夜明け前
文字数 1,344文字
木曽路はすべて山の中らしいが、弁当はいつも親の手の内だ。
幸か不幸かと問われれば、もちろん、自分たちは「幸福」に育ててもらっている。
それでも、自分の進む道と弁当に自由を!
アメミヤ総帥の許しを無事に得て、「期末対策をする」というもっともらしい言い訳の元、我らレジスタンスはアメミヤの部屋に集合した。
「んで?」
キムラがローテーブルに広げるのは、もちろんテキストではなくて料理本。
「文化祭に使うって、どんな展示にするって言って大将を説得したの?そっちの準備もしなきゃだね」
キムラはアホだが、バカではないなと思うのは、こういうとき。
「総カロリーと栄養計算つけて、大将の顔写真付きの総評も載せたレポートを展示するって言ったら、即OK」
「大将、目立つの好きだからな。その理由なら、家族の説得もしやすいよ」
「さすがアメミヤ隊員、抜かりはないな」
再びアメミヤをほめたたえる。
「まずは
「十分だよ。それで慣れたら、家でも自分で用意する流れに持っていきやすいし。アメミヤ、後光がさして見える!」
南無南無とアメミヤを拝むと、すかさずOKサインのような、来迎印を結ぶアメミヤが好き。
「阿弥陀様かよっ」
すかさずツッコむキムラも好き。
この仏像マニアめ。
朝練計画表をキムラと埋めていると、アイスティーを持ったアメミヤが自室に戻ってきた。
「お疲れサマ、休憩しよう。今、母親に話したら、ちょっと嫌な顔してた。あれで料理には自負があるらしいから」
才女アメミヤは、シニカルに笑ってアイスティーに口をつける。
「さっきメールしたら、うちは喜んでた。”あら、手間が省けるわ”って」
「でも、カンダのとこは報復手段としての弁当じゃん。大丈夫?」
「キムラが優しい。キモチ悪い」
「んだと!」
小突 かれながらも笑いがこぼれた。
「まあ、別の方法で来るかもしれないけど、弁当よりましだよ。報復措置のたびに、部室使えるわけじゃないし。弁当ジプシーになるのも、つらいからさ」
「ああ、屋上に行く階段踊り場で食べてるのを見つけたときには、驚いたよ。イジメてもないのにボッチ飯?って」
キムラ考案メニューのカロリー計算をしながら、アメミヤが思い出し笑いをしている。
「あれで料理部誘ってもらって、よかったと思う。……ありがとね」
「カンダが殊勝だ。キモチ悪い」
「んだと!」
キムラから反撃されたので、こっちも小突 き返してやった。
「キムラんとこは大丈夫だった?親」
「うちは、ほら。ただの無計画だから」
「……そういえば、賞味期限がアレなチーカマ、入ってたよね」
「……思い出させるなよ、暗黒歴史を。教室で開かなくてよかったよ、あの弁当箱」
脳裏にこびりついている臭いに、レジスタンス三人組はしばし悶絶した。
「おお~、それおいしそう。彩りもイイね」
「これでカロリーは……。こんだけよ」
「ヘルシー」
「食材を使いきるにはさ」
「冷蔵庫、使っていいって」
「大将~、愛してるー」
帰宅時間ぎりぎりまで話し合って、着々とメニューが決まっていく。
戦う者 の歌が聞こえるか。
鼓動があの包丁の音と響き合うとき、新たに熱いおかずができる。
明日が来るとき、そうさ弁当の夜が明ける!
……多分。
幸か不幸かと問われれば、もちろん、自分たちは「幸福」に育ててもらっている。
それでも、自分の進む道と弁当に自由を!
アメミヤ総帥の許しを無事に得て、「期末対策をする」というもっともらしい言い訳の元、我らレジスタンスはアメミヤの部屋に集合した。
「んで?」
キムラがローテーブルに広げるのは、もちろんテキストではなくて料理本。
「文化祭に使うって、どんな展示にするって言って大将を説得したの?そっちの準備もしなきゃだね」
キムラはアホだが、バカではないなと思うのは、こういうとき。
「総カロリーと栄養計算つけて、大将の顔写真付きの総評も載せたレポートを展示するって言ったら、即OK」
「大将、目立つの好きだからな。その理由なら、家族の説得もしやすいよ」
「さすがアメミヤ隊員、抜かりはないな」
再びアメミヤをほめたたえる。
「まずは
朝練
の計画表だね。授業との兼ね合い考えると、週2くらいになっちゃうけど」「十分だよ。それで慣れたら、家でも自分で用意する流れに持っていきやすいし。アメミヤ、後光がさして見える!」
南無南無とアメミヤを拝むと、すかさずOKサインのような、来迎印を結ぶアメミヤが好き。
「阿弥陀様かよっ」
すかさずツッコむキムラも好き。
この仏像マニアめ。
朝練計画表をキムラと埋めていると、アイスティーを持ったアメミヤが自室に戻ってきた。
「お疲れサマ、休憩しよう。今、母親に話したら、ちょっと嫌な顔してた。あれで料理には自負があるらしいから」
才女アメミヤは、シニカルに笑ってアイスティーに口をつける。
「さっきメールしたら、うちは喜んでた。”あら、手間が省けるわ”って」
「でも、カンダのとこは報復手段としての弁当じゃん。大丈夫?」
「キムラが優しい。キモチ悪い」
「んだと!」
「まあ、別の方法で来るかもしれないけど、弁当よりましだよ。報復措置のたびに、部室使えるわけじゃないし。弁当ジプシーになるのも、つらいからさ」
「ああ、屋上に行く階段踊り場で食べてるのを見つけたときには、驚いたよ。イジメてもないのにボッチ飯?って」
キムラ考案メニューのカロリー計算をしながら、アメミヤが思い出し笑いをしている。
「あれで料理部誘ってもらって、よかったと思う。……ありがとね」
「カンダが殊勝だ。キモチ悪い」
「んだと!」
キムラから反撃されたので、こっちも
「キムラんとこは大丈夫だった?親」
「うちは、ほら。ただの無計画だから」
「……そういえば、賞味期限がアレなチーカマ、入ってたよね」
「……思い出させるなよ、暗黒歴史を。教室で開かなくてよかったよ、あの弁当箱」
脳裏にこびりついている臭いに、レジスタンス三人組はしばし悶絶した。
「おお~、それおいしそう。彩りもイイね」
「これでカロリーは……。こんだけよ」
「ヘルシー」
「食材を使いきるにはさ」
「冷蔵庫、使っていいって」
「大将~、愛してるー」
帰宅時間ぎりぎりまで話し合って、着々とメニューが決まっていく。
戦う
鼓動があの包丁の音と響き合うとき、新たに熱いおかずができる。
明日が来るとき、そうさ弁当の夜が明ける!
……多分。