第3話 夏の出来事 -春の出来事、後日譚ー
文字数 2,433文字
この春、我が家に営巣していた「独身男性・彼女無し君」は立派なツバメ旦那さんになり、ツバメお父さんになりました。雛の皆さんも巣立って、ちょっと寂しい大家さんの報告です。
我が家の軒下に営巣していた、ツバメさんご夫妻ですが、奥様がなかなか抱卵されず、はて、と思っていたのですが、6月後半に入られて、巣にこもり托卵する様子が見られるようになりました。
奥さんのはみ出した尾羽とお尻を凝視していると、必ずツバメ旦那さんがやってきて、家の前の電線で「ワイフに何の用ですか?」みたいな感じでおられます。
毎回……
よっぽどわたくし信用がないのでしょうか、春の出来事以来、不審人物と思われているようです。奥さんの尻に見とれたりしていません、早く可愛い雛が見られないか楽しみにしているだけです、他意はないです。
こんな時ソロモン王の指輪があったらいいなあと思います。でも、「デートの時ものぞいていたし変質者かしら」とか奥さんに言われたら、泣くかも……
ツバメは雄も托卵して雌を助ける仲の良い鳥類です。でも、この二羽は特に仲が良いような気がします。この春は、うちの近所で二羽が仲良く狩りをしているところをたくさん見かけました。
さて、ツバメの托卵期間は二週間ほどです。7月1日に最初の雛が孵化しました。
他の卵と孵化したばかりの雛を交代で温めながら、給餌に追われるお父さんお母さん、
運悪く、今年は孵化の時期と集中豪雨が重なってしまいました。
天候が不順だと、梅雨の気温低下で孵化したばかりの雛が亡くなったり、餌が取れず雛が育たないことがあるので、心配して様子を見ていました。
雛が落ちてきた時のために座布団入りの箱も設置して、大家さんは覚悟完了していたのですが、落ちてくることはなく、箱は軒下の糞除けのようになってしまいました。
雨の中、お父さんもお母さんも弾丸のように飛び回って餌を捕獲しており、私にできることがテルテル坊主製作とお祈りだけであったのが、何とも歯がゆく、毎日じれじれしておりました。
ツバメの飛行速度は時速50キロ、敵に追われた時、渡りの時には最高速で200キロに達するといわれていますが、雨の中のツバメお父さんお母さんは最高速度をたたき出していたのでは、と思われる速さで、そんなに早く飛ぶツバメを見たのは初めてで驚きました。雨に負けずに飛ぶには速度が必要なのでしょうが、お父さんお母さんが過労で倒れないか、見ていてハラハラする子育てでした。
一週間ほど続いた雨が上がり、ほっとするのもつかの間、その後は一気に気温が上がり、連日の35℃越え…、ツバメお父さんお母さんの苦労は続きます。
体温が40℃近い鳥類とはいえ、この暑さで雛の皆さんは大丈夫なのか、狭い巣にみちみちに雛が入っているのに熱中症にならないのか、杞憂とか、おせっかいと言えばそうなのですが心配です。
大家さんとしては巣の下や外壁に水を撒くくらいしかできません。
…が、できることならやっておきましょう、ということで定期的に打ち水をすることにしました。これが結構効果があり、軒下の気温が下がります。
そして日課となった打ち水をしていた時のことです。
外壁も冷やしとくと良いかな、とホースで家の外壁に水をかけていて、ツバメ奥さんにも水をかけてしまいました……
ごめんなさい、奥さん…
以来、わたくしが軒下にやってくると二羽に凝視される羽目に、今年はなんだか、間が悪い大家さんです。
いや、ホントにごめん……
連日の猛暑なので、お父さんお母さんは、朝まずめ・夕まずめで狩りをしており、気温の高い日中は、あまり来ていない様子でしたが、たくさん糞が落ちているので餌に困っている様子はないようです。
雛の様子を見ていると、雛にもそれぞれ性格があるようで、一羽だけ、いつも頭を出してきょろきょろしている子がいます。好奇心旺盛なのか、ひょこひょこしていて可愛いです。
三週間目に入り、そろそろ巣立ちかな、と思っていると、
7月21日、朝からお母さんが良く鳴いています、この声には聞き覚えがあります。ちゅん太さんのお母さんも大きくなってきたちゅん太さんにこの声で話しかけていました。多分、巣立ちを促していたのでしょう、優しい声です。
午後に様子を見に行くと、巣の中に一羽だけ残っています。お兄ちゃんお姉ちゃんは巣立ったのでしょう、顔を出してキョロキョロしていたので、いつものあの子のようです。
次の日は家族でお迎えに来たのでしょう、何羽かのツバメが家の前を飛んでいました。
キョロちゃんをは無事に巣立ったのでしょうか。
ツバメ一家が立ち去った後に様子を見に行くと巣は空になっていました。無事にみんな卒業です、おめでとう。
次の日に巣の下の箱を撤収します。
箱を持ち上げると、箱の下から多くの蝶やトンボの羽が……
ミカンの木に芋虫がいない、いつもの年ならいるのに、と思っていたのですが、
産卵に来た蝶のお母さんが、ここでツバメさんに撃墜されていたからなのか、合掌してから糞のお掃除をします。
今年のツバメお父さんはやや小柄で尾羽が短い個体だったのですが、巣作り・子育てが上手でした。ツバメは細長いイネ科の植物と泥を組み合わせて巣を作るのですが、不器用な個体になると草と泥が軒下に大量に落ちていて、巣にくっつけているより落としているほうが多いのでは? みたいな状態になるのですが、彼はほとんど泥を落とさず、綺麗に整ったすり鉢状の巣を作っていて、あれだと奥さんや雛がふちに止まっても安定していて良さそうだと思いながら観察していました。
今年は天候も厳しかったのですが、上手に奥さんをサポートして、脱落する雛もなく育て上げたのはお見事というほかありません。
今は、家の近所で狩りの練習をしているツバメさん一家ですが、もう少ししたら近所の川の近くに移動するでしょう、無事に秋の渡りができますように、大家さんは来年も待っています。
我が家の軒下に営巣していた、ツバメさんご夫妻ですが、奥様がなかなか抱卵されず、はて、と思っていたのですが、6月後半に入られて、巣にこもり托卵する様子が見られるようになりました。
奥さんのはみ出した尾羽とお尻を凝視していると、必ずツバメ旦那さんがやってきて、家の前の電線で「ワイフに何の用ですか?」みたいな感じでおられます。
毎回……
よっぽどわたくし信用がないのでしょうか、春の出来事以来、不審人物と思われているようです。奥さんの尻に見とれたりしていません、早く可愛い雛が見られないか楽しみにしているだけです、他意はないです。
こんな時ソロモン王の指輪があったらいいなあと思います。でも、「デートの時ものぞいていたし変質者かしら」とか奥さんに言われたら、泣くかも……
ツバメは雄も托卵して雌を助ける仲の良い鳥類です。でも、この二羽は特に仲が良いような気がします。この春は、うちの近所で二羽が仲良く狩りをしているところをたくさん見かけました。
さて、ツバメの托卵期間は二週間ほどです。7月1日に最初の雛が孵化しました。
他の卵と孵化したばかりの雛を交代で温めながら、給餌に追われるお父さんお母さん、
運悪く、今年は孵化の時期と集中豪雨が重なってしまいました。
天候が不順だと、梅雨の気温低下で孵化したばかりの雛が亡くなったり、餌が取れず雛が育たないことがあるので、心配して様子を見ていました。
雛が落ちてきた時のために座布団入りの箱も設置して、大家さんは覚悟完了していたのですが、落ちてくることはなく、箱は軒下の糞除けのようになってしまいました。
雨の中、お父さんもお母さんも弾丸のように飛び回って餌を捕獲しており、私にできることがテルテル坊主製作とお祈りだけであったのが、何とも歯がゆく、毎日じれじれしておりました。
ツバメの飛行速度は時速50キロ、敵に追われた時、渡りの時には最高速で200キロに達するといわれていますが、雨の中のツバメお父さんお母さんは最高速度をたたき出していたのでは、と思われる速さで、そんなに早く飛ぶツバメを見たのは初めてで驚きました。雨に負けずに飛ぶには速度が必要なのでしょうが、お父さんお母さんが過労で倒れないか、見ていてハラハラする子育てでした。
一週間ほど続いた雨が上がり、ほっとするのもつかの間、その後は一気に気温が上がり、連日の35℃越え…、ツバメお父さんお母さんの苦労は続きます。
体温が40℃近い鳥類とはいえ、この暑さで雛の皆さんは大丈夫なのか、狭い巣にみちみちに雛が入っているのに熱中症にならないのか、杞憂とか、おせっかいと言えばそうなのですが心配です。
大家さんとしては巣の下や外壁に水を撒くくらいしかできません。
…が、できることならやっておきましょう、ということで定期的に打ち水をすることにしました。これが結構効果があり、軒下の気温が下がります。
そして日課となった打ち水をしていた時のことです。
外壁も冷やしとくと良いかな、とホースで家の外壁に水をかけていて、ツバメ奥さんにも水をかけてしまいました……
ごめんなさい、奥さん…
以来、わたくしが軒下にやってくると二羽に凝視される羽目に、今年はなんだか、間が悪い大家さんです。
いや、ホントにごめん……
連日の猛暑なので、お父さんお母さんは、朝まずめ・夕まずめで狩りをしており、気温の高い日中は、あまり来ていない様子でしたが、たくさん糞が落ちているので餌に困っている様子はないようです。
雛の様子を見ていると、雛にもそれぞれ性格があるようで、一羽だけ、いつも頭を出してきょろきょろしている子がいます。好奇心旺盛なのか、ひょこひょこしていて可愛いです。
三週間目に入り、そろそろ巣立ちかな、と思っていると、
7月21日、朝からお母さんが良く鳴いています、この声には聞き覚えがあります。ちゅん太さんのお母さんも大きくなってきたちゅん太さんにこの声で話しかけていました。多分、巣立ちを促していたのでしょう、優しい声です。
午後に様子を見に行くと、巣の中に一羽だけ残っています。お兄ちゃんお姉ちゃんは巣立ったのでしょう、顔を出してキョロキョロしていたので、いつものあの子のようです。
次の日は家族でお迎えに来たのでしょう、何羽かのツバメが家の前を飛んでいました。
キョロちゃんをは無事に巣立ったのでしょうか。
ツバメ一家が立ち去った後に様子を見に行くと巣は空になっていました。無事にみんな卒業です、おめでとう。
次の日に巣の下の箱を撤収します。
箱を持ち上げると、箱の下から多くの蝶やトンボの羽が……
ミカンの木に芋虫がいない、いつもの年ならいるのに、と思っていたのですが、
産卵に来た蝶のお母さんが、ここでツバメさんに撃墜されていたからなのか、合掌してから糞のお掃除をします。
今年のツバメお父さんはやや小柄で尾羽が短い個体だったのですが、巣作り・子育てが上手でした。ツバメは細長いイネ科の植物と泥を組み合わせて巣を作るのですが、不器用な個体になると草と泥が軒下に大量に落ちていて、巣にくっつけているより落としているほうが多いのでは? みたいな状態になるのですが、彼はほとんど泥を落とさず、綺麗に整ったすり鉢状の巣を作っていて、あれだと奥さんや雛がふちに止まっても安定していて良さそうだと思いながら観察していました。
今年は天候も厳しかったのですが、上手に奥さんをサポートして、脱落する雛もなく育て上げたのはお見事というほかありません。
今は、家の近所で狩りの練習をしているツバメさん一家ですが、もう少ししたら近所の川の近くに移動するでしょう、無事に秋の渡りができますように、大家さんは来年も待っています。