人のことを言えない

文字数 1,836文字

あなたは、兄弟の目にある屑が見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気づかないのか。(ルカ:6・41)

いつものように、杉田とりょうと三人で帰っていた。俺は生まれて初めて罪悪感を感じていたから、ずっと黙っていた。
「星ブー、かわいそうだったな」りょうがそう言うと、
「ふむ」杉田はそう答えったきり、三人とも黙っていた。星ブーは何も悪くないのに、悪者扱いをされ、女子のみんなから蔑まれ、女子の前で格好つけたいのか、近藤さんのことが好きなのか、男どもからも罵声を浴びさせられた。ん?これって俺が通っているイエスキリストじゃん、そう思って、キリストを思い浮かんだ。聖書なんて読んだことがなかったけれど、昔から教会学校に通っているから、何も悪いことをしていないのに、イエス様は十字架にかけられ、みんなの罪をかぶって、父よ、彼らを赦してください。彼らは今自分が何をしているにかわからないのですって、紙芝居を読んでもらったシーンが思い浮かんだ。ん?もしかして、星ブーはイエスキリストの再来なのか、本気で疑った。ん?岡崎先生はじめ、罪のない星ブーをつるしあげて、みんな星ブーのせいにした、教室にいたみんなが罪人じゃん、俺は悔い改めるどころか、みんな俺と一緒じゃん的なのりで、自分だけが悪くないと思ってしまった。
「星ブーさ、もうちょっと身だしなみが綺麗だったら、あんなことにならなかっただろうな」りょうがそう言うと、
「こういう運命なんだよ、彼は」杉田がそういうから、俺は調子に乗って、
「実際あいつ体育の授業の時、汗くせーからな」俺は最低だなって思った。そして、二人は俺の言葉に乗っかってこなかった。杉田は感情を捨てたかのような目をして、りょうは翼をくださいを口笛で歌い始めた。俺と二人には心の距離が出来始めたのを感じた。当たり前だ。俺が近藤さんの縦笛を口にしなかったら、近藤さんと星ブーは今日も平穏な日々を過ごしていたに違いない。ん?杉田も石綿さんの縦笛を口に含んだ。おでこにつけたりしていたけれど、少なくとも俺より口に含んだ時間は長かった。ん?石綿さんは今日何も不調を訴えなかった。ん?神馬さんは、りょうに「翼をください」を約3分間も口に含まれ、演奏されたにも関わらず、不調を訴えないどころか、星ブーに対して、怒りをぶつけた。ん?君たちは、縦笛の先端に対して、何も感じずに、何も不満はなかったのか。5秒足らずしか口に含んでいない近藤さんの縦笛は、なぜ、田沖から「鬼クセー!!」と言われて、近藤さんは保健室に搬送されたんだ。ん?ん?ん?ん?あれっ?

「えっ、俺って息くさい?」俺がそういうと、二人は黙り込んだ。二人のばつの悪そうな顔を見てられないから、顔を上げると夕日が綺麗だった。俺は神様っているんだなってそう思った時、
「鬼クセーよ」りょうは少し大きな声でそう言った。芸術性、音楽は音を楽しむという原点に返ることによって、犯罪行為を限りなくゼロにしてしまうほどの才能の持ち主が、どストレートにそう言い放った。
「ごめん、もっと早く言うべきだった。ごめん」杉田はそう言った。
「えっ、えっ」俺はそう言うのが精一杯だった。
「胃から、やられているよ」杉田は俺の目をじっと見て、そう言った。
「俺らの距離間に違和感はなかったか」杉田がそう言うと、
「上田の半径1m以内に入ると、お前の毒でやられるからみんな微妙な距離を取っていたんだ」俺はそう聞いて、あっけにとられて、マジ口をポカンとあけて二人を交互に見た。
俺は二人から微妙な距離を取られながら、肩をポンポンってたたいてもらった。夕日はまだ綺麗だった。
「それでお前は病衣にいったのか」俺が聞くと、上田は首を振った。家に帰って母ちゃんに俺の息のことを聞いたら、毎日会っていたから気付かなかった。あんた私にはあーってやってみ、って言われたからはあーってやったら、これはだめだよって真顔で言われて、口臭に効くものを買ってきーって言われて、薬局に行ったよ。」
「そうか、行ってどうだった」俺がそう聞いたら、
「それから毎日ノンダモンをしたよ」俺は笑いころげた、
「お前、ノンダミンじゃなくて、お口クチュクチュモンダミンだろ」
「いや、お口クチュクチュした後、モンダミンを飲んで、胃に流し込むんだよ」上田は真面目にそう言って、彼自身、小4から11年間ノンダミンの愛好者であることを語り、ノンダミンの味はノンダミン
と言っていた。

おしまい
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登場人物紹介

篠崎修三・・・20歳で初めて出来た彼女がクリスチャンだった。

佐藤英子・・・修三の彼女。3年前にクリスチャンになった。ちなみに修三とは保育園の時の同級生

上田基一・・・修三と同じ大学で同級生の友達。両親がクリスチャンで、小学校に入る前から教会に通い14歳の時に洗礼を受けてクリスチャンとなる。高校に入ったころから、高校3年生あたりから教会生活やクリスチャンに疑問を抱くようになり、大学に入学してから間もなく教会を離れる。現在は彼女、飲み会など遊ぶことが楽しく、教会を離れて良かったと思っている。

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