サーカスの人気者たち

エピソード文字数 1,044文字

 そのサーカスは田舎町ですこぶる人気があった。機械仕掛けの動物たちが、とても珍しい芸を披露する。それを見物しに、たくさんのたくさんのお客さんが遠くからやってくる。


           メカリズム・ミュージック・フェア
              いよいよ開幕
          来たる八月三十日から九月五日まで
            ★☆★☆★☆★☆★☆★☆
            ●ロックンロール歌手の猿
            ●エレキギター弾きの虎
            ●エレキベース弾きの兎
            ●太鼓叩きのパンダ


 超満員のお客さんたちが帰り、とても静かな夜となった。サーカスの団長は薄暗い回転木馬に腰掛け、煙草に火をつけた。
「すいませーん、誰かいますかー?」
 その時、ひとりの少年がたずねてきた。
「誰だ!」サーカスの団長は叫んだ。
「……今日……サーカスを……見物しました……最高におもしろかったです。ロックンロールを歌う猿など、はじめて見ました。とってもおもしろかったです」少年はビクつきながら答えた。
「そうか――坊やに面白がってもらえれば、おれも嬉しいよ」
「いつかぼくも、この楽しいサーカスに入団したいな」
 少年はキラキラ目を輝かせた。
 サーカスの団長は煙草をもみ消した。
「いますぐにでも入団できるよ、坊や」
「ほっ、ほんとうですか?」
「さあ、坊や――わたしの目をじーっとみつめるんだ。じーっと、ね」
「うん」
 とつぜんサーカスの団長の目が青白く光った。
 少年の意識が朦朧(もうろう)となった。
 サーカスの団長の声が脳内でこだまする。
「いいかね、坊や。いまから君は――」

 つぎの日からサーカスに新たな人気者が加わった。パンダが叩く太鼓のリズムに合わせて、可愛らしくシンバルを鳴らす犬だ。

 ジャン、ジャン、ジャン、ジャン――!

 リズムの表と裏をとらえて、色んな鳴らしかたもする。

――――ジャン――――ジャン――――
ジャンジャン、ジャンジャン、ジャンジャン、ジャンジャン
ジャン――――!  ジャン――――!

「いったいどうやったら、あんな上手い演奏ができるようになるんだろう? 機械仕掛けの犬にしては凄すぎる……まるで本物の人間のようだ」
 お客さんたちは不思議な顔で溜息をもらしながらも、大喜びして嵐のような拍手喝采をあびせた。

 ジャン、ジャン、ジャン、ジャン――!
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