第4話 1次審査が最難関
文字数 1,438文字
アールグレイが通信端末をオンにして、1人の男の子を映し出す。
バジルさん、やっと見つけた。そこにいるの?
同じチームに加入できる? OKなら、僕、ビターチョコレートを辞める。
NOならトコトン戦う。
ライブで会って、ずっと応援していた。なのに、急にいなくなって自分勝手だ。バジルがいてくれて、笑ってくれたから、僕、頑張ってきた。それなのになんにも言わずにいなくなるなんて。
みんなで通信端末を覗き込む。
ルクリアとは雰囲気の違う、大人しそうな女の子が映っていた。
あ……ビオラといいます。中学2年生です。
この呼出符号(コールサイン)はお祖父ちゃんの残した無線機で受信しました。
スキルは『充電(ブースター)』『漏電(アンチ・ブースター)』です。
その他家事全般、力仕事なんでもやります。
なんでもやりますから、お願いします、助けてください。
豪雪地帯、まばらな家並み。上空からズームする。
夕暮れの中、寒そうに手をさすりながら自宅ガレージの前で立っている女の子。何度も雪かきしている。 40分後、自家用車が帰ってきてガレージに入った。
別の日はガレージの前に少し雪が積もっていたんだよ。
そうしたら、車から出てきたババアに叩かれて罵られていたんだ。
家族の帰宅時間に合わせて、毎日ガレージ前で雪かきしながら待機させられているみたいだ。もちろん朝も早くから1人で雪かきしているよ。
通信端末に映るモカ。
みんな、久し振り。ナツメグちゃん、私元気でやっているよ。
ビオラちゃんは義母と祖母から虐待を受けていたの。今リハビリをして、ソフト面の傷を修復している。
落ち着いたら9番ゲートに送っていくね。
ビオラちゃんのスキルは、きっとみんなの手助けになると思う。