第20話:巨大台風の弱体化作戦6

文字数 1,300文字

 レーザーはアイウォール「目の壁」を振動させる。すると雲の粒子に溜まった電荷が発散しアイウォール「目の壁」は内部崩壊し台風も弱くなるという。しかしハリケーンセンターのクリス・ランドシーは発達した台風に対して今のレーザーなどでは太刀打ちできないという。

ランドシー
「台風が海から吸収したエネルギーは膨大で、雷雲が放出するエネルギーもまたとてつもなく膨大なもの」。もし台風を止められないなら、向きだけでも変えられないのだろうか?

ロスホフマン
「これは『台風イニキ』をモデルにして条件を設定したコンピューターシミュレーション。」大気研究の権威ホフマン博士はこのシミュレーションを使ってイニキのコースを変える条件を探した。

 ホフマン
「黒い太線は台風の中心が通ったコースでこれで30時間分。でも気温や風、その他の気象条件を少し変えて発生させた極小さな力を台風にぶつけてみると台風は黒い線から少し左にそれて赤い線を通った」。ホフマンはこの気象条件を少し変える力を、宇宙ステーションを使って作り出そうと考えている。

ホフマン
「将来建設が予想されている宇宙の太陽熱発電所ではマイクロ波で大気のある1点を熱する」。宇宙に浮かんだ発電所から台風の傍の特定の空間にマイクロ波を放射する。ホフマンは、これによって海面上の気圧や温度、風、あるいは湿度を変えられると考えている。そしてコースをそらす。ネーベル・マーザベル博士はNASAの先端技術部門のマネージャーで、国際的に著名な専門家。彼は宇宙での太陽エネルギー利用技術を開発する国際チームを率い、また80年代には宇宙ミサイル防衛にも取り組んだ。彼はホフマンのアイディアを高く評価している。

 マーザベル
「技術的にはどの部分をとってもすでに実用化されているものばかり。ソーラーパネルで作り出した電気パワーをマイクロ波に変換するがマイクロ波は携帯電話でも使われていて電話をかけて発信するように地上へ向かって発信する。ただし実現の容易性とコストが問題になるだろう」。ウイログビもこのアイディアは気に入った。ただしマイクロ波で台風の方向を変えるだけのエネルギーを作り出せるのか検証が必要。しかしこのアイディアは新たなジレンマを生む。

ウイログビ
「台風のコースを変えることができるようになれば、新しい問題が生じる。社会的な問題、例えばカトリーナのコースを変えることにした時、いったいどっちに向けて変えるべきかという問題。その町の社会的経済価値を判断する経験をつんだ誰かがニューオリンズの変わりにどこをつぶすのか選ばねばならなくなる」。

 レオロフ・ブルインチェス「大気研究の国際センター」
「もう1つ考慮しなければいけないのは実際に台風のコースを変えれば気象は全て相互関係にあるので地球の裏側に影響が出ること。地球は文字通り1つ。エネルギーの均衡、もろもろの均衡、グローバルに考えねばならない。もしどこかに力を加えれば、その力は回り回って地球のどこかで何かを起こすことになる」ミシシッピ州ビロキシに配備された台風観測機、使命は台風調査の目と耳になること。この飛行機で海岸地帯を脅かす台風につっこむ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み