4 ウッダーラカ・アールニ(1)

文字数 1,457文字

さて、まずはウッダーラカ・アールニ。彼は紀元前8世紀頃の人で、宮元啓一さん(インド哲学の研究者)なんかは、インド最初の哲学者と見ているね
どんなことを言ってるんですか?

1つは、この世界の成り立ちについての説明。

まず、この世界は「有」であり、「有」は「無」から生まれるものではない、とした。

世界は根源的な「有」から始まり、「有」から熱が、熱から水が、水から食物が生じたとする

はぁ・・・・・・

いきなり雲をつかむような話だよね。戸惑うのもわかるよ。

議論を先取りしておくと、この「有」が、のちのブラフマンへと展開していく礎石となった。

ここでは、「有」の特徴として、ウッダーラカ・アールニが、「有」は増殖しようと思った、が故に熱が生まれ、その熱がまた増殖しようと思った、が故に水が創り出された・・・・・・と語っているように、「有」が思惟する実体であることに着眼しておこう

ただし、この思惟する実体を神様のように考えないほうがいいな、とぼくは思う。

また、これはもっと後で述べたいと思うんだけれど、「思った」というのを、文字通り思惟すること、と考えないほうがいいと思う

すみませ~ん、結論だけ教えてくださいな
気が短い・・・・・・
「有」=思惟する実体というのを、ここでは単純に、ある種の<はたらき>のことだ、としておく
<はたらき>、ですか・・・・・・
さて、この根源的「有」は、生命たるアートマンとして、熱・水・食物の中に入り、そのほかのもの(名称と形態)を生みだそうとする

ちょっと待ってください。

早速ついていけなくなりました

わかりました。

それじゃ、ぼくはべつに専門的研究者じゃないからね、その特権?を活かして、思いっきり超訳しちゃいましょう

えぇ、お願いします
(1)世界は「無」から誕生したのではない。根源的な<はたらき>があり、それがこの世界を生んだ
はい

(2)まずは根源的な<はたらき>から、この世界を形成する上での基礎的な要素が生まれた。現代物理学を知るぼくらだから、それを素粒子としておこう。

しかしウッダーラカ・アールニは、当たり前だが、現代物理学を知らなかったわけで、それを、つまり世界形成のベースとなる基礎的な要素を、熱・水・食物、とした。

のちの時代になると、地・水・火・風・空といった五元素が考えられたりするが、さしあたりそんなことはどーでもよいと思う。

要するに、世界を構成するに基礎的な要素がある、ということをウッダーラカ・アールニが言っているんだ、と理解しておくべきだ

ふ~ん、ナルホ(なるほど)
たとえば、ウッダーラカ・アールニは、火のなかの赤い色はの色であり、白い色はの色であり、黒い色は食物の色であるが、火から火性が抜け落ちると、残るのは熱・水・食物の三要素だけである、と言っているね
はい?

わかった。超訳しますよ。

存在するのは素粒子のみ。それら素粒子がさまざまにからまって、さまざまなモノを生む。

そして、ぼくら人間はね、それらのモノに(たとえば火とか)さまざまな名称をつけるが、それは勝手につけた名称であって、実際に存在するのは素粒子の結合だけ、ってことさ

それって、当たり前のことじゃないですか

よかった。ふぅ~。

それじゃ第一段階は突破、ということで・・・・・・

さて、第二段階へ進みます。

この根源的「有」=<はたらき>は、生命=アートマンとして、基礎的な要素の中へ入り、さまざまなモノを生みだしていく、とする

でました! アートマン

早速わからなくなりました

[参考文献]

・宮元啓一『インド最古の二大哲人』春秋社、2011

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登場人物紹介

デンケンさん(49)・・・仙人のごとく在野に生きたいと思う遊牧民的自由思想家

釈愛理(45)・・・真宗大谷派のギャルな御院家さん


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