ランナウェイ

文字数 469文字

 ククは木の枝や地面に這う木の根を巧みに避け、時に木の枝を使って樹上に登り、葉が生い茂る枝の上を渡った。かと思えば入り組む根の間をすり抜け、草の葉を揺らさないように慎重に、しかし迅速に移動した。その姿はさながらリスのようだった。
 人間狩りの連中の矢を奇跡的に逃れたククは、ジャングル地帯への逃亡に成功したが、追っ手は罪人を全員殺さない限りは地獄の果てまで追ってくるはずだ。ククは妹のラクが強姦される様を目の前にして激昂し、神の遣いの一人に殴りかかって殺した。ククは縛り付けられて人間狩りの標的として連行され、ククが拘束されている目の前でラクは子宮を抉られて殺害された。
 ククは孤独だった。逃げたところで仲間はいない。ククは怒りのみを抱えて移動し続けた。不意にジャングルの鬱屈とした視界が開け、生まれてから一度も見たこともない巨大な蠢く沼を目にした。同時に、その沼には三角形の鋭い動く岩が複数移動しており、こちらに近づいてきた。
 ククはその不可解な光景を目の前にしてたちすくんでいた。静かに空気を切り裂く音とともにククの首元に矢が刺さった。
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