◇2 仲良しこよしはアホウドリ~♪♪──仲よく遊びましょ!

文字数 1,066文字

「イッテーし!」
 額を触ってみると、ど真ん中に大きな(こぶ)ができていた。
「どうした?」
「手加減っちゅうもんを知らねえ!」 
 憤慨して思わず声を荒げる。「まったくアイツはよぉ……」
「ちょっと見せてみな」
 額から手を退けた。
「あー、ズキズキする……」
「ありゃあ……酷えたんこぶだ。しかし、なんでかなぁ?」
 アホウドリが首を傾げた。
「なにが?」
「痛えはずねえと思うんだけど、オレ達……」
「イテーもんはイテーの!」
 たんこぶの周りを撫で回し、顔をしかめる。
「気のせいじゃねえの……?」
「じゃあ、このたんこぶ、どう説明するのさ?」
「んー、それもそうか……」
 アホウドリはこちらに手を伸ばし、額にポックリと盛り上がったたんこぶを指で突いた。
「イッテーし! なにするんだ!」
「あっ、ゴメンゴメン、そんなに痛えとは……」
「さっきから言ってるじゃねえか!」
「それにしても、そちらのおかみさんも相変わらずだなあ……」
「まったくだぜ、若え頃から制球が乱れねえ。思い切りがよすぎんのよ。外したこたぁ、滅多にねえし……」
 もう一度さすってみる。「イテーし!」
「でもなんで痛えんだろう? おかしいよな……」
 アホウドリはおっとりとした口調で何度も首を捻る。
「やっぱオレ達、成仏してねえせいかな?」
「きっとそうだ!」
 首を捻りすぎて筋を(たが)えたのか、アホウドリは横向きに固定された頭部を両手でしっかりと包んで元に戻すと、合点したように目を輝かせる。
「で、これからなにする?」
「オレはそちらさんに従うぜ。トキちゃんがこっちくるまで待つか?」
 アホウドリが笑みを向けた。作り笑いではない。元々がにやけ顔だ。如何にもお人好しらしい面は天性の才能だ。
「アイツは当分死にそうにねえ。死んでもらっちゃ困る!」
「おう、夫婦愛だな、()けるなぁ……」
「あのよぉ……アイツに振り回されてもいいのか? オレはご免蒙るぜ! せっかく安住の地を見つけたんだぞ」
「愛じゃねえ、ってえの?」
「そんなもん超越してらあ!」
「ヘヘェ……怖えんだ……」
「ち、違う! 断じて……」
「お春もトキちゃんと結託して長生きしそうだしなぁ……オレ少し寂しいけど……」
「アイツらなーんも分かってねえよな。『死ぬもんか!』だってよ、フンッ」
 まだ存命中のトキを嘲笑した。「死んだこともねえくせによ」
「死んだら面白えもんなあ……」
「やっぱ、イッテーし!」
 呟きながら額の瘤にもう一度触れてみる。「ヘーックション!」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み