キャットフードの「発掘」をしたぴゃーちゃん

文字数 871文字

 それはずいぶん以前、ブチ猫のミッキーと出会うもっと前の話。
 勤めていた病院の宿舎で、ぴゃーちゃんと一緒にいた時期がありました。
 そのとき、猫はぴゃーちゃん一匹だけです。

 ぴゃーちゃんはペルシャ猫が混ざったちんちらで、あのハナビ君とケンカして、私がとばっちりで豪快に手を噛まれたときに、そのハナビ君に襲われた、きれいな長毛の仔です。


 それよりずっと以前のその日、私の帰りが遅くなり、ぴゃーちゃんはお腹をすかして待っているだろうと思いながら、私は宿舎へ帰りました。
 それから、
「ぴゃーちゃんお待たせ。ごはんだよ♪」と言って、そしてぴゃーちゃんを見ると、何と、封をしたキャットフードの袋に手を突っ込んでいました。

 そしてよく見ると、袋にはぴゃーちゃんの手がやっと入るくらいの、直径3センチくらいの穴が開いていました。

 それはきれいな、まん丸い穴で、どうやって開けたのか良く分かりませんが、きっと口と手を器用に使って開けたのだと思います。

 そして見ていると、ぴゃーちゃんはその穴からそっと手を突っ込んで、肉球でキャットフードを3,4粒つかみ、それを取り出しては床にぱらぱらと置き、それから口でかりかりと食べていました。

 一回手を突っ込んだら、3、4粒です。
 とにかく几帳面に、小さな穴から手を突っ込み、せっせとその3、4粒を取り出しては、それを食べていたのです。

 まるでキャットフードを「発掘」でもしているかのようです。
 なんとまあお上品ですこと!

 それに比べると、キャットフードの袋を押さえつけ、袋の「お腹」あたりに豪快にがぶりと噛み付いて引き裂き、ばらばらとこぼれ出るキャットフードをむさぼるように食べていた、つまり「キャットフードの狩」していたアイタローの、なんとまあ豪快なこと。
 猫のキャラもいろいろです。

 とにかくぴゃーちゃんは、そんなほかの仔と違い、とても上品で、気品のある猫だったのです。




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