあっ・・・!!」

 気付いたら、走りだしていた。

 俺は建物のエントランスまで急いで向かうと、その男の動きを影から観察する。

 「・・・・・・」

 男は数人の男に囲まれながら、エレベーターに乗って行く。

 どこの階数で止まったかを確認すると、俺は階段でその階まで駆け上がった。

 男たちはまだ扉の前でだらだらと何か話をしていたのだが、次第に男たちはそれぞれの持ち場につくため、その場を離れていく。

 1人、また1人と減って行き、ついにその時がきた。

 俺は足音を立てないように男に近づいていくと、手に持ってきていた、昼の時にご飯を食べるために使ったフォークを隠していた腹あたりから徐々に前に突き出し、男の背中目掛けて行く。

 足を止めることも、迷う事もなく。

 そこに吸い寄せられるかのように、俺はそこに向かっていった。

 だが、俺の手に持っていたフォークは、男の背中に刺さることはなかった。

 いつの間にか、斎御司が目の前にいた。

 斎御司は男に背中を向けて、俺と向き合っている状態だったため、男からは俺の姿は見えていないだろう。

 斎御司がフォークをしっかりと握りしめていたため、俺は自然とフォークを放した。

 「斎御司か?」

 男が、斎御司に声をかける。

 斎御司は顔だけを軽く振り向かせると、俺を見えないようにしながら、男に言った。

 「久しぶりだな」

 「なんだ?お前も会議か?」

 「私は別の会議の途中にトイレに行きたくなってな。もう戻らないと」

 「そうか」

 「じゃあな」

 「ああ、そういえば」

 斎御司の足を止めるような言葉に、斎御司とともにエレベーターに乗ろうとしていた俺も、足を止める。

 「この前のガキ、どうした?」

 「この前のガキ?」

 「お前が、俺の部下から奪ったガキだ。金目の。処罰したのか」

 「ああ、ちゃんとしておいた。心配するな」

 「そうか。ならいいんだ」

 斎御司は俺をエレベーターに押し込むと、また俺を隠すように前に立ちはだかり、“閉”のボタンを押した。

 まだ会議中だと言っていたが、斎御司はそのまま自室へと俺を連れていく。

 そして、ポケットに入れていたフォークをテーブルに置くと、雨が降ってるにも関わらず窓を開けて煙草を吸い始めた。

 数分の沈黙のあと、斎御司が聞いてきた。

 「なんであんなことした」

 「・・・・・・」

 「友人の敵討か」

 「・・・・・・」

 「いつまでもそんなこと・・・」

 「あいつが!!!!」

 急に声を出しただけじゃなく、大きな声だったからか、斎御司は少し驚いていた。

 俺も、自分が出した声の大きさに驚きながらも、一度口に出してしまったことはもう戻せなくて、半分、自棄になった。

 「あいつが・・・!!あいつのせいで!!あいつら、あいつらは宝石なんか盗んでない!!別の男たちが盗んだんだ!それを、あいつらに罪着せやがって・・・!!!」

 「・・・・・・」

 今度は、斎御司が黙った。

 「あいつ、あいつら・・・!!親がいないってだけでゴミを見る目で見てくるんだ!!なんで生きてる、消えろ、迷惑だ、死んだ方が役に立つって・・・・!!」

 斎御司は黙って俺の話を聞きながら、煙草を吹かす。

 「あいつらだって!!!!自分たちの為だけにゴミを漁ってたわけじゃない!!俺達と同じような、俺達よりも小さい奴らにご飯食べさせてやりたいって・・・!!それで、いつも危険を承知で、いつもいつも何か言われるのをわかっててゴミ漁りしてたんだよ!!何がわかる!!お前らみたいな人間に、俺達みたいな人間の気持ちなんかわかるか!!生まれてすぐに不吉だなんだ言われて、親殺されて、親戚たらい回しにされて、犯罪手伝わされて、そうしなきゃ生きていけない俺達の気持がわかるか!!!!!」

 「・・・・・・」

 「あいつらがお前らに何した?ただ必死に生きてただけだ。なのに、罪着せられて、見世物みたいに・・・!!」

 その時の光景が脳裏によぎって、言葉に詰まった。

 数回深呼吸をしてから、また話した。

 「しまいには!!あんな!!あんな・・・あんなの、人間の扱いじゃ無い!!どいつもこいつもクズばっかりだ!!!あいつなんか、死んで当然の人間だろ!!!」

 「・・・・・・言いたい事は、それで全部か?」

 「お前もどうせ、あいつらの仲間なんだろ!!!俺のこと飼い慣らして、どっかに売り飛ばす心算なんだろ!!!俺はお前等みたいな大人にはならない!俺は俺の信念だけを貫く!!!」

 「・・・・・・」

 斎御司は吸っていた煙草を灰皿に押し付けると、俺に近づいてきた。

 俺は思わず身構えて目も閉じたけど、斎御司は俺の横を通り過ぎて、俺の後ろにあった本棚から何かを取り出した。

 そして、今度はデスクにその何かを置きながら、椅子に座った。

 「橆令と悠都だったか」

 「!」

 「私の管轄ではないが、子供が起こした事件として耳には入った。正直、子供に出来る所業ではないと思っていたよ」

 「なら、なんで言ってくれなかったんだよ!!!」

 「言っただろう。管轄ではない。つまり、詳細な事件を調べる権限がないんだ。こればかりは、組織にいる限りどうしようもないことだ」

 「・・・やっぱりあんたも仲間か」

 「仲間かと言われればそうかもしれないが、思想や価値観は違う。一括りにされるのは心外だ」

 斎御司が持ってきたのはファイリングされた資料か何かのようで、ペラペラと捲りながら話す。

 「宝石窃盗の犯人なら、すでに捕まってる」

 「・・・!?」

 「私の管轄でも同じような事件を起こした。だから捕まえた。余罪を調べていたら案の定だ」

 「じゃあ、なんで・・・」

 「私が君に会ったあの日だ。逮捕したのは。彼らではないことを伝えに行った。だが、その時にはすでに彼らは堕ちてしまっていた」

 「・・・・・・っ」

 「そもそも、君たちはなんで一緒に行動をしていた?」

 「・・・・・・俺が、街で腹空かしてて、あいつらに助けてもらった」

 「そうだったか。・・・洌羽に関しても黒い噂は以前からあった。だが、隠蔽工作も口裏合わせもしっかりされてて、証拠1つ見つけられないでいる」

 「・・・大したことねぇんだな、お前等」

 「耳が痛いね。・・・君に言う事がある」

 「説教なら聞かない」

 「説教もしたいところだが、後でいい」







 「所詮この世は、権力と金で動いてる。そいつ自身が正しいかどうかなんざ、どうでもいいんだ。そんな理不尽な世の中で、君みたいな底辺のガキは淘汰されるだけ」

 「・・・・・・」

 「どうする?このまま権力に踏みつぶされる人生を送るか、それとも、俺と来てお前の信念とやらを試してみるか?」

 「・・・・・・」

 俺が何も言わずに黙ったままでいると、斎御司は答えを催促するかのように言う。

 「悪に正義乗っ取られていいのか?」

 「・・・・・・」

 「お前の信念、証明しなくていいのか?」

 「・・・・・・」

 斎御司の口車に乗せられた気もするが、俺は斎御司の喧嘩を買った。

 すると、斎御司はとある男を紹介してきて、しばらくはそこで修行がてらちゃんとした身技を学べと言われた。

 銀髪でやる気の無さそうな男だったが、日に日に強くなっていくのが分かった。

 その途中、斎御司に、目にカラコンを入れろと言われたため、初めて目に異物を入れて生活することとなった。

 最初の頃は慣れなくて、修行中になんども目が痛くなり、その間にあちこち殴られて痛かった。

 時が過ぎると、斎御司に呼ばれこう言われた。

 「お前、そろそろ試験受けろ」

 呼び方が変わった気がするが、そこは気にしないことにした。

 「で、今受験するための申込書を書いてるんだが、名前は?」

 「・・・・・・」

 「お前だの君だのとずっと呼ばれるのは嫌だろ?」

 「・・・・・・将烈」

 「将烈な。なんだ、良い名前だな」

 「・・・どこがだよ」

 「ちなみに、この受験金かかるからな。もし落ちるようなことがあったら、今までの面倒見てきた生活費諸々、返してもらうからな」

 そう言われたものだから、必死になった。

 法律なんて今まで一度も話をしたことがないのに、今からどうやって詰め込むんだというくらい頑張った。

 なんで俺はこんなに必死になって警察という嫌いな組織に入ろうとしているのか、そのとき、脳裏に過ったのは、あいつらの顔だった。

 「お前の信念で、世の中を変えてみろ」







 なんとか受かり、無事に嫌な組織に入ることが出来た。

 同期からはいつも煙たがられていたため、あまり周りを気にしないようにはしていたが、なぜか1人、俺に突っかかってくる男がいた。

 「鬧影、お前わざわざ喧嘩売りにきたのか?」

 「俺だってそんなに暇じゃない」

 「じゃあなんだよ」

 「お前の後ろにあるプリンを取りたいだけだ」

 「それならそうと早く言え。無駄にガンつけてくんじゃねえよ」

 「・・・つけたつもりはないんだが」

 俺と鬧影は、他の同期より頭角をどんどん現し始めた。

 当然、気に入らないと思うやつに喧嘩をしかけらることもあったのだが、舌打ちをしながら、言われたことを思い出した。



 『いいか将烈。良くも悪くも、お前は組織に一員になった』

 『あんたのせいだろ』

 『手を出した方が負けの世界だ。わかるな』

 『癖なんだ、しょうがねえだろ』

 『しょうがないで済む世界でもない。この仕事はな、証拠だって犯罪だって、嘘を作りあげようと思えばいくらだって出来る仕事なんだ。だが、それだけはするな。何があってもだ』

 『しねえよ、んな卑怯な真似』

 『ならいい。暴力では権力者を葬れない。方法は1つだ』

 『わーってるよ。そいつのことを徹底的に調べて、綻び見つけて、そこをほじくりかえすんだろ』

 『違う気もするが、まあ、大方そんなところだ』

 『不祥事なんざ、どいつもこいつも抱えてるもんだ。なら、しつこく調べ上げて二度と土俵に上がれねえように追及してやる』

 『追究も頼んだぞ』



 「・・・・・・」

 今すぐ殴りたい衝動に駆られながらも、なんとか耐えて耐えて耐えて。

 いつだったか、斎御司のことを“おっさん”と呼ぶようになっていて、おっさんもそのことについて文句を言う事はなかったから、周りの目なんか気にせず呼んでいた。

 そのうち、おっさんから「結婚することになったからお前も式に出ろ」と言われたけど、断った。

 別におっさんのことを毛嫌いしていたとかじゃなくて、式に出る奴らの名前を少し聞いただけで吐き気がしたからだ。

 「上を目指すなら多少我慢して顔を見せる必要があるぞ」

 いつからか吸うようになった煙草の煙を眺めながら、俺はおっさんの言葉を風と一緒に聞き流した。

 「将烈」

 「・・・俺は別に出世したいわけじゃねえ」

 「わかってる。だがな、上に行かねば、お前の目指してる世の中には出来ないぞ」

 「あんな奴らと同じ空気は吸いたくねえ」

 「将・・・」

 「失礼します」

 ノックをしなかったのか、それとも俺とおっさんが話に集中していて聞こえなかったのかはわからないが、そいつは俺の前に現れた。

 「どうだった?」

 おっさんはそいつを俺に紹介することもなく話し出す。

 「斎御司さんの思った通りですね。あいつら、病院の院長と取引していて、医療ミスが出たときには完璧に隠蔽工作してます。金の受け渡し現場もばっちりです」

 「そうか。御苦労だったな」

 「で、そちらはもしかして、噂の?」

 そいつが俺に向かって笑みを浮かべた。

 警察関係者らしい、スーツ姿をした奴だったが、目つきは柔らかかった。

 そいつが俺のことを見ていたことが分かり、おっさんはようやくそいつの紹介をする。

 「こいつは私の忠実な部下になった“眞戸部”だ」

 「斎御司さん、“忠実な”はちょっと言い過ぎかと思いますよ。それじゃあ、俺が犬みたいじゃないですか」

 「どちらかというと狼だな」

 「そういうことじゃないんですよ、斎御司さん」

 「忠実な狂犬の狼、眞戸部だ」

 「なんすかその紹介の仕方は。色々混ざってますよ。やめてください。もう自分でするんでいいです。黙っててください」

 眞戸部という男にズバズバ言われ、おっさんは大人しくなった。

 そいつは子供みたいな笑みを見せたかと思うと、目の奥に何か滾らせながら俺に手を差し出してきた。

 「斎御司さんのお手伝いをしています、眞戸部です。よろしくおねがいします」

 「手伝い?」

 「ええ。手伝いですよ」

 「部下じゃなくて?」

 「部下のような仕事をさせていただいていますが、正式にはまだ部下にはなっていません。今はまだ別の部署に所属していることになってるので」

 「じゃあそのうち部下になるな。御愁傷様」

 「あれ?俺死ぬんですか?」

 「ってことはあれか。俺がおっさんのとこから異動でもすんのか?」

 「聞いてます?」

 「お前はそもそも私の部下なのか?」

 「そこ疑問形ってなんですか。斎御司さん、御自分の部下のことも把握できていないんですか」

 「あ?俺は今一体どこに所属してんだ?」

 「あなたも把握していないんですか」

 「お前は私の部下でありながら別の仕事ばかりしているから私の部下として成り立っているのか不明だな」

 「おっさんの仕事はおっさんがやるべきだろ」

 「その斎御司おっさんの仕事をやらねばならないのが部下というものですよ」

 「斎御司おっさんという呼び方は止めろ」

 「つーかこの前も書類失くしてただろ。また一から作り直したんだぞクソ斎御司おっさん」

 「クソと言ったのか今」

 「クソ斎御司おっさん野郎は整理整頓が苦手なんです。だからこまめに俺が部屋の掃除も兼ねて整理しているんです」

 「野郎?」

 「クソハゲ斎御司おっさん野郎、そういや最近煙草止めたのか?」

 「ハゲていない」

 「クソハゲ・・・でか斎御司おっさん野郎は奥さんに副流煙の影響が出ないようにと、禁煙をしているそうです」

 「眞戸部、無理に付け加える必要はない。それに寿限無寿限無みたいになっているからな。さすがに傷つくからな」

 「悪口という悪口はクソとハゲくらいかと」

 「いや、おっさんと俺くらいの間柄になれば、クソなんて口癖みたいなもんだし、ハゲに至っては将来なるだろうから悪口じゃねえ。予知だ」

 「将烈、お前」

 「失礼します」

 また別の男が入ってきて、俺達3人を見ると少し驚いたような、目を泳がせて困ったようにしていた。

 おっさんが男に近づいていくと、そこで何やら話をしたかと思うと、男はそそくさと消えていった。

 おっさんは男に渡された紙を眺めて、後頭部をぽりぽりとかいていた。

 まずいこと、もしくは俺に知られたくないことなんだろうっていうのは、今までおっさんの近くにいたから分かることだ。

 いつもなら無理に聞き出そうとも思わなかったが、その時の俺はなぜか、無意識におっさんに近づいていって、おっさんに声をかけていた。

 おっさんは少し眉を潜めて俺のことを見て、「いや・・・」と言葉を濁したものだから、俺はおっさんの手からソレを奪い取った。

 「・・・・・・」

 「・・・将烈」

 「・・・・・・」

 俺の口から、咥えていた煙草が落ちる。

 床に落ちた煙草をおっさんが拾って指で火を消していたようだ。

 「将烈」

 「・・・・・・」

 おっさんに呼ばれていることも気付かず、俺は何度も何度もその紙を読んだ。

 その間、眞戸部は俺に声をかけるでもなく、おっさんにも聞くわけでもなく、ただじっと、その光景を見ていた。

 いや、多分、おっさんに何が書いてあるのかは聞こうとしていたんだろうが、おっさんが今は待てと制止していたんだと思う。

 その時の俺は、周りの様子を気にする余裕もないくらいに心臓がドクドクと波打っていて、自分でも信じられないくらいに動揺していた。

 俺は紙をぐしゃっと握りつぶしながら、走って向かっていった。

 「・・・・・・」

 その姿を、おっさんは止めることもなく見ていたそうだ。

 「斎御司さん、一体何が?」

 「・・・・・・今頃になって、まさかな」

 「?どういうことです?」

 「あいつにとっては、辛い現実だ」







 「はあ・・・はあ・・・」

 やっとのことで、いや、実際にはそんなに長い距離を走ったわけでもないと思うが、その時の俺にとっては長い距離だった。

 カチ、カチ、と腕時計の針なのか、それとも音などしていないのにそんな音が聞こえているだけなのかはわからないが、とにかく、耳障りなほどそういう音が聞こえてきた。

 無機質な部屋に辿りついて、冷たくて重いその扉を開けると、身元の引受人もいない遺体が幾つも綺麗に並んでた。

 電気を点ければ良かったのかもしれないが、点けずに薄暗いまま、真新しい遺体の方へと向かっていく。

 「・・・・・・」

 並べられた2つの身体は、全身が銀色のもので包まれていて、顔が見えない。

 ファスナー式になっているそれを開けて中を見ようとしたのだが、そんな簡単な行為でさえ、躊躇してしまった。

 俺は手を放し、自分に冷静になるように息を整えさせると、再び手を伸ばす。

 ゆっくり、ゆっくり、小刻みに震える指先に憤りを感じながら、俺はようやく2つのファスナーを下げた。

 「・・・・・・ッ」

 そこにある顔を見た途端、俺は声が出なくなって、その場に膝から崩れた。

 今までにだって、幾つも遺体を見てきた。

 小さな子供のものだってあったし、老人のものだって、数百、数千と見てきた。

 それなのに、今になってこんなにも吐き気を覚える遺体と対面することになるなんて、思ってもいなかった。

 俺はしばらく、その場から動けなかった。







 「戻ってきませんね」

 「そっとしておいてやれ」

 「何があったんですか?」

 「昔のことだ」

 「気になりますよ。将烈さんといえば、普段は飄々としているイメージですし。あんな風に取り乱すなんてそうそうないでしょう」

 「あいつだって人間だ。取り乱すことくらいあるだろう」

 「・・・・・・斎御司さんは将烈さんのことよくご存知ですよね。俺、詳しいこと聞いてないんで知らないんですけど、将烈さんって小さい頃からここに出入りしていたんですか?」

 「私が独身時代に少し面倒を見ていただけだ」

 「ああ、だからですか。一時期斎御司さんの隠し子騒動があったって聞きました」

 「くだらん」

 「他人の過去を根掘り葉掘り聞く心算は無いんですが、ちょっと興味はありますね。斎御司さんが将烈さんの面倒を見ることになった経緯といいますか」

 「・・・・・・」

 「俺口堅いですよ」

 「それは知っているが、私の一存で話して良い内容でもない」

 「・・・ってことは、斎御司さん側の都合とかではなく、将烈さんの方に何かあったってことですよね。ま、年齢的にも将烈さん側に、親御さんが亡くなったとか、事件に巻き込まれたとか・・・」

 眞戸部はちらっと斎御司の顔を見ると、そういう類の話ではないんだと理解する。

 眞戸部が組織に入る以前より、斎御司は変わっていると言われていた。

 眞戸部も組織に入ってそれはすぐに耳にしたのだが、確かに変わってはいるのだが、だからといって、無責任なことをする人ではないと感じていた。

 隠し子の噂があったと聞いたときも、そもそも堂々と隠し子を連れてくるわけないだろうと、何か理由があって傍に置いているのだと理解した。

 斎御司のもとに異動したいと何度かお願いをしたのだが、眞戸部を手放したくなかったのか、異動願いは却下され続けた。

 斎御司のもとには将烈という男がいるし、あそこには関わるなと何度も言われたが、眞戸部は願いを出し続けた。

 それから少しして、将烈という男こそが、斎御司の隠し子だと言われた男だと知ると、将烈のことを調べようとした。

 しかし、情報はほとんど手に入らなかった。

 警察組織に入る前のことは、何ひとつとして情報が無かったのだ。

 しかも、組織に入ってすぐに斎御司のもとに呼ばれたため、同期たちでさえ、将烈のことはほとんど知らない状態だった。

 鬧影という男でさえ、あまり知らないと言っていた。

 ある日、斎御司と将烈が並んで歩いているところを見かけたが、明らかに血縁関係はないと分かった。

 だからこそ余計、どうしてそこまで将烈の面倒を見ているのかが知りたくなった。

 それに、眞戸部自身、斎御司にも将烈にも恩があった。

 「(2人とも、覚えてないだろうけど)」





 眞戸部の上司が仕事でミスを犯し、それを眞戸部のせいにして、全責任を取らせようと、大勢がいる前で眞戸部に辞職しろと責め立てたときがあった。

 そのとき、眞戸部のせいじゃないと知っている者も当然いたのだが、上司には逆らえなかった。

 しかもその上司のバックには上層部がおり、みな何も言えずにいた。

 そのとき、空気を読まずにその上司を否定したのが将烈だった。

 「何言ってんだ、あのハゲ」

 「こら将烈、いきなりハゲは失礼だろう」

 「さっきから黙って聞いてりゃなんだ?お前、仕事の責任部下に取らせてるわけ?恥ずかしくねえの?ああ。そうか。もうハゲてるから恥ずかしいのには慣れてるのか。慣れって怖いな」

 「こら将烈、いくら良い上司がいるからってそういう言い方は良くないぞ」

 「誰もあんたが良い上司なんて言ってねえから」

 「確かに私は自分のミスを部下に押し付けるような愚かなことはしない」

 「いや、この前大福勝手に食って俺が喰ったってことにしただろ。忘れねえからな。呪うぞ」

 「上司が上司だと部下も苦労するだろうな」

 「まさに俺のことだ」

 「私はあそこまで明らかな濡れ衣は着せないぞ」

 「そもそも濡れ衣着せんなよ」

 2人の会話に、眞戸部の上司は怒号を返した。

 「貴様ら!!!何様の心算だ!!?これは私の決定だぞ!私の意見に背くということは、お上の意見に背くということだ!!覚悟は出来ているんだろうな!!」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「何か言ったらどうだ!怖気づいたのか!?」

 将烈はため息を吐きながら煙草を吸いだし、斎御司はそれを止めようとすることもなく、顎を摩っていた。

 眞戸部だけではなく、その場にいた皆が目をパチクリさせていた。

 「覚悟が出来てねぇのはてめぇだろ」

 「なっ!?」

 「実際に部下のミスなのかてめぇのミスなのかはこの際どうでもいいんだよ。ただな、部下のミスだとしても上司のてめぇが責任取るもんだろ。それが上に行く奴の覚悟だろうが。責任取りたくねぇならさっさと平に戻れよくだらねえ」

 「お、お前えええ!!!お前も一緒に処分してやる!!!」

 「あ、それは困りますよ。この男は私の部下なので。勝手に処分なんてされたら私があなたを処分します」

 「こ、こいつだって!!俺の部下だぞ!?どう処分しようと俺の勝手だろ!?」

 そう言って、上司は眞戸部のことを指さした。

 「『俺の女なんだからどうしようと俺の勝手だろ』って言ってる阿呆な暴力男みてぇだな」

 「なっ!?」

 「どうしても処分したいのでしたら、その男、私が引き取りましょう」

 「なっ!?」

 「まあ、正式な手続きはまだですので、次回の異動まで所属はそちらということになってしまいますが、私の手伝いということで。しばらく私が預かります」

 「いや、それは・・・」

 「あ、じゃあ俺が異動出来るってこった」

 「お前はまだ私以外の上司に従える状態じゃないだろう」

 「あー、面倒くせぇ」

 「そういうことですので、さて、私も忙しいので。将烈、戻るぞ」

 「くだらねえことで呼びだすのはマジ勘弁してほしい。これだから組織は嫌なんだよ」

 「将烈、聞こえるだろう」

 「これくらい聞き流してほしいね。これで一々突っかかってくる奴は、相当ケツの穴が小せぇ野郎だろうよ」

 「将烈」

 「わーってるよ」





 2人が去って行ったあと、上司は顔を真っ赤にしてプルプル震えていたが、それを見て笑ってしまいそうになったのは、眞戸部だけじゃないはずだ。

 その時のことを思い出していると、斎御司がコーヒーを淹れるように言ってきた。

 それから夕方になっても将烈は戻ってこなくて、眞戸部は心配して斎御司に様子を見てきた方が良いのではと伝えると、さすがに斎御司も何か思うところがあるようで、1人で行くと言って、部屋を出た。

 「・・・・・・」

 少し寂しい気もした眞戸部だが、今はまだ、自分が知ることの出来ないことなんだと受け入れ、仕事に取り掛かる。

 その頃、斎御司は将烈が向かってであろう場所に行く為エレベーターに乗っていた。

 奥の壁に背中を預け、腕組をしながら、指先で腕をトントンと、エレベーターを急かすような仕草をする。

 だからといって早く着くわけでもないのだが、なんとなく気持ちが焦っているのか、その仕草も速くなる。

 ようやくチン、と音がして降りると、足早に部屋を目指す。

 思っていたよりも強く扉を開けると、そこには、壁に凭れかかるように座った状態で、眠っているのかさえ分からない将烈がいた。

 電気を点けようと腕をそこに伸ばすが、斎御司は何かに気付き、点けるのを止める。

 「将烈」







 どのくらいの時間、そこにいたのかなんてわからなかった。

 扉が大きな音をたてて開けられたかと思うと、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 「将烈」

 「・・・・・・」

 俺は顔をあげることもしないで、床のどこかを見ていた。

 声の主がおっさんだとすぐにわかったが、俺は返事もしないで、いや、返事も出来ずにじっとしていた。

 おっさんはゆっくりと近づいてきて、開けっぱなしになっているその中を確認するように、指で少し入口を広げる。

 その時、おっさんがどういう表情をしたかなんて見ていないからわからないが、おっさんは顔を2つ確認した。

 「あの時」

 俺が絞り出したような細くて弱い声を出せば、おっさんは俺の前に立ったまま、黙っていた。

 「あの時、あいつを逮捕して、全部調べた。あの場所も、あいつの家も、部下の奴らの家も、出入りしてた奴らの家も全部、調べた。調べて、いなかった・・・」

 「・・・・・・」

 「あの時、もう死んだと思ってた。あいつらに、殺されたと思ってた」

 ゆっくり、一言一言、文字や言葉を探しながら話しているように、ゆっくり、話した。

 「あそこにあった資料も全部読んだ。あいつらに繋がるものがあるかと思って。でも、やっぱり無かった」

 「・・・・・・」

 「なんで・・・今になって・・・」

 「・・・・・・」

 おっさんは何も答えない2つの顔を見てから、俺に言った。

 「きっと、お前に会う為に必死に生きていたんだ」

 「・・・・・・ッ」

 「あの時のお前の判断は間違っていない。あの状況で、2人が生きているのは考えにくかった。あいつらは証拠を確実に隠滅する。逮捕出来たことさえ、奇跡なんだ」

 「昔の俺ならッ!!あいつらは生きてるかもしれないと思ってた。何が何でも、あいつらを探した。死んでるなら、その事実を探した・・・!!!」

 「将烈・・・」

 「俺は、あの時諦めた・・・!!!あいつらが、生きてることを・・・」

 「・・・・・・」

 沈黙が続いた。

 多分、おっさんも俺に何て言葉をかければいいのか、わからなかったんだと思った。

 おっさんは俺の頭に手を置いて、まるで子供をあやすかのように軽くポンポンとしたあと、両膝を曲げて身を屈めた。

 それでも俺は顔をあげる気力もなくて、床を見ていた。

 「あいつらが生きようと思ったのは、お前が生きてると思ったからだ。だが、死んだのは、お前が死んでると思ったからでも、世の中に絶望したからでもない」

 「・・・・・・」

 「きっとやっとの思いで逃げ出したんだろう。だが、傷口から細菌か何かが入って、体内に侵入。臓器にも影響を与えた」

 両腕が無い状態で、生き抜くのは大変だっただろう。

 あの後、輸血されたのかさえ知らないが。

 どこぞの権力者にでも気に入られて、しっかりとした治療を受けられたのかもしれない。

 そんな記録も残っていないから正確なことは言えないが、最近まで生きていたのだから、きっとそうなんだろう。

 「お前が目を背けてどうする」

 おっさんの言葉が、心臓に突き刺さる。

 「あいつらがどんな奴だったのか、どんな生き方をしていたのか、本当に理解してやれるのはもう、お前しかいないんだぞ」

 「・・・・・・」

 「別れが済んだら、部屋に来い。お前に大事な話がある」

 そう言って、おっさんは出ていった。

 俺はなかなか動けなく手、結局、おっさんが出ていってから1時間以上はそこにいたと思う。

 やっと腰を上げて、開けられたままのそこから見える、幼いころの面影を残したままのその顔を見つめる。

 「・・・・・・」

 あの頃には見せなかったような小さく微笑みを浮かべると、部屋には俺以外いないのに、周りに聞こえないように小さな声で言った。

 「ありがとな」







 「遅いぞ。今何時だと思ってる」

 「別れが済んだらっておっさんが言ったんだろ」

 「そうだが、もう深夜だぞ」

 「で?話ってなんだ?」

 どっぷりと夜に浸かったころ、俺はおっさんのもとに行った。

 他の奴らは、一部の人間を覗いてはとうに帰宅している。

 おっさんは眠そうにしながらも、デスクに用意してあった資料を俺に差し出してきた。

 俺はそれを受け取ると、ぺらぺらと捲る。

 「なんだこれ?」

 「眞戸部が正式に私の部下になる。それで、お前は別の部署に異動になった」

 「俺が別の上司につくのが無理だって言ったのはおっさんだろ」

 「そうだ。だから、上司はいない」

 「あ?」

 組織に来てそれなりの月日は経つが、何分、俺自身馴染んでいないことくらい百も承知だ。

 そんな俺の心情を知ってか知らずか、おっさんは平然と話を進める。

 「私が作った部署だ。完全に独立した組織の創立にはまだ時間がかかりそうなんで、私直下の部署として作った」

 「・・・・・・」

 「なんだその面倒臭そうな顔は。好き勝手出来るんだぞ」

 「好き勝手出来んのはいいけどよ・・・」

 「何が不満なんだ?」

 「不満ってーか、おっさんさぁ、俺のこと利用したんじゃねえだろうな」

 「なんのことだ?」

 「俺は組織のことなんてよく知らねえし興味もねえけど、知らねえうちにおっさん、結構上の立ち位置になったって聞いたぞ」

 「優秀な部下がいたからな」

 「クソ野郎」

 「私が上にいれば、それだけお前は好きに動ける。ある程度は自由にしていい。Win―Winの関係だろう」

 「・・・・・・」

 「なら止めるか?」

 「やるよ」

 「よし、なら手続きの書類を書いて明日中に持ってこい」

 「・・・・・・」

 「・・・どうした」

 俺は、じっと手渡された書類を睨んだ。

 おっさんは、なんで俺が書類を睨んでいるのかと眉間にシワを寄せていた。

 渡された書類には“公安機密警察”と書かれていた。

 俺は自然と、口角を上げていた。

 「やってやるよ」

 「・・・・・・」

 おっさんは、そんな俺を見て同じように笑った。

 傍から見れば、異様な光景だっただろう。

 「こんな反吐が出る世の中も、胸糞悪い組織も、ぶっ壊してやるよ」

 「お手柔らかに頼む」







 斎御司のもとに、1人に男が現れる。

 以前見たときは、ザ・組織人、といった空気を漂わせていた男だが、今目の前にいるのはそれとは程遠い。

 組織の人間とは思えないほどラフな格好で、髪の色も明るくしてある。

 「眞戸部か」

 「イメチェンしました」

 「不審者かと思った」

 「酷いですね。でも、こっちの方が何かと便利かと思いまして。それに、斎御司さんが上司になったので」

 「私を舐めているのか」

 「違います違います。懐が大きいってことです。情報を得るには、相手を油断させるこことが重要です。相手が自分より無知だと思えば、ペラペラと色々話す人が多いもので。ダメですかね?」

 「いや、構わん」

 「じゃあ早速、仕事に取り掛かります」

 眞戸部が部屋から出て行くと、少ししてノックの音が聞こえた。

 返事をすると、1人の若い、至極真面目そうな男が入ってきた。

 黄土色の髪のその男は、私のほうへとずんずん歩いてきて、正直、顔が怖いとさえ思ったのだが、怯む素振りは見せないようにした。

 「何だね?」

 「自分、波幸と申します」

 「ふむ」

 「あの、しょ、将烈さんという方に、お会いしたいのですが!!!」

 「・・・・・・今は別の部署にいる」

 「え!?あ、そ、そうでしたか・・・」

 子犬のようにシュン、となったのがわかって、さすがに可哀そうになり、私はあの男に連絡を取ってみることにした。

 将烈の異動先の仕事内容のこともあり、異動自体知っている者は限られていたから、この若者が知らなくても仕方ないことだ。

 何度かコールをするも、なかなか出ない。

 仕事で潜入でもしているのか、それとも私からだから出たくないのかはわからないが、根気強く何度かかけると、そのうち諦めたように声が聞こえる。

 《なんだよ》

 「お前に会いたいという誠実そうな若者が私のところに来ているんだが、今どこだ?」

 《なんでおっさんの主観入りなんだよ。今仕事が一区切りついて、屋上で煙草吸ってる》

 「わかった。今から向かわせるからそこにいろ」

 《いや・・・》

 ガチャ、と将烈が何か言う前に、電話を切った。

 波幸とかいう若者に将烈の居場所を伝えると、目をキラキラさせて部屋から出ていこうとした。

 「将烈を知っているのか」

 まあ、有名人といえば有名人だが、良い意味で将烈に近づきたいという奴はほとんどいなかった。

 仕事が出来るという話よりも、同業者に厳しいという声の方が大きいだろう。

 命を狙っているようには見えないから教えたが、これで何かあったらどうしようと、内心思っていないわけではなかった。

 若者は目を輝かせながらも、表情は一切緩ませることなく、答える。

 「自分、将烈さんには恩があるんです。将烈さんに憧れて、将烈さんのようになりたくてこの仕事を始めたんです」

 「・・・周りから止められただろう」

 「はい」

 「それでも下に就きたいのか」

 「はい」

 「もし今の上司に止められたら、また私のところに来なさい。私が許可を出そう」

 「ありがとうございます!」

 若者は零れてしまった笑みを隠すこともなく御礼を言うと、部屋を出ていった。

 思わず小さく笑っていると、戻ってきた眞戸部に気持ち悪そうな顔をされた。

 「なんて間延びした顔をしているんですか」

 「間延びした顔とはなんだ」

 「まあいいです」

 それから眞戸部としばらく仕事の話をして、昼でも食べに行くかと言ったところで、眞戸部がこんなことを言ってきた。

 「斎御司さんも将烈さんも、わざわざ上層部に喧嘩売る様なことしてますけど、よくクビにされませんね」

 「喧嘩を売った覚えはないんだがな」

 「どうしてそこまでして、改革紛いのことをしようとしてるんです?」

 「・・・・・・」

 将烈ほどの重たい過去があるわけでもなく、世の中を変えようという思想が誰よりも強いわけでもない。

 黙ってしまった私に、眞戸部は話題を切り替えようとしたが、私が先に答える。

 「賢く生きるか、信念を貫くか」

 「え?」

 「私たちのような仕事は、必ずしも努力が報われるわけではない。時として、真の英雄が悪役として世に広まり、後世に伝えられることがある。いつの時代も正義は名ばかりだ。世知辛いと思わないか」

 「・・・斎御司さんて、そういうちゃんとした考えというか、倫理観を持っていたんですね」

 「私をなんだと思っていたんだ」

 「将烈さんのお陰で出世した人」

 「あながち間違ってはいないが」

 すると、斎御司のもとに電話が鳴ったため、眞戸部は部屋から出て行った。

 「はい、斎御司です」







 「ふう・・・・・・」

 鼇頭を鬧影に任せてから少し経ったある日ある場所。

 俺は人目につかないように山道を歩き続けていた。

 おっさんには定期的に連絡をしているものの、正直、これから自分の身に何が起こるかは想像出来ない。

 木の幹に腰を下ろし、今日初めての休憩を取る。

 自分の掌を見ていると、血がべっとりとついているような錯覚に襲われる。

 「所詮は、汚れてる手か」

 自嘲気味に笑って、またすぐ歩き出す。

 「俺は二度と、何者にも染まらない」

 例え、明日死ぬことになったとしても。

 呼吸を整えながら山道を歩き、時折、川に行って水を補給し、水筒にも補充する。

 タオルも濡らして身体や頭を軽く拭き、目に入っているカラコンが痛くて外した。

 闇夜を照らすようなその金の目を咎める者は、ここには1人もいない。

 誰に言うわけでもなく、俺は呟く。





 「首洗って待ってろよ」





 男は闇に呑まれるように、消えていく。





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