第4話 1次審査が最難関

文字数 1,438文字

アタシ達もメンバー見つけようぜ。
それなら俺とコウジとアールグレイ先輩とで、1人見つけたよ。
セージとジンジャーのオーディションの頃から、俺たちも仕掛けをしておいたんだよね。
仕掛けって?
無線使ってメンバー募集を呼びかけたんだよ。

無許可だからこっそりとね。

ラジオ?
ん、まあ、わかりにくいラジオ。


この呼びかけに反応できたところで1次試験通過。で、2名しかエントリーこなかった。

ねーねーどんな子なの? 名前は? 画像ある?
アールグレイが通信端末をオンにして、1人の男の子を映し出す。
……
あ! この子、ルクリアでしょ! どうして? 

ビターチョコレートのオーディション受けているのに。

ルクリアからのメッセージです。
バジルさん、やっと見つけた。そこにいるの? 


同じチームに加入できる? OKなら、僕、ビターチョコレートを辞める。

NOならトコトン戦う。


ライブで会って、ずっと応援していた。なのに、急にいなくなって自分勝手だ。バジルがいてくれて、笑ってくれたから、僕、頑張ってきた。それなのになんにも言わずにいなくなるなんて。

なんかちょっと恐いんだけど。
粘着気味じゃん。

さすがバジル、外国人からも大人気。

ちょっと興味深いけど、情緒不安定なこの子は却下した方が。


もう1人は?

こちらが本命、ビオラさんです。
みんなで通信端末を覗き込む。

ルクリアとは雰囲気の違う、大人しそうな女の子が映っていた。

あ……ビオラといいます。中学2年生です。

この呼出符号(コールサイン)はお祖父ちゃんの残した無線機で受信しました。

スキルは『充電(ブースター)』『漏電(アンチ・ブースター)』です。

その他家事全般、力仕事なんでもやります。



なんでもやりますから、お願いします、助けてください。

この子の家を特定して定点観測していたのですが……
豪雪地帯、まばらな家並み。上空からズームする。


夕暮れの中、寒そうに手をさすりながら自宅ガレージの前で立っている女の子。何度も雪かきしている。 40分後、自家用車が帰ってきてガレージに入った。

別の日はガレージの前に少し雪が積もっていたんだよ。

そうしたら、車から出てきたババアに叩かれて罵られていたんだ。

家族の帰宅時間に合わせて、毎日ガレージ前で雪かきしながら待機させられているみたいだ。もちろん朝も早くから1人で雪かきしているよ。

雰囲気から虐待の恐れを感じたので、モカさんに連絡して脳機能研究センター極北矯正収容所で保護してもらいました。

今回、モカさんには色々とご尽力いただきました。

通信端末に映るモカ。
みんな、久し振り。ナツメグちゃん、私元気でやっているよ。


ビオラちゃんは義母と祖母から虐待を受けていたの。今リハビリをして、ソフト面の傷を修復している。

落ち着いたら9番ゲートに送っていくね。

ビオラちゃんのスキルは、きっとみんなの手助けになると思う。

モカさん……ありがとう。
カルダモン、どうしたの? 首をかしげて。
え? ああ、鬼女(スレッド)がいつの間にかビオラの家族の悪行を晒していたんだ。


アタシのスキル、いつのまにAI化したのかな? 

それ多分、カルダモンさんのスキルの発動じゃなくて、前から地元で評判の悪い家なんですよ。

きっとひんしゅく買いまくりの。

ビオラちゃん、かわいそうだったね。

ビオラちゃんが来たら、私思いっきり可愛がってあげたい。

スキルなんて無くてもいい。(いつの間にか涙ぐんでいる)

俺たちの微かなメッセージを捕まえられた時点で、優秀な子だと思いますよ。
1次審査が最難関だからね。
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