第112話 文化祭3日目

文字数 2,288文字

 昨日のライブは大成功を収めた。
 ライブが終わり教室に帰る時には色んな人から声を掛けられた。
 
 一夜明けて登校する時も学年問わず色んな人から

「昨日のライブ凄かったな!」
「ライブ見ました!」
「凄い感動しました!」

 等声を掛けて貰った。
 ちょっとした有名人になったみたいで気恥ずかしかった。

 教室に入ると皆の視線が集中する。
 そんな中俺は

「みんな、昨日はありがとう!」

 とお礼を言うと

「気にするなって」
「格好良かったぞ!」

 と皆が称えてくれた。

 良いクラスメイトに恵まれたなぁ。
 と思っていると

「てゆーか、あんたの応援に行ったせいで昨日の売り上げ低いんですけどー」

 と言いながら早川か歩いてくる。

「それは悪いと思うけど、判断したのは早川なんだろ?」
「昨日も言ったっしょ? 皆が集中出来てないから仕方なく応援に行ったの」

 確かに俺のせいで皆が集中出来なかったのは悪く思う。

「ごめん」
!?

 俺が謝ると早川は驚いた表情をした後

「わ、分かればいいし!」

 と言ってプイッと顔を背ける。
 しかし直ぐに此方に向き直り

「つーか売り上げ昨日も女子がかったんだよね~。何して貰おっかな~」
「まだ分かんないだろ? 三日間の合計なんだから。今日で追い抜いてやるよ!」
「へ~、やれるもんならやってみな」
「言われなくたってやってやるよ!」

 今度こそ早川は去って行った。

 俺は男子チームに混ざると

「今日が最後だ。昨日までは女子に負けてたけど今日で追い抜くぞ!」

 と鼓舞するがあまり良い反応が帰って来ない。

「このまま負けていいのか? 早川の事だからとんでもない罰ゲームさせられるかもしれないんだぞ?」

 と言うとさっきよりはやる気を出したみたいだが、あと一歩足りない。
 そんな時、前田が

「どんな手を使ってもいいの?」

 と言ってきたので

「法に触れなければどんな手でも使って構わない」
「分かった。だったら俺に良い案があるから任せてくれないか?」

 どうするか。
 でも流石に無茶な事はしないだろう。

「よし、分かった。頼んだぞ」
「おう! 行くぞ後藤」
「よっしゃ!」

 と言って前田と後藤が教室から出ていった。
 そして二人が動いた事によって他の皆も自分もやらないと! と感じたらしく

「よっしゃー! こうなったら売り上げ1位取ろうぜ!」
「「おおぉぉー!」」

 こうして男子が団結した。


「これより咲校祭最終日を開催いたします」

 というアナウンスが流れ、勝負の3日目が始まった。

「お帰りなさいませお嬢様」
「昨日のライブ見ました! 握手してください」
「私なんかでよければ……」
「キャーッ! ありがとうございます!」
「それでは席の方へ案内いたします」


 席へ案内し、裏に戻ると

「スゲーな。これで何人目だよ」

 と水樹が言ってくる。

「なんだかアイドルになった気分だよ」
「みんな昨日のライブ見てくれてたんだからあながち間違いじゃないかもな」
「嬉しいけど大変だな」
「愚痴をこぼしてる暇は無さそうだぜ? ほら、またご指名だぞ」
「ふぅ、行ってくる」


 今日は開店と同時にお客さんが殺到した。
 しかもそのお客さん達の大半が昨日のライブを見て、来てくれた様だ。

 このままいけばかなりの売り上げになりそうだ。
 と考えていると、朝、教室から出て行った前田と後藤が戻ってきた。

「おぉ~、かなり繁盛してるね」
「まぁな。それより何処行ってたんだ?」

 と聞くと、二人は不敵に笑い

「先生の許可と音源を借りてきた」
「既に告知もしてあるぜ」

 何の事だか分からず首を傾げると

「一曲だけだけど此処で歌う許可を貰って来た」
「一曲だけのライブをやるんだよ。時間は正午からだから準備しといてくれ」

 は? ライブをやる? 此処で?
 と更に混乱していると

「聞いたぜ、昨日の『 I wanna be with you 』って佐藤君が作詞したんでしょ?」
「だから軽音楽の人達に音源借りて来たんだ」

 マジかよ……。
 あの二人がここまで動くとは……。

「はぁ、分かったよ。その代わりお客さんの事は任せたからな」
「「おう!」」

 こうして一曲だけのライブが決定した。


 昼になり様子を見てみると、教室の中どころか廊下まで人で埋め尽くされていた。
 
 教壇にマイクが設置されていて、簡易ステージが出来上がっていた。

「まさかまた歌う事になるとは」

 と独り言ちてステージに立つ。



「只今の時間をもちまして第43回咲高校祭を終了いたします」

 というアナウンスが流れ、怒涛の3日間が終了した。

 みんなそれぞれ「おつかれー」「やっと終わったー」と言いながらハイタッチをしている。

 俺もそれに加わり男子全員とハイタッチを交わす。

 文化祭ってこんなにも楽しかったんだな。
 去年の俺に教えてあげたい。

 なんて考えてると

「おつかれーっす」

 といつものメンバーが集まった。

「いや~、マジでパないっしょ~」

 と田口が口にする。
 何がパないんだ。主語を言え主語を!

 と思っていると、俺以外のみんなには伝わったようで

「ホントそれな!」
「ったく、カッコつけやがって」
「本当にすごかった~。私泣いちゃったもん~」
「私も~」
「佐藤があんなにカッコよくなるなんてね~」

 と言う。
 そうか、みんなライブの事を言ってるのか。

「でも、それは皆のおかげでもあるから。ありがとう」

 と言うと、水樹は

「友也の実力だ。胸張れよ」

 と言ってくれた。
 中居と田口は照れくさそうにそっぽ向いている。

 楓と南は抱き合って涙を流しており
 及川は

「もう私が教える事は何もないな」

 と何故か誇らしげにしている。

 やっぱり俺は素晴らしい仲間に出会えたな。
 と実感させられた。
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