文字数 459文字

雲はますます鈍く
低く漂っておられるようです
どんどん降りてくるもんですから
夢中で走りました
走って走って走って走って
ついには息も切れ切れ
こみ上げてくる熱さと唾液が喉に絡みつき
ついには雲にも絡め取られました
朝には露が滴っていた光っていた近所の草花も
すっかり身を隠して
まるで自分らの色が溶けて流れてしまったと
嘆いているようでした
でも目は何も見ていません
ただ鈍色の雲が目を覆い
口から気道に入り込み
耳から入り鼓膜を圧迫してしまいました
草花はそれを気の毒そうに感じていましたが
よく吠えるまた近所の犬が睨みつけるものですから
怯えて塀の影に身を潜めるばかりです
いよいよ雨が降り出しました
体は茶色く濁った雨水で満たされて
ゆっくりと河川を漂っています
悲しみは湧いてきません
しかしそれが嘆かわしいのです
悲しむことすらあの雲に奪われてしまったことを
その時気付かされたのです
流されていった先には何があるでしょう
海でしょうか
ダムでしょうか
草花は葉を振って見送りました
犬は3つ吠えました
雲はますます鈍さを増して
肺を
涙を
手先の器用さを
奪っていくのでした
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