第4話(2)

エピソード文字数 3,636文字

 もういいよね。ずっと待ったんだから、もういいよね。

「お前ら、1日終わったじゃねーですか。お話はいつするのですか」
「従兄くん、私も早くしたいのよ。思うに急に強くなったから、発送が遅れているみたいね」
「にゅむっ。突然パワーアップしたら、係さんもアタフタしちゃうよねー」
「しかしながら、もう十数時間しかないぜよ。いいかげん届いても――おっ! 噂をすれば、やね」

 公園での3人のように。俺の前に――ダイニングテーブルの上に、封筒が現れた。

「キミらは、これを待ってたのか。こいつはなんなの?」
「にゅむんっ。全次元最強決定戦、チーム部門の招待状(しょーたいじょー)だよー」

 ナ ン デ ス ト ?

「スポーツでも、個人戦と団体戦があるでしょ? 私達がやったのは個人戦で、これから五人一組のチーム戦が行われるのよ」
「このバトルは、一定以上の力を……えーと…………有する先生が参加資格を得るが。師匠は究極奥義が三つもあるき、選ばれたがよ」

 個人戦優勝の3人の、最強の技を持ってるんだもんな。そりゃ至当だ。

「従兄くん。分かって貰えたかしら?」
「手紙については、把握しました。だがなぜに、これを求めてたの?」

 こっちに関しては、さっぱりだ。彼女達は何をしたいんだろう。

「それはねそれはねーっ。あたしたちと一緒にゆーせー君も出て、優勝(ゆーしょー)して欲しーからなんだよーっ」
「は? はっ?」
「時に、師匠。師匠は、何故狙われていると思うぜよ?」

 目を白黒させていたら、フュルが話を振ってきた。
 俺が狙われてる理由? そりゃあ。

「あれでしょ。究極奥義を持ってるから」
「ううん、それは少し違うの。従兄くんが狙われてるのは、『奥義がある以外は平凡な人間』だからなのよ」

 彼女はそう言い、それに合わせて魔王と勇者が首を縦に振った。

「あたしたちは――歴代の英雄(えーゆー)さんもね、一度も命を狙われたコトはないのっ。それは、なんでかとゆーとっ」
「ワシらぁが、『奥義以外も強い人間』だからなが。聖剣先生や魔法先生のように、他の強さも持ち合わせてるから狙われないがよね」

 確かに、そうだな。サブウェポンですらあんなヤツらと、戦う気は起きない。

「そこで、ほぼ全ての次元に――」
「あれ? シズナ、ちょいタンマです」

 申し訳ないが、止めさせてもらった。

「ん? なにかしら?」
「ここにいる色紙優星は、魔王使いだ。平凡な人間じゃないから、狙われないはずじゃないの?」

 魔王使いは立派な非凡で、上手く操ればほぼ無敵だ。これって妙だよね?

「従兄くん、そうはならないのよ。魔王使いの力は『素質』に含まれるみたいで、誰にも感知されないの」
「ワシが初めて会った時、師匠の身分に気付かんかったろ? 刀の扱いが上手いとか、えーと………………『素質』先生は、どんな生き物先生でも察せんがよ」

 思い返せばフュルは、俺の話を聞いて認識していた。……少しくらいは、ぼくに都合の良い展開があってもいいと思うなぁ……。

「残念だけど、こういう事情があるのよ。続き、いいかしら」
「どうぞ」

 お願いいたします。口を挟んでスミマセンでした。

「そこでほぼ全ての次元に放送される最強決定戦に出て、周りに『究極奥義だけの男じゃない』と見せつけるの。そうしたら、私達のように目を付けられなくなるのよ」
「ははぁ~、3人の作戦はよーく理解しました。けど、さ」

 けど、です。

「こんな宝の持ち腐れ人間が出て、見せつけられるの?」

 こちとら戦闘知識と経験なしで、対戦相手は選ばれし猛者だ。この状況では活躍できんでしょ。

「従兄くん、それは心配要らないわ。その辺は、私がちゃんと考えています」
「出場(しゅつじょー)すれば、ズビシッと力をアピールできちゃうんだよー。あたしたちが保証(ほしょー)しますーっ」
「上手くいくと、ワシも太鼓判を捺すぜよ! 師匠、ワシらぁを信じてゆこうぜよー!」

 お三方が、ビシッとサムズアップしてる。
 ここにいる3人は、今一つ信用できないのだが…………封筒に入ってたルールブックを見たら、試合はタイマンではなく全員が入り乱れて戦う方式とあった。魔王に勇者に伝説の魔法使いがいれば、身の危険はないだろう。

「よし、俺も出場するよ。じゃああとは、最後のメンバーを集めないとだね」

 ここにいるのはレミア、フュル、シズナ、優星。計4人で、お一人足りない。

「従兄くん、もうメンバーは揃ってるわ。私達は四人で出るのよ」
「5人編成なのに4人!? 正気か!?

 それは、戦力がガクンと減る。自殺行為だぞっ。

「会場に行けば、『勧誘交渉ルーム』ってのがあるがやけどね。知らない先生と組んだら、師匠の強いアピールがスムーズにいかんなるっぽいがよ」
「だったら、故郷から誰か呼ぼう。できるでしょ?」

 相手は、それなりに強いヤツらなんだ。4人は、もしもがあるかもしれないって。

「にゅむ、要請(よーせー)はできちゃうよーっ。でもでも」

 でもでも? なにさ。

「4人もいたら、優勝(ゆーしょー)しちゃえるからねー。シズナちゃんが魔法(まほー)で連絡をして、参加を辞退してもらってるんだよー」
「私達の友達――英雄が敵にならなければ、独りで出ても楽々勝てるの。こちらの一人と他の出場者一人の戦力を数字で例えると、10000000000と1ね」

 選ばれし者でも、百億人集まらないと対等にならないのかよ。もう最強決定戦、やらなくていいじゃん。

「ワシらは意図的に負けようとしないと、敗北を……えーっと…………喫さないがぜよ。師匠、納得してくれたかえ?」
「異論はありません。4人で参りましょう」

 俺を除いても、自チームと相手チームの戦力差は29999999999。これはもはや出来レースで、なにも怖くない。

「今年の開催地は、ビベロニベロベロリン王国さんだったねっ。あそこはお花さんが綺麗(きれー)だから、大好きなんだよー」
「おいその国どこにあるの!? どうやって行くの!?
「まず位置は、十六先の異世界ぜよ。行き方は、どうするがやったかね……?」
「この手紙に描かれている魔法陣に、親指を載せたら転移出来るわ。大会開始は今日の十八時だから、十七時半に触ればいいわね」

 シズナの目線を追って手元にある紙を見てみると、中央に涎を垂らしたベロが描かれた魔法陣があった。
 うわ。ばっちいな。

「試合は全部で、五試合となっちゅうね。決勝は翌日の正午からやき、異空間を使えん師匠はお泊りセットが要るにゃぁ」
「手紙に……決勝進出チームには、ホテルのスイートルームを用意しますってあるな。大抵のモンはありそうだから、着替えだけでいいか」

 これだと、小さなバッグで充分っぽい。お金は、通貨が不明だから3人を頼ろう。

「ところで従兄くん、ビベロニベロベロリン王国のボディーソープは至高の逸品なのよ。まるで唾液のような、ネチョネチョした感触が素敵なの」
「……それは、素敵なのか? とツッコみ、一つ質問です。そんな変わったモンがあるベロリン王国は、変わった人達が住んでるんですかね?」

 大きな舌に手足と目鼻口がついた生物に出迎えられたら、とっても辛い。俺は卒倒するぞ。

「あそこはワシらぁの日本と同じで、人間先生が住みゆうがぜよ。まあ言語はベロンチョ語先生だけど、会場に魔術が施されちょって…………自分の…………えーと………………母国語! 母国語先生に変換されるがよね」
「ソコにいるのは人で、言語も通じるのか。これなら安心だ」

 ベロ星人がいなくて、ホントに良かった。わたしが小学生のころ夢に舌の化け物が出てきて、ちょっとトラウマになってるんですよね。
 ちなみにどうでもいい情報かもですが、ソレの原因は母方の爺ちゃん。寝る前にワザワザ自作の絵付きで『婆さんの故郷である宿毛(すくも)市には「ベロベロ丸」という、宿毛名物の『だるま夕日(ゆうひ)』が大好きな妖怪がおるんじゃよ。ソイツは『ゆう』とつく物や者も大好きでな、優星なお前は寝てる間に毎日全身をベロベロ舐められてるんじゃ!』、と法螺を吹きやがったからです(『だるま夕日』の方は本当にあり、ソレは達磨型をした夕日のこと。11月中旬~2月中旬にかけて時々見られる、宿毛湾の冬の風物詩でございます)。

「従兄くんの不安は、なくなったわね。それじゃあ大会に備えて、順番に寝ましょうか」
「そだねーっ。ぐっすりネムネムして、体力を満タンにしとこーっ」
「そうやにゃぁ。万全の状態で挑むぜよ!」

 こんな感じで、俺らは順にネムネム。その後朝ご飯昼ご飯を食べ、シズナからとあるレクチャーを受け、4人でベロリン王国へと旅立ったのでした。
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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