第165話 更新
文字数 2,079文字
予期せぬ異変にディゼルとカーレンは緊張感が高まっている。ユウトは天幕の影からその卵の形を表す前に察しがついて身体の力を抜いていた。
「大丈夫だ。危険はないよ」
今にも飛び掛かっていきそうなディゼルにユウトは声を掛ける。
「ヴァル?」
カーレンは疑わしくつぶやいた。
「あれが報告にあったヴァルなのか。しかし一体どうやってここに?」
ディゼルは握った剣の柄から手を放し身体を起こしながら話す。
「ヴァルはかなりの高さまで跳ぶことができるから空からだと思う」
「跳んで?あんな翼も足もない形状でいったいどうやって・・・?」
「オレもどういった仕組みになっているのかさっぱりわからない。聞いた話じゃもともと古代のモノらしい」
ユウトとディゼルがそんな会話をしているとヴァルは小さな動作音と共にその身を低く滑らせてユウト達の元に寄ってきた。
「ユウト、伝言ヲ預カッテイル」
「ロードからだな」
ディゼルは間近に見るヴァルの様子を腕を組んで眺めている。
「ソウダ。今ココデ伝エテモ差支エ無イカ?」
「席をはずそうか?」
ディゼルがユウトの方を向いて語り掛ける。ユウトは一瞬悩んでディゼルを見上げた。
「いや、問題ないよ。明日の最後のやり取りの流れについてだと思う。ディゼルとカーレンにも聞いてもらっていた方がいいかもしれない」
「わかった。ありがとう」
そして二人はヴァルに向き直る。
「うん。じゃあヴァル、教えてくれ」
「了解シタ」
それからヴァルは決戦本番のユウトとロードのやり取り、流れを説明した。
ヴァルの淡々とした口調で語られる内容をその場の全員はじっと聞き入る。
「・・・伝言ハコレデ以上ダ。了解シタカ?」
「ああ・・・わかったよ」
ユウトはうっすらと表情を曇らせながらヴァルを見つめて答えた。
「デハ、コレヨリ我ハ、ロードノ指示ニヨリ、ロードカラ指揮ヲ外レ、ユウト、ノ指揮下ニ入ル。新タナ主人ユウトヨ、ドウゾ、ヨロシク」
「うん?それはどういう・・・ことなんだ?」
ヴァルの唐突な挨拶にユウトは聞き返すほかない。
「我ノ能力ニツイテハ、追ッテ説明スルガ、意味ガワカラナイノカ?」
「いや、意味はわかる。わかるけどなにか納得できない。ヴァルはロードの護衛のようなものだし移動手段・・・はもう必要ないのかもしれないのか。でもオレではなくリナについてもよかった、はずだ。どうしてオレなんだ?」
「ロードノ意図ニツイテ、我ニハ測リカネル。ダガ推察スルニ、タダソウシタカッタ、ノダロウ。ソレガ、ワンアンドオンリーフレンド、トイウモノナノデハ?」
「・・・ッ!」
ヴァルの言葉にユウトはその意味以上の驚きを覚えて一瞬動揺した。
「わかった。ヴァルの頑丈さは保証付きだし、期待するよ。こちらこそよろしく頼む」
自身の動揺をディゼルやカーレンに悟らせまいとして、ヴァルの提案にすぐさま決着をつけるように会話を切り上げる。これまでの会話を一緒に聞いていたディゼルとカーレンに目をやると唖然としていた。
「そういうわけだ。今後ヴァルが正式に同行者になった。調査騎士団としてはヴァルの扱いはどうなるだろうか?魔物扱いになるのか?」
ユウトはできる限り平静を装って二人に問いかける。
「あ、えっと、そうですねー・・・区分でいえばおそらく古代遺物になるので調査騎士団の管轄外になるんじゃないかと思いますけど・・・」
カーレンが顎に手を当てて身をかがめながらヴァルをまじまじと見つめて答えた。
「魔鳥と似た面はあるが意思疎通ができて敵対行動もないなら問題はないと思う。
ヴァル、念のため確認しておくけど人に危害を加えることがないと言い切れるかい?」
ディゼルはヴァルに尋ね、ヴァルはその場で滑るように回転してディゼルと正対する。突然の動きにカーレンは驚いて身体を少しのけぞらせた。
「絶対ニ無イ、トハ言イ切レナイ。状況ニ左右サレ、指示サレル内容ニモヨル所ガ大キイ。シカシ、我ノ方カラ積極的ニ人ヘ危害ヲ加エル事ハ無イ」
「よし、そうか。ではヴァルの件は上に報告するまでにとどめておこう。明日の戦力は多いに越したことはない。今、ここであえて揉め事にする必要もない」
ディゼルは隣のユウトを笑顔で見ながら話す。
「ありがとうディゼル。助かるよ」
ユウトもほっとしたような笑顔で肩の力を抜き、答えた。
「じゃあ、そろそろ行くよ。明日使う鎧と剣の最終調整が残ってる」
「うん、ではまた明日」
「私もがんばりますね」
ディゼルとカーレンに見送られユウトとヴァルは調査騎士団の詰所から離れる。簡易的に作られた道を歩き、他のテントでディゼル達がさえぎられるほど離れると、ユウトは並んで進むヴァルに声を掛けた。
「びっくりした。あんな言葉、どこで知ったんだ」
「ユウトノ記憶ノ抽出、解読ニハ我ハロードニ協力シテイル。ソノ時ダ」
「もしかして・・・今こうして話している言語とオレの記憶にある言語は違うもの・・・なのか」
ユウトはこの世界で使ってきた言葉自体に初めて疑問を持つ。これまでユウト自身が自然に理解し発言してきた普通のことが普通ではなかったと自覚し始めていた。
「大丈夫だ。危険はないよ」
今にも飛び掛かっていきそうなディゼルにユウトは声を掛ける。
「ヴァル?」
カーレンは疑わしくつぶやいた。
「あれが報告にあったヴァルなのか。しかし一体どうやってここに?」
ディゼルは握った剣の柄から手を放し身体を起こしながら話す。
「ヴァルはかなりの高さまで跳ぶことができるから空からだと思う」
「跳んで?あんな翼も足もない形状でいったいどうやって・・・?」
「オレもどういった仕組みになっているのかさっぱりわからない。聞いた話じゃもともと古代のモノらしい」
ユウトとディゼルがそんな会話をしているとヴァルは小さな動作音と共にその身を低く滑らせてユウト達の元に寄ってきた。
「ユウト、伝言ヲ預カッテイル」
「ロードからだな」
ディゼルは間近に見るヴァルの様子を腕を組んで眺めている。
「ソウダ。今ココデ伝エテモ差支エ無イカ?」
「席をはずそうか?」
ディゼルがユウトの方を向いて語り掛ける。ユウトは一瞬悩んでディゼルを見上げた。
「いや、問題ないよ。明日の最後のやり取りの流れについてだと思う。ディゼルとカーレンにも聞いてもらっていた方がいいかもしれない」
「わかった。ありがとう」
そして二人はヴァルに向き直る。
「うん。じゃあヴァル、教えてくれ」
「了解シタ」
それからヴァルは決戦本番のユウトとロードのやり取り、流れを説明した。
ヴァルの淡々とした口調で語られる内容をその場の全員はじっと聞き入る。
「・・・伝言ハコレデ以上ダ。了解シタカ?」
「ああ・・・わかったよ」
ユウトはうっすらと表情を曇らせながらヴァルを見つめて答えた。
「デハ、コレヨリ我ハ、ロードノ指示ニヨリ、ロードカラ指揮ヲ外レ、ユウト、ノ指揮下ニ入ル。新タナ主人ユウトヨ、ドウゾ、ヨロシク」
「うん?それはどういう・・・ことなんだ?」
ヴァルの唐突な挨拶にユウトは聞き返すほかない。
「我ノ能力ニツイテハ、追ッテ説明スルガ、意味ガワカラナイノカ?」
「いや、意味はわかる。わかるけどなにか納得できない。ヴァルはロードの護衛のようなものだし移動手段・・・はもう必要ないのかもしれないのか。でもオレではなくリナについてもよかった、はずだ。どうしてオレなんだ?」
「ロードノ意図ニツイテ、我ニハ測リカネル。ダガ推察スルニ、タダソウシタカッタ、ノダロウ。ソレガ、ワンアンドオンリーフレンド、トイウモノナノデハ?」
「・・・ッ!」
ヴァルの言葉にユウトはその意味以上の驚きを覚えて一瞬動揺した。
「わかった。ヴァルの頑丈さは保証付きだし、期待するよ。こちらこそよろしく頼む」
自身の動揺をディゼルやカーレンに悟らせまいとして、ヴァルの提案にすぐさま決着をつけるように会話を切り上げる。これまでの会話を一緒に聞いていたディゼルとカーレンに目をやると唖然としていた。
「そういうわけだ。今後ヴァルが正式に同行者になった。調査騎士団としてはヴァルの扱いはどうなるだろうか?魔物扱いになるのか?」
ユウトはできる限り平静を装って二人に問いかける。
「あ、えっと、そうですねー・・・区分でいえばおそらく古代遺物になるので調査騎士団の管轄外になるんじゃないかと思いますけど・・・」
カーレンが顎に手を当てて身をかがめながらヴァルをまじまじと見つめて答えた。
「魔鳥と似た面はあるが意思疎通ができて敵対行動もないなら問題はないと思う。
ヴァル、念のため確認しておくけど人に危害を加えることがないと言い切れるかい?」
ディゼルはヴァルに尋ね、ヴァルはその場で滑るように回転してディゼルと正対する。突然の動きにカーレンは驚いて身体を少しのけぞらせた。
「絶対ニ無イ、トハ言イ切レナイ。状況ニ左右サレ、指示サレル内容ニモヨル所ガ大キイ。シカシ、我ノ方カラ積極的ニ人ヘ危害ヲ加エル事ハ無イ」
「よし、そうか。ではヴァルの件は上に報告するまでにとどめておこう。明日の戦力は多いに越したことはない。今、ここであえて揉め事にする必要もない」
ディゼルは隣のユウトを笑顔で見ながら話す。
「ありがとうディゼル。助かるよ」
ユウトもほっとしたような笑顔で肩の力を抜き、答えた。
「じゃあ、そろそろ行くよ。明日使う鎧と剣の最終調整が残ってる」
「うん、ではまた明日」
「私もがんばりますね」
ディゼルとカーレンに見送られユウトとヴァルは調査騎士団の詰所から離れる。簡易的に作られた道を歩き、他のテントでディゼル達がさえぎられるほど離れると、ユウトは並んで進むヴァルに声を掛けた。
「びっくりした。あんな言葉、どこで知ったんだ」
「ユウトノ記憶ノ抽出、解読ニハ我ハロードニ協力シテイル。ソノ時ダ」
「もしかして・・・今こうして話している言語とオレの記憶にある言語は違うもの・・・なのか」
ユウトはこの世界で使ってきた言葉自体に初めて疑問を持つ。これまでユウト自身が自然に理解し発言してきた普通のことが普通ではなかったと自覚し始めていた。