片翼の天使

文字数 556文字

あるところに、空を飛ぶことができない天使がいました。

この天使は、片方の翼しかありません。
どんなに片方の翼をはばたかせても、空を飛ぶことができません。

「あーあ、空を飛べない天使なんて、天使失格だなぁ」

空を飛ぶ仲間たちを、毎日うらやましく眺めることしかできません。

そんなある日、大きな翼を持った天使が、片方の翼しかない天使に話しかけました。

「ねえ、私の翼を片方あげようか?」

一瞬喜んだ片翼(かたよく)の天使ですが、あることに気がつきました。

「……でも、そうしたらあなたが飛べなくなるじゃないですか」

「いいんだよ。私はもう十分空を飛んだ。だからまだ飛んだことのない君に、翼をあげたいんだ」

「だけど……」

ふたりのやり取りを見ていた神様は、大きな翼を持つ天使に言いました。

「あなたの優しい気持ちはよくわかりました。翼の代わりに、あなたの羽をこの子にあげなさい。そうしたら私が力を貸してあげましょう」

言われた通り、大きな翼の天使が自分の羽をひとつ折り、片翼の天使にあげると、その羽は大きな翼に変わりました。

「わぁ! すごい」

「これでふたりで空を飛べますよ。片翼の天使はまだうまく飛べません。だから、あなたが飛び方を教えてあげなさい」

「はい」

こうして大きな翼の天使と片翼だった天使は、一緒に手をつないで空へと飛んでいきました。
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