第2話 ニックネーム

エピソード文字数 4,266文字

ここは芸能事務所・コズミックプロモーション。

先日ここで「新星アイドルオーディション」なるものが行われ、デビューを勝ち取った4人が再びここに集められていた。

今日、何するか聞いてる?俺、ちゃんとした服を着るようにって言われて来たんだけど…
わからん、あとオレそういうこと言われてない。
ですよねぇ〜。あと小松も〜。
えっ!そうなの!?
4人が初めて出会い、自己紹介していたあの部屋で軽くだべりながら待機していると、小日向が部屋に入ってきた。
おはようございます!
おはようございます。
おはようございまーす!
おはようございます
小日向「おはようございます。うん、全員挨拶は合格ね」
小日向はにこりと微笑み、切り替えるように話を続けた。
小日向「今日やることは3つ。まず1つ、みんなのニックネームを決めること。2つ。椎名くんの宣材写真の撮影をすること。そして3つ。今後のスケジュールの確認をする。」
宣材写真っ!なるほど!
あーそっかー、君まだ事務所入ったばっかで写真ないもんね〜
それで俺だけ服装の指示を受けたのか〜!
小日向「そういうこと。椎名くん以外は全員既に撮影済みだから、今日は椎名くんだけ撮影するわね。でもその前に…」
ニックネームか〜。
小日向「そう。貴方達はこれからアイドルとしての道を進んでいくわけだけど、ファンに呼んでもらえる愛称があるとよりファンは親しみを持ちやすくなる。だから今からそれを全員で話し合って考えてもらいます。」
あだ名なんて要らないけど。
小日向「でも、実際呼んでもらえると嬉しいものよ。それに、白鳥くんは下の名前で呼ばれるの、嫌でしょう?」
…その話はやめてください。
小日向「ごめんなさいね。でも、メンバーの親交を深める為にもこれは必ず必要なことなの。どうか参加してもらえないかしら?」
…はぁ。分かりました。
(下の名前で呼ばれるのが嫌いって、何かあったのかな…?考えすぎかな…)
聞こえてきた二人の会話が気になったが、いつか事情が分かればいいなと、太陽はあえて何も言わなかった。
小日向「それでは話し合って決めてください。私は直接関与はしませんので。」
そう言って小日向は一歩引いた位置に椅子を用意して腰掛けた。
ってことはー。進行役がいるよね?はいはいはいはい!小松やりたい!
うるさい。
ごめーん!

じゃあ早速始めるけど〜、誰から決める?

はい。
そう言って真っ先に手を挙げたのは淳ノ介だった。
ふ、不破くんのニックネーム、失礼がないようにしなきゃ…!
そんな身構えなくていいって。オレ、ニックネームとか付けられたことなくて憧れてたんだよね。
え!マジー!?小松も〜!
お前絶対何かしらあだ名あるでしょ
ないないない!なーんもない!
初めて見た時から何となく、この2人は息が合っている気がしていた太陽は、この光景をにこにことした顔で眺めていた。
不破淳ノ介か。苗字を使っても、名前を使ってもいいね。
え?何?一緒に考えてくれるの?オレ、君のファンになっちゃうな〜
…参加しろって言われたから意見してるだけだよ。それとファンとかそういうの要らないから。
オレ、この世界でマジのツンデレ初めて見た。
ツン…? どうでもいいけど褒められていないことは分かったよ。で、さっさとニックネームを決めよう。もう適当にジュンとかでいいんじゃないの?
ジュン!素敵だね!いいんじゃない!?
あー!小松今じゅんじゅんって言おうとしたとこ!
じゅんじゅんも素敵だね〜!
どっち支持してんだよ〜!
だってどっちもいいんだもん〜!
2人がわちゃわちゃと揉めていると、淳ノ介が静かにこう言った。
あのさ、オレ1人の意見言ってもいい?
どーぞどーぞ!本人様だし!
せっかく決めてくれたから、どっちでも呼ばれたい。白鳥くんにはジュン、小松くんにはじゅんじゅんって。あと個人的に椎名くんもじゅんじゅんって言って欲しい。それと、アイドルとしての自分の呼ばれ方、じゅんじゅんの方にしてもいい?ジュンは白鳥くんだけ呼んでくれるみたいな感じでもいいなって思ったんだけどどう?
…何だか僕だけ仲間外れにされたみたいに感じるんだけど。
違う違う。オレ、君のファンだから。特別感あっていいでしょ?それに、どうせじゅんじゅんって呼ぶの恥ずかしくなってジュンって呼び方に変えるの大体予想ついてるから。
なっ…!
ぎゃははは!その顔、マジなんだ〜!?うん、いいんじゃねー?じゅんじゅんと、一部はジュンで!
一部、って…
ならこれで決定だね!
こうして、不破淳ノ介=じゅんじゅん(ジュン)ということが決定した。
さっさと決めていこう。で、次は?
聖が声をあげると、再び淳ノ介が手を挙げた。
なになに〜?もう決まっただろ〜?
うん、決まった。
白鳥くんのニックネーム。
えっ…
なるほど!そういう事か〜!

聞かせて、思いついたニックネーム!

そう太陽が聞いた時、急に顔つきが真剣になった淳ノ介を見て全員がゴクリと息を呑む。


淳ノ介はしばらく間を置いた後、こう言った。

リンリン。
却下。
早っ!
まるで漫才かのような素早い切り返しに思わず雅は突っ込んだ。
何でそんな女みたいなの付けられなきゃならないわけ?ほんとムカつく。聞いて損した。
待ってリンリン、まだ話は途中だよ
それ却下って言ったよね?…続き?
そう、続き。


リンリンっていうのはひじりの「り」からとったんだけど、さっき、名前で呼ばれるの嫌とか言ってたよね?

!! …それが何?
何があったのかとかそんなの知らないけど、こういうニックネームから少しずつ改善していったらいいんじゃない?って考えてオレ、リンリンって提案したんだけど。それに、オレのニックネームをはじめに考えてくれたのはリンリンだから、君の名前はオレが決めたかった。はい。以上を聞いていかがでしょうか。
さっきじゅんじゅんとか言ってた自分が恥ずかしいくらいめちゃくちゃ考えてんじゃん…。
…でも、響きが女っぽいし…
淳ノ介の話を聞いて聖の心が微かに動きつつあった。そして、
リンリン!すっごいいいと思う!ほら、白鳥くんの歌声って綺麗でさ、このリンリンってニックネームも綺麗な鈴の音色みたいだし、すごく似合ってると思うよ!
…太陽…。
…いいよ、それで。
聖も渋々といった感じだが淳ノ介の意見を認めた。
じゃあ決定な!
改めてよろしくね、リンリン!
……
聖はまたぷいと顔を横へ逸らしてしまった。
白鳥聖=リンリンというニックネームも決まり、次はどうするか話していると雅が我こそはと立候補した。
小松は〜!?小松もニックネーム欲しい!
君はもう小松でいい気がしてるんだけどダメ?
ダメダメ〜!小松は小松が使っていい名前!小松のニックネームはまた別にしてみんなに小松のこと呼んで欲しい〜!
小松小松うるさいな。ややこしいから黙っててくれない?
何だよ!なら横でずっと小松って言ってやる!小松小松小松小松小松小松!
あーもう、うるさいって言ってるでしょ!
聖と雅の2人が揉めている中、太陽は一人ぶつぶつと独り言を唱えていた。
こまつみやび…みやびこまつ…こまみや…みやこま…こま、こ、みや、こ…?みやこ…?
みやこ!!!!!!
突然の大声に、3人はビクゥッッと反応した。


そして、淳ノ介が真っ先に我に返り返事をした。

みやこかぁ…。
みやこ〜!?それこそ女みてーじゃん!
ご、ごめん!そんなつもりはなかったんだけど、これなら苗字の小松も、名前の雅も覚えて貰えるかなって思ったんだ…!
なるほどね。いいんじゃない?可愛らしくって。…フフッ
リンリンさー、人を煽る時はめちゃくちゃ楽しそうだよなあ〜?でも椎名くんのその案!小松気に入ったからいただいちゃいまーす!

今から小松はみやこでーす!

よ、よかった…!ありがとう!
こっちこそさんきゅーさんきゅー!小松のニックネーム一生懸命考えてくれて、すげー嬉しかったもん!
僕はみやことは呼ばないけどね。
えー!何で!
なんでも。

僕はミヤって呼ばせてもらうから。

ジュン、ミヤ、なんかコードネームみたいでいい感じ〜
そーかあ?でもニックネームが2つもあるのは小松贅沢してるみたいで嬉しいからそっちも採用で!
贅沢…?
そんなこんなで雅のニックネームもみやこに決定し、残すはあと一人となった。
俺のニックネームは…
太陽が話し続けようとした時、一人、彼の名前をそのまま呼んだ。
たいよう。
えっ?
太陽。君のニックネームはたいようでいいと思う。
ええっ!?
これまたどうして
そーだよ名前そのまんまじゃん
太陽も同じことを考えていたが、聖は構わず話し続けた。
たいようはそのままでいい。

その名前の通りに、君自身がなればいいから。「たいよう」という、名付けてもらった名前を皆に覚えてもらうべきだと僕は思うよ。

めっちゃ語るじゃん…。
うるさい。僕は思ったことを言っただけ。

まぁ、採用するかは本人次第だけど。

そう言って視線を太陽の方に向けた。


太陽はしばらく考えていたが、うんと頷き返事をした。

俺も、本当の太陽みたいな人になりたい。みんなの太陽でありたい。だから、俺はたいようにするよ!
名前まんまだけどいいのかよー!?
うん!むしろ、この中では目立っていいでしょ!
まーそうだけど…。んじゃあ、小松はちょっと呼び方変えて「たいよー」にしよっかな!ビミョーなニュアンスの違いがあるくらいだけど!
うん!いいよ!色々考えてくれてありがとう!
んじゃー決まったし、小日向さんに報告しよっか〜
うん!

小日向「ニックネームは決まった?…まぁ、そこでずっと聞いてはいたけどね。では改めて報告をお願いします。」
はーい。

まずオレは『じゅんじゅん』になりましたー。

僕は『リンリン』になりました。
小松は『みやこ』に決まりましたー!
そして、俺はそのまま『たいよう』です!
小日向「じゅんじゅん。リンリン。みやこ。たいよう。


…はい。分かりました。では貴方達がアイドルとしてデビューした時の公式ニックネームはこれに決定します。」

ふーおわったあ〜!
お疲れさんで〜す。
2人はばたんと床に倒れ込みゴロゴロし始めた。


聖もふうと一息ついた様子だった。

小日向「では1つ目の課題をクリアね。そして2つ目。椎名くんの宣材写真に移ります。椎名くん、少し早いけどもうスタジオに向かいましょうか。」
あ、はい!
太陽が小日向について行こうとするのを他の3人が取り残されたように見ていると、
小日向「皆も椎名くんの初お仕事、見学しに来てもいいわよ。」
おー!やったー!
お邪魔させていただきま〜す。
太陽。君の初仕事、見学させてもらうよ
え、ええ〜っ!?
こうしてこの場の全員が、太陽の撮影をするスタジオまで移動するのだった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

椎名 太陽(しいなたいよう)

物語の主人公。

人を惹きつける不思議な才能がある。

白鳥 聖(しらとり ひじり)

太陽と同じユニットメンバーの一人。

歌が上手い。

小松 雅(こまつ みやび)

太陽と同じユニットメンバーの一人。

ダンスが得意。

不破 淳ノ介(ふわ じゅんのすけ)

太陽と同じユニットメンバーの一人。元々俳優だったがアイドルに転身。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色